リサーチ

2021.03.29

テレワーカーからみたオフィスの価値

オンラインスキルの向上がテレワーカーの意識を変える

テレワークで働く人が急増した2020年。オフィスの価値は変わったのか? コクヨ株式会社で行ったWEBアンケート調査「テレワーカーからみたオフィスの価値や働き方」から見えてきた、テレワーカーの意識や行動の変化をもとに解説する。

変化に応じた
上司のマネジメント力が問われている

テレワークで仕事をしていると、上司と対面する機会はぐっと減り、仕事のやりとりやコミュニケーションはオンラインが中心となります。当然ながらマネジメントスタイルも変化するでしょう。上司の行動がどのように変わり、部下はその変化に対して何を感じているのかを質問してみました。

まず注目すべきは、働き方が変化しているにも関わらず、「上司の行動が変化した」と感じたワーカーが2割だったことです。そして、この変化は必ずしも好ましいものばかりではありません。

オンラインの一番の課題とも言えるコミュニケーションについては、質と量ともに下がった・減ったというネガティブ回答が、上がった・増えたというポジティブ回答を上回っているのです。

オフィスに行く機会が減ることによる、ワーカーの帰属意識やエンゲージメントへの影響が危惧されているなか、上司の行動にあまり変化がみられないことは注視すべき点です。ただし、労務管理の点では、「(部下の)健康を気遣うようになった」という回答が多いことを考えると、コロナ禍という非常事態への対応には力を入れているが、これまでのマネジメントを見直すにはいたっていない、ということが伺えます。

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一方でフリーアンサーをみると、上司のコミュニケーション力向上や適切な進捗管理、働き方の容認を評価する声が目立ちました。中でも目を引くのは、「非対面での伝達方法に工夫するようになった」「コミュニケーションが少ない中で簡潔に意思疎通ができるようになった」といった意見です。

このことから、2020年4月の緊急事態宣言から半年以上が過ぎた今、変化に合わせてマネジメントを変えることのできた上司がいる一方で、緊急事態下の一時的な対応だけで、変化しようとしない上司の存在も見えてきました。




テレワーカーにとっての
オフィスの価値とは

テレワーカーにとって一番の課題であったコミュニケーションにおいては、経験値やスキルが向上したことで、コミュニケーションの質が上がり不安感が減ったことがわかりました。それはすなわち、テレワークでも問題なく行える業務の幅が広がったことになり、オフィスに行く必要性が減ったことになります。

一方で、テレワーカーが仕事を生産性高く進めるためには、上司からの適切な指示や情報共有が不可欠ですが、その点においては、変化に対応した遠隔でのマネジメントスタイルにシフトできた上司と、そうでない上司とに分かれています。数字で見ると、変化できていな上司の方が多く、そのことはワーカーの仕事への意欲、オフィスに出社したいと思う気持ちを削いでしまう危険性を示唆しています。

では、テレワーカーはオフィスにどんな価値を求めているのか? それは、「顧客ヒアリング」や「社外交流」「社内イベント」といった、他者との交流の場としてのオフィスであり、「上司同僚からのスキルの教示」といった学びの場としてのオフィスです。

そして、オフィスに行きたいという気持ちにさせる、上司部下の関係性も重要です。遠隔で見えないからこそ、これまで以上に的確に要旨を伝えたり、状況をこまめに確認したりといった基本的なコミュニケーションを確実に行い、さらに部下の体調やメンタルを気遣う一言をプラスすることが求められているようです。

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調査概要

実施日:2020.11.17-19実施

調査対象:社員数500人以上の企業に勤めているワーカーのうち週3日以上テレワークを実施しているワーカー

ツール:WEBアンケート

回収数:309件


【図版出典】Small Survey「テレワーカーからみたオフィスの価値」



河内 律子(Kawachi Ritsuko)

コクヨ株式会社 ファニチャー事業本部/ワークスタイルイノベーション部/ワークスタイルコンサルタント
ワーキングマザーの働き方や学びを中心としたダイバーシティマネジメントについての研究をメインに、「イノベーション」「組織力」「クリエイティブ」をキーワードにしたビジネスマンの学びをリサーチ。その知見を活かし、「ダイバーシティ」をテーマとするビジネス研修を手掛ける。

文/横堀夏代