リサーチ

2019.01.30

7割の企業が「予定ナシ」。副業解禁への道のりは険しい?!

副業・兼業に二の足を踏む企業の本音とは?

働き方改革が叫ばれ多様な働き方が注目を集める中、独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査で、従業員の副業・兼業の許可に消極的な企業の姿勢が明らかになった。本業への悪影響や過重労働を懸念する企業側の慎重な姿勢とは裏腹に、ビジネスパーソンの副業・兼業への関心は高まっている。この乖離を埋めることはできるのか、アンケート結果から考察する。

約2,200の企業に従業員の副業・兼業に関する意向について尋ねたところ、従業員の副業・兼業を「許可する予定はない」とする企業が7割を超えた。副業解禁元年※と言われる2018年時点でのこの数字は低いと言わざるを得ないだろう。
※2018年1月に厚生労働省が「モデル就業規則」を改訂し、副業禁止の項目が削除され副業を容認する規則に変更されたことに由来するメディア等での表現。
 
 
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許可しない理由として企業があげたのは、「過重労働となり、本業に支障を来たすため」「労働時間の管理・把握が困難になる」「職場の他の従業員の業務負荷が拡大する懸念があるため」など。また、30%を超える企業が「組織内の知識や技術の漏洩が懸念されるため」と答えた。企業として優秀な人材を囲い込みたいという本音が透けて見える。
 
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しかし、ビジネスパーソンの副業・兼業への意向は決して低くはない。「副業・兼業をはじめたい」「機会・時間を増やしたい」が4割弱にのぼった。
 
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副業・兼業を望む理由は「収入を増やしたい」「活躍の場を広げたい」「人脈を広げたい」など。また、「組織外の知識や技術を取り込みたい」が36%で、企業側が副業・兼業への懸念であげていた「組織内の知識や技術の漏洩が懸念されるため」と正反対にオープンイノベーションの意向が見受けられた。
 

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労働人口の減少が見込まれる中、社員には本業に専念してほしいというのが企業の本音であろう。また、副業を許可しない理由からは、他の社員や組織に対する影響への懸念が見て取れる。それに、大きい組織であればあるほど、導入前に制度を確立する必要もあり、相応の労力がかかる。こうした企業の重い腰を上げさせるには、社員側からの働きかけが有効ではないだろうか。既に副業・兼業を取り入れている企業からは「定着率の向上」や「従業員のモチベーションアップ」「従業員のスキルの向上(本業に貢献)」などの効果が挙げられている※2。こうしたプラスの変化を自分ならどう生み出せるかを提案し、周囲を巻き込みながら組織を動かしていくことも一つの方法である。まずは現場から声をあげることが、改革のスピードアップにつながるのではないだろうか。

 
※2 株式会社帝国データバンク「2017 年度の雇用動向に関する企業の意識調査」より
 
 
 
作成/MANA-Biz編集部