リサーチ

2022.10.07

育児・介護休業法が改正、男性の育休取得は進むのか

「将来取得したい」という男性は20代・30代で8割以上

2022年4月、従業員が本人または配偶者の妊娠・出産を申し出た際には、企業から育児休業制度について周知し、取得意向を確認することが義務化された。長年、課題となっている男性の育児休業取得。育児・介護休業法のたびたびの改正によるさまざまな制度の導入などにより、ここ数年、男性の育休取得率は伸びてきているが、女性と比べると依然として低い。男性の育休取得を阻むものは何か、『男性育休に関する意識調査』から考察する。
※『男性育休に関する意識調査』は、パーソルキャリア株式会社が、2021年10月に20~59歳の学生以外の男性 555名を対象に実施。

約15%が、育休取得経験あり

調査対象となった20~59歳の学生以外の男性 555名のうち、育児休業(以下、育休)を取得したことがある人は15.4%。取得期間は、第1子誕生時は1週間以内が29.8%、2~3週間が27.9%、1カ月以上が42.2%であったのに対し、第2子誕生時は1週間以内が31.3%、2~3週間が15.8%、1カ月以上が52.8%だった。

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第2子誕生時のほうが1カ月以上の育休取得割合が多いことについて、調査では、「子どもを2人見ることの大変さや、第1子誕生時に十分な期間育休を取得できなかったことへの想いなどの表れではないでしょうか」と分析している。




育休を取得しなかった理由は「男性が取得するという考えがなかった」が最多

調査対象者のうち、子どものいる人において、育休を取得しなかった理由として最も多かった回答は「男性が育児休暇を取得するという考えがなかった」で26.1%。次に、「当時は男性の育児休業制度がなかった」(23.8%)、「当時の業務状況では休暇取得が難しかった」(20.0%)などが続いた。

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「男性が育児休暇を取得するという考えがなかった」という回答からは、「育児休業=女性が取得するもの」という性別役割分担意識がうかがえる。

また、「当時の業務状況では休暇取得が難しかった」「上司/部下/同僚など、勤務先に迷惑をかけると思った」(11.7%)「勤務先は、男性が育児休暇を取得しやすい雰囲気ではなかった」(11.1%)などの回答からは、育児休業を取得しやすい職場環境の整備の重要性がうかがえる。
これは、育休を取得した人が「取得してよくなかったこと、困ったこと」として回答した内容の上位に「上司/部下/同僚など、勤務先に迷惑を掛けた」(20.2%、2位)、「休暇取得前の業務の引き継ぎが大変だった」(18.9%、3位)があることからも、育児休業を取得しやすい風土や環境の整備は課題といえるだろう。

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20代・30代の8割以上が育休取得を、6割以上が1カ月以上の取得を希望

他方で、これから子どもを持つ20代・30代においては、8割以上が育休取得意思を示している。具体的には、育休未取得者において、将来子どもができた場合に育休を「取得したい」という人の割合は、Z世代(20歳~24歳)は84.6%、ミレニアル世代(25歳~39歳)は80.1%、それ以上(40歳~59歳)は69.6%だった。

取得希望期間については、
Z世代は「1週間以内」が12.2%、「2~3週間以内」が24.2%、「1カ月以上」が63.6%。
ミレニアル世代は「1週間以内」が9.0%、「2~3週間以内」が30.8%、「1カ月以上」が60.2%。
それ以上の世代は「1週間以内」が4.3%、「2~3週間以内」が21.4%、「1カ月以上」が74.3%であった。20〜30代の6割以上、40〜50代の7割以上が1カ月以上の取得意向を示している。

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企業には、当たり前に育休を取得できる風土・環境が求められている

社会全体を見ると、2021年度雇用均等基本調査に基づく男性の育休取得率は13.97%と、7.48%だった2019年度調査から6ポイント以上増加している。ただ、依然低い数字であることには変わりない。そして、この調査においては、20代・30代の8割以上に取得意向があり、6割以上が1カ月以上の取得を希望している。

このギャップを埋めるには、先述したように、企業各社が、男性従業員が育休を取得しやすい風土・環境をつくることが必須だろう。育休の制度や男性の取得を推進する制度そのものはたびたび改正されてきた育児・介護休業法により整えられてきている。2022年4月には、企業に対して従業員が本人または配偶者の妊娠・出産を申し出た際には、企業から育児休業制度について周知し、取得意向を確認することが義務化された。

企業には、この取り組みを適切に運用すること、さらには、男性従業員が育休を取得しても組織として業務や事業を動かし続けられる体制の構築や、子どもができたら性別にかかわらず当たり前に育休を取得できるという風土・意識の醸成が求められている。そうした取り組みと、1人ひとりの意識により、男性の育休取得が進むことを期待したい。

育児・介護休業法の改正内容

1 男性の育児休業取得促進のための子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設(令和4年10月1日施行)
2 育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け(令和4年4月1日施行)
3 育児休業の分割取得(令和4年10月1日施行)
4 育児休業の取得の状況の公表の義務付け(令和5年4月1日施行)
5 有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和(令和4年4月1日施行)



【出典】 『男性育休に関する意識調査』


作成/MANA-Biz編集部