KOKUYO FURNITURE


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Product identity モノづくりに秘められた「モノ」語り

Vol.09 PUNTO

1983年、コクヨとして初のモールドポリウレタン(※1)を採用した「バイオテックチェアー」が誕生して30年。イスの座り心地と、空間におけるイスの役割において、基本的なことから改めて見つめ直し、オフィスチェアーのさらなる進化を目指しました。
(※1)モールドポリウレタン:金型にポリウレタンの液を流し込み、発泡させて成形する方式のポリウレタンクッション。自由に形を決められるため、座り心地をコントロールしやすい。

デザイン・開発担当
商品開発部 上田伸行

デザイン・開発担当
商品開発部 奥一夫

デザイン担当
商品開発部 大木一毅

ウレタンクッションの座り心地を深化させる

「メッシュチェアーがメインストリームに移行している中で、なぜ今、張りぐるみのチェアーが必要なのか?」と、言う疑問を払拭するところから、今回のプロジェクトはスタートしました。その疑問を払拭するために、ヒアリングや観察、ディスカッションを幾度と重ね、座り心地やデザインの方向性を模索しました。
座り心地を高めるためには、複合的な要素をうまく融合させなければなりません。開発チームは研究開発チームが取り組んでいた、腰痛の原因として考えられている、骨盤の前ズレを防止する、新しい座の面形状に着目しました。スタートは、微妙に座の面形状を変化させられる、ラピッドモデルをベースに、数十人の体格差がある被験者に対して、座り心地評価を繰り返し、理想的な座の面形状を模索しました。また、背骨形状の個人差に対応するために、エアランバーサポートを採用。背が張り地(布)で覆われた張りぐるみチェアーでありながら、ダイナミックに調整が出来、きちんと効果が発揮できる様にエアクッションに磨きをかけました。座面の骨盤保持機能、背面のエアランバーサポート機能を最大限に活かすウレタンクッションの厚み、包み込まれる面形状、座った瞬間に感じるウレタンクッションのやわらかさ(比重)など、座り心地に関係する要素の組合せを何パターンも試作し、検証し、調整を繰り返しながら、「ポスチャーサポートシート」と言う、新たな機能に到達しました。

ウレタンクッションの形状はラピッドプロトタイプから量産品直前の試作品まで試行錯誤、ベストな形状を追及しました

デザインでユーザーに何を、どう伝えるか?

今回はポスチャーサポートシートとエアランバーサポートと言う、特徴的な機能がウレタンクッションや張り地で覆われてしまいます。そこで、あからさまに機能を外観で主張しなくとも、何か機能や座り心地に対する期待感を、外観から感じてもらえるデザインはできないかと考え、「内包する」と言うキーワードを設定しました。最終的に決まったデザイン案のヒントになったのは桜餅や柏餅の様な和菓子でした。ふんわりした皮で、甘くておいしいアンコを包み込んで、隙間からそれが覗いているような様子は、アンコへの期待感を抱かせます。そんな、内部から感じられる期待感をイスのデザインで表現しようと試みました。また、ベースのクッションと張り地によるツートンカラーのデザインは背座のクッションを薄く見せ、張り地の色や質感も引き立てる効果をもたらしました。

「内包する」と言うキーワードを表現したラフスケッチ(左)。一枚の布地で包んだ構成の他にも
果物を割って果肉が切り口から見えているような構成や、ブリスターパックの様に、
外装が内容物の形状に影響を受けている構成など、一つのキーワードを基に様々なデザインを検討しました。

空間を引き立てるイスを目指して

イスがインテリアデザインに影響を及ぼす要素の中に「張り地」があり、張り地一つで空間の印象が大きく変わります。これまではデスクやミーティングエリアなどとのコーディネートを考慮しながら、張り地の選定や、カラー展開を考えていましたが、社内のインテリアデザイナーからは、「インテリアデザインに合わせて、もっと張り地で遊べる(空間を引き立てる)イスがあっても良いのでは?」と、言う意見もあり、「インテリア性をさらに高める」という視点で、どういった張り地が良いのか?色々な張地メーカーのサンプル、カーテンメーカーのサンプル、衣服の張地サンプルを大量に集め、ディスカッションしました。具体的なデザインモデルを用いてヒアリングをしている中で、起毛した張り地に対して「高級感がある」「インテリア性(ホーム的要素)があるので良い」と、言った声が多く、スタンダードなプレーンな張り地と、起毛した張り地に方向性を絞り、さらに検証進めていきました。
しかし、起毛している張り地は、風合い(起毛感、まだら感)を残したままオフィス使用に耐えうる耐久性を両立させるのに時間がかかりました。理想的な色を出すことも、通常の張り地よりも困難で、トライ&エラーの連続でした。また、クッションを1枚の布で包んだ様なデザインは、縫製においてもハードルが高く、ほとんど行われない職人技的な縫製方法を採用することとなりました。まさに、Made in Japanの意味を再確認できる縫製です。

張り地の風合いはもちろんのこと、テクスチャーと縫製の相性など、様々な視点から可能性を検討。
当初は透過性のある張り地やストライプなどの柄物も検討されていました。

長く愛される、次世代スタンダードチェアーに

冒頭で、30年前にデビューした「バイオテックチェアー」を紹介しましたが、この商品は発売以来、改良を重ね、「バイオテックチェアー3」として、今なおカタログに掲載されるロングセラーとなっています。追加購入や、再購入していただく、根強いファンもいらっしゃいます。まさに、コクヨのスタンダードチェアー。今回のイスも長く愛されていただける様な、次世代スタンダードチェアーになってくれればと願っています。

「バイオテックチェアー3」(写真右)の様に、長く愛されるイスになってくれることを願っています。