KOKUYO FURNITURE


  1. HOME > 
  2. コンテンツ > 
  3. MO-RUM > 
  4. プロダクトアイデンティティ

Product identity モノづくりに秘められた「モノ」語り

Vol.10 PADRE

自治体庁舎や医療施設の待合空間をターゲットに、多様な来訪者に使いやすいように開発されたユニバーサルデザインのロビーチェアーです。
センシティブユーザーとのワークショップを通じて見つけた普遍的な使いやすさを追求しつつ、運用者メリットとしての「メンテナンス性」「デザイン性」を実現しました。

デザイン・開発担当
商品開発部 林友彦

デザイン・開発担当
商品開発部 杉浦志穂

はじまり

2010年9月、パドレチェアーの開発はスタートしました。
きっかけはマーケティング部門の「公共施設の待合空間にお勧めできる待合椅子が必要!」という要請からでした。様々なユーザーが訪れるからこそ誰もが心地よく過ごせる空間であるべきですが、そのような空間を提供できる家具はありませんでした。
我々は早速、営業・マーケティング・開発・デザインの混成チームを構成し、様々な身体的特性を持つユーザーと一緒にワークショップを行い、公共の待合空間にあるべき椅子の姿を探っていきました。
社内関係者が一緒にユーザーのリアリティを感じ、対話しながらワークショップを行うことでたくさんの気づきを得ることができ、開発は順調に進んでいくように見えました。
この時、本サイトで以前取り上げたマドレチェアー(※1)も開発がスタートしました。
マドレチェアーはコンパクトサイズで小規模空間をターゲットにしているのに対し、パドレチェアーは大規模空間をターゲットにしていました。
(※1)2011年に発売したユニバーサルデザインのロビーチェアー。

ユーザー参加型ワークショップの様子

混迷・挫折

2011年7月、マドレチェアーはワークショップで見つけた価値を具現化し、製品化が決まりましたがパドレチェアーは製品化NGとなってしまいました。ユーザーリアリティを満たす機能性、デザイン性やコスト、あらゆる点で商品化するための合格点に達していないと関係者から判断されたのです。
ここから長くつらい混迷の時期が始まります。スケッチ、試作をして会議に出してNGを受けるという流れを何度も繰り返しました。最後には、自分たちがどんな価値をお客様に提供したいのか分からなくなっていました。パドレチェアーはお蔵入りの危機を迎えます。
ワークショップに参加してくれたユーザーや、社内チームのメンバーなどたくさんの関係者の協力で進めてきただけに、申し訳ない気持ちでいっぱいでした。

たくさんのスケッチ、試作を繰り返し行った。

再始動・復活

2012年3月、ワークショップで見つけた価値を何としても実現したいというチームメンバーの強い思いから、パドレチェアープロジェクトが再始動します。
我々が最初に行ったことは、誰にどんな価値を提供したいのかを改めて見直すことでした。再結集したメンバーで議論した結果見えてきたことは、待合空間のユーザーは来訪者だけではなく、そこを管理する運用者や空間を作る設計者の方々も実はユーザーだという事実でした。ワークショップの内容にこだわるあまり来訪者のことばかり考えて、他のユーザーについてはおろそかにしていたことに気付いたのです。一筋の光明が差した瞬間でした。
そこから待合空間の運用者の方へのヒアリングなどを通じて、実現すべき価値が見えてきました。それは、待合空間を清潔な状態に保つためのメンテナンス性と空間に調和するデザイン性でした。
ワークショップで見つけた価値にこの2つを加えた商品を実現できれば必ず良いものになる、という強い思いを持って開発を進めていきました。
しかしメンテナンス性とデザイン性を両立し、強度と安全性を兼ね備えたチェアーを作るのは一筋縄ではいきません。これまで検討してきた案をすべて捨てて、構造のデザインから取り組んでいきました。

デザイン性を損なわずメンテナンス性を実現するための構造デザイン

受難再び

2012年7月、苦労のかいあって製品化が決定しました。
しかし、製品化が決まったあとも苦難の連続でした。パドレチェアーは、空間に調和するデザイン性を追求するために稜線の数を減らし、シンプルな形状にしています。そのため、細部の仕上がりやおさまり一つでクオリティが決まってしまうのです。
試作・修正を繰り返しながら縫製や張りのディテールを詰めていきました。工場の方々の協力により、やっと満足いく仕上がりが出来たのは量産品確認会前日でした。

縫製・張りのディテールの詰めを発売直前まで繰り返した

豊かな待合空間を目指して

2013年1月、ついにパドレチェアーが発売されました。
発売後、自治体庁舎や医療施設の待合空間に多く採用いただいています。
また、パドレチェアーは IAUDアウォード2013を受賞いたしました。
たくさんの関係者と多くの困難を乗り越えたからこそ、喜びもひとしおでした。
パドレチェアーが、誰もが心地よい待合空間つくりに役立つことを願っています。