リサーチ

2020.05.20

「日本の残業時間」定点観測データ、5年間の推移

減少傾向の継続が予測されるなか、今着目すべき課題は何か

2019年4月の「働き方改革関連法」施行より以前から、時間外労働は問題視されており、各企業が対策を行ってきた。オープンワーク株式会社は、運営サイト「OpenWork」において、2014年から国内企業の残業時間を調査し、四半期ごとに発表している。『日本の残業時間 定点観測 四半期速報(2020年1月16日発表)』から、過去5年間のデータの推移を見るとともに、今後の課題や着眼すべき点について考察する。

※2020年1月16日時点での情報を基に作成

働き方改革の一環として、「残業時間の削減」が重要視されるようになって久しい。
国内最大級の社員クチコミが集まるOpenWorkでは、残業時間を含む「社員の生の声」が共有されており、2014年以降、四半期ごとの残業時間を全体と業種別で発表している。
 
2019年4月に施行された働き方改革関連法では、時間外労働の罰則つき上限規制が設けられた。法施行によって長時間労働是正への意識がますます高まり、企業の取り組みを加速させる形となったが、多くの企業では施行前から状況改善に向けて模索を始めていた。過去5年の残業時間のデータがどのように推移しているのかを紹介する。
 
OpenWorkが観測した「日本の平均残業時間」は、2014年以降、減少傾向にある。働き方改革慣例法施行後に、急激に残業時間が減ったような現象は見られないので、やはり法施行の前から意識して取り組む企業が多かったようだ。
また、2015~2016年頃より、時短勤務など働き方の多様化が進んできたことも要因の一つであると考えられる。女性の社会参画の割合が高くなったことも、残業時間減少に関与しているかもしれない。
2019年10~12月の最新集計では、同年7~9月集計の25.62時間/月から微増し25.76時間/月(+0.14時間)となっているが、働き方改革の推進を受けて、この先上昇へと転じることは考えにくく、全体的に減少傾向にあるといっていいだろう。
 
 
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残業時間の定点観測データは、業種別でも発表されている。2019年10月~12月の集計で、他業種と比べて増加が目立ったのは「マスコミ」で、前期比+2.38時間。一方、前期より1時間以上減少した業種は、「コンサルティング(-1.27時間)」、「インフラ・運輸(-1.39時間)」だった。
 
 
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働き方改革関連法が施行され、中小企業にも時間外労働の上限規制が設けられた今、残業時間削減に対する企業とビジネスパーソンの意識はますます高まっていくことが予想される。また、働き方の多様化が進めば、さらに状況は変化していくだろう。
 
一方で、働き方改革で「残業時間削減」が重要視されていることによって、逆に負担が増えているビジネスパーソンがいることにも着目したい。(参考『働き方改革「残業時間削減」のひずみは中間管理職へ?』)
 
人員と業務量が変わらないなかでの残業時間削減は容易なことではなく、いずれかの段階で減少傾向は頭打ちになる可能性もある。ここから先は、従来以上の企業努力、パフォーマンスやマネジメント能力の向上が求められるだろう。業務効率を上げていくためには、企業や個人の創意工夫が必要であることはもちろん、技術的サポートも重要になってくる。AIの活用、定型業務を自動化するRPAやデジタルマーケティングシステム、Web会議システムなど、さまざまなITツールの導入は、残業時間削減と業務効率アップを両立させるための妙手となり得るのではないだろうか。
 
 
【出典】オープンワーク株式会社 働きがい研究所『日本の残業時間 定点観測 四半期速報(2020年1月16日発表)』 ※四半期毎更新の最新データはこちら
 
作成/MANA-Biz編集部