組織の力

2021.05.17

地方でも優秀な人材に選ばれる自由な働き方

エンジニアのパフォーマンスを最大化する組織づくりとは

新型コロナウイルス感染拡大以前から、時間・場所・雇用契約に制約のないフルリモートでフレキシブルな働き方を取り入れてきたK.S.ロジャース株式会社。自由でフラットな組織のマネジメントで大切なことや、コミュニケーション方法について、K.S.ロジャース代表取締役社長CTOの民輪一博氏にお話を伺った。

特徴ある会社づくりで
優秀な人材を集める

このような働き方を採用したことで、特徴ある会社に成長し、その特徴が働く場としての魅力を高めているという。

「まず会社としてエッジが立ってきたかなと感じます。会社としての個性が際立ったおかげで、人が集まりやすくなり、組織として大きくなってきました。新型コロナウイルスの影響で社会全体にリモートワークが普及した結果、以前は『そんな働き方でうまくいくわけがない』というネガティブな反応も多かったのですが、最近は我々の働き方に対して理解も得やすくなりました」

その一方でまだ理想に対して1割、2割しか到達できていないと民輪氏は強調する。「まだまだ道半ばで、インフラといえる程のインパクトを社会に与えるところまで至っていません。これからもっと試行錯誤し、発信していく必要はあると思っています」




声や文字のコミュニケーションでは
相手への敬意を大切に

一方課題としては、創業当時からコミュニケーションに問題意識をもっているという。

「プロジェクトのキックオフの時などはZoomなどを使うこともありますが、通常のコミュニケーションはボイスチャットツール中心で、顔出しもしない状態でやり取りしています。そうするとちょっとした言葉の受け取り方も、昔からいる人と最近入った人では違います。例えば私の人となりを知っていれば冗談で言ったことだとわかってもらえても、これまでそれほど関わりをもっていなかったメンバーは真に受けてしまう、といったことも起こります」

「ボイスチャットツールでのやりとりでは声や文字だけだとニュアンスがわからない場合もあるため、気づいた時に都度改善していくようにしています。相手に伝わって初めてコミュニケーションであると考え、常に相手への敬意を持つことが大事だと考えています」

フルリモート・フルフレックスの形態の弱点として、すぐにコミュニケーションが取れないことがある。そのため一般的な働き方以上に「報連相」の意識をもち、思わぬ相互不理解を生まないように、対面以上に言葉の選び方や表現、正しく伝わったかどうかの確認が重要になってくる。チームメンバーへの信頼、尊敬、謙遜の気持ちをもってコミュニケーションを取ることが必要なのだという。 1_org_145_06.png また、コミュニティの雰囲気を重視するため、コミュニティにKPIを設定することにも挑戦していると民輪氏は語る。
「コミュニティ度合いを計る独自の指標をつくって定量化するなど、これからの組織文化をつくっていくために試行錯誤しています」

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働き方の自由度を高め
イノベーションやDXを推進

新型コロナウイルス感染拡大の影響で生活様式や働き方が多様化し、新たな需要や価値観に合わせた社会変容が起きている。その結果、物理的距離を越えて首都圏一極集中から脱却する組織変容・働き方変容の加速が予見されている。自由な働き方の先駆者としての知見を活かし、これから求められる多様な働き方のマネジメントに対応したサービスも展開していく予定だという民輪氏。

「新しい働き方やライフスタイルを推進していく社会インフラになることをめざす会社として、現在、リモートワークやパラレルワークの導入によるチームマネジメントの課題を解決するマネジメントツールなどのサービスをリリースすることにも注力しています。地方の企業が自由な働き方を取り入れることは、採用難に対する新しい打開策にもなりえるし、それができるようになることによって、地方にイノベーションを創出したり、DXを進めるチャンスにもなると考えています。そのお手伝いが出来れば嬉しいですね」

民輪氏は自身の経験から、地方の採用難という課題とエンジニア特有の働き方を結びつけ、今までにない自由な働き方にチャレンジした。このチャレンジは、地域の人材格差をなくし、優秀な人材が時間と場所に縛られずに活躍できる働き方の実現であり、こうした働き方を社会の基礎にしていくことが、K.S.ロジャースがめざす社会インフラだ。新型コロナウイルスの拡大により、図らずも働き方の自由度が増し、ワーカーの意識も大きく変わりつつある。民輪氏が実践する自由な働き方が広まり、一般化していく日も遠くないのかもしれない。



民輪 一博(Tamiwa Kazuhiro)

K.S.ロジャース株式会社代表取締役。京都大学大学院工学研究科電気工学専攻卒業。学生時代に学生ベンチャーを立ち上げ、卒業後にもAI系スタートアップに参画した後に、2017年にK.S.ロジャース株式会社を設立。政府機関や大手企業のシステム開発などを手がける。現在、リモートワークでのマネジメントに取り組む中間管理職を対象にしたサポートツールを開発中。


K.S.ロジャース株式会社
「エンジニアにとって最も働きやすい環境を作る」をミッションに掲げて2017年に創業。WEB・アプリケーションの新規開発・運営支援、CTOコンサルティングなどを手がける。従業員である約70名のエンジニアがフルリモート勤務を行い、「フルフレックス・雇用形態の切り替え自由・副業自由」というフレキシブルな働き方を実現。

文/中原絵里子