組織の力

2018.12.14

「ポートフォリオ・マネジャー」が最強のチームを育てる〈後編〉

メンバーの内発的動機に働きかける

ビジネススピードが加速する現代において、多様性に富むメンバーが集まったチームを束ねる「ポートフォリオ・マネジャー」の重要性は増すばかりだ。では、具体的にどのようなノウハウをもってチームの生産性を上げていけばよいのか。グーグルやモルガン・スタンレーといったグローバル企業において人材開発に携わり、自らも株式会社プロノイア・グループをという人材・組織開発を専門とする会社を経営する形でチームビルディングを日々行うピョートル・フェリクス・グジバチ氏にお聞きした。

チームビルディング
実践事例

2018年10月15日、「真のチーム王者は誰だ!?~唯一無二の『世界最高のチーム』決定戦~」と題して、チームワークを競うイベントが開催された。当日は審査員として、ピョートル氏のほかチームビルディングにおいて特色を発揮する複数企業のピープルスペシャリストが集結し、チームづくりに関する持論や、自社の施策をパネルディスカッションの形で展開した。それぞれの概要を紹介しよう。


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株式会社メルカリ
唐澤俊輔氏 執行役員 VP of People&Culture
チームビルディングでは、「足し算」と「かけ算」が大切だと考えています。足し算とは違う属性の人を組み合わせたチームをつくることでダイバーシティのあるチームをつくること、そしてかけ算は、その人同士で譴責的な議論をさせることで個々の人だけでは生まれない価値を生むことです。メルカリにとっても「ポートフォリオ・マネジャー」の考え方は重要ですね。

サイボウズ株式会社
青野 誠氏 人事部副部長
サイボウズでは、議論をするときに全員が同じフレームワークを使って行います。そうすると会話の効率がとてもよく、建設的に物事を解決していくことができます。これも心理的安全性につながるのではないでしょうか。

株式会社LIFULL
羽田幸広氏 執行役員 Chief People Officer
LIFULLでは、会社のビジョンに共感した人だけが集まり、内発的動機付け(本人がやりたいこと)に基づき自由に挑戦する場をつくることを大事にしています。チームビルディングにおいては、感情GAP→ビジョンGAP→戦略GAPの順で3つのGAPを埋めることを重視しており、チームを組成したら、まず最初にメンバー間の感情のGAPを埋めるために、チームメンバーが仲良くなれるような施策を行っています。


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株式会社電通
片貝朋康氏 ビジネスプロデューサー
電通は、「アドバタイジング・エージェンシー」から「ビジネスプロデュース・カンパニー」に変わろうとしています。社内だけでなく、社外の人材を巻き込んでチームをつくり、電通は各メンバーの個性をチーム全体のパフォーマンスに活かす取り組みを行っていければと思います。自己責任の時代になっていくなかで、チームビルディングも今後どんどん変わっていくでしょう。

株式会社ヤッホーブルーイング
井手直行氏 代表取締役社長
ヤッホーブルーイングがチームづくりで重視しているのは、「各メンバーが自分の得意を活かすこと」です。日本の社会では「出る杭は打たれる」風潮が強いですが、ヤッホーでは「出る杭を伸ばす」がモットー。苦手なことがあっても、それが得意なメンバーは必ずいるものです。凸凹をうまく組み合わせて、素敵なジクゾーパズルの一枚絵を描いていければ、世の中に対してイノベーションを起こせると信じています。


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ピョートル・フェリクス・グジバチ(Piotr Feliks Grzywacz)

ポーランド生まれ。2000年に来日後、モルガン・スタンレーなどを経て、グーグルのアジア・パシフィック地域における人材開発と組織開発、リーダーシップ開発分野で活躍。2015年に株式会社プロノイア・グループ株式会社を設立し、企業がイノベーションを起こすための組織文化変革に向けてコンサルティングを行う。『世界最高のチーム』(朝日新聞出版)や『日本人の知らない会議の鉄則』(ダイヤモンド社)、『Google流 疲れない働き方』(SBクリエイティブ)など著書多数。

文/横堀夏代 撮影/荒川潤