リサーチ

2021.04.09

部署間コミュニケーションの現状と課題

交流の場づくりと個人の意識改革が解決のカギ

セクショナリズムが根強い日本企業では、他部署との連携が課題となることも多い。在宅ワークが増えた今、部署間コミュニケーションの課題はより顕在化しているのではないか。コクヨ株式会社が実施した調査結果をもとに解説する。

コロナ禍で奪われる
部門間コミュニケーションの場と機会

タバコ部屋、個室(会議前後など)、休憩室・カフェスペースなど、他部署とのコミュニケーションが取りやすい場所には、さまざまな部署の人が同じ空間に偶然居合わせる、ちょっとした隙間時間がもてる、という特徴がありました。特別な場所や機会を設けるよりも偶然居合わせたときに、軽いあいさつや気軽な会話を意識することが、仕事外コミュニケーションの第一歩として有効です。コミュニケーションが苦手な人でも、これなら気負わずに取り組めるのではないでしょうか。

しかし、2020年春から続く新型コロナウイルスの影響で多くの企業がテレワークを導入し、コミュニケーションの場がリアルからオンラインに変化しています。オフィス内なら当たり前にあった「偶然」や「隙間時間」がなくなり、コミュニケーションが生まれにくくなっているのです。

調査では、ネット上のコミュニケーションの課題として、下記のような内容が挙げられました。インフォーマルなコミュニケーションを生んでいたのは、場の力が強かったことにあらためて気づかされます。オンラインではオフィスにあったような偶然な出会いは不可能で、連絡は必要最低限、会議前後のちょっとした交流も難しく、相手の考えが読めない、本音が話しづらいなどの弊害も出ています。対面ではコミュニケーションができていた人も、これからは難しくなるかもしれません。

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オンラインコミュニケーションの
課題解決策

リアルとは勝手の違うオンラインコミュニケーションでは、これまでとは違った創意工夫が求められます。調査で「ネット上のコミュニケーション活性化のための工夫」を聞くと、課題としても多く挙げられていた「相手の理解度が測れない(表情が読めない)」「本音の会話がしづらい」などに呼応する、「本音が話せる」「表情がクリアにわかる」「話したい相手にすぐに会話ができる」といった内容が上位にきていました。

これらを実現するためには、本音が話せる安心感をオンライン上でも担保することが重要です。だいぶ慣れたとはいえ、対面と比べればオンラインコミュニケーションはまだまだ初心者という人も多いでしょう。だからこそ、試行錯誤が必要で、まさに今がその時なのです。

まずは、信頼関係の再構築です。オンラインでのやり取りがコミュニケーションの主体となったときに、信頼関係をどう築き、維持していくのか。対面の時以上に日々のコミュニケーションのあり方が重要になります。最初は大勢ではなく、小人数や1対1で安心安全を担保しながらコミュニケーションを取っていくのがいいでしょう。また、オンラインならではの録画・録音機能が不安材料になることもありますので、ICTツールの使い方にも配慮と工夫が必要です。

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部署間コミュニケーション、特に仕事外でのコミュニケーションは、リアルの場があったこれまでも十分でなかったことが結果から見えています。そのうえ、今後オンライン化が進めば、仕事外のコミュニケーションはさらに難しくなることが予測され、業務そのものへの弊害となることも懸念されます。部署やチームをまとめるマネジメント側は、課題が見え始めている今から対処していくことが必要ではないでしょうか。

また一方で、信頼関係は双方向で築いていくものなので、他者任せではなく個人としても意識していくことが求められます。偶然の交流が難しくなった今、自らが積極的に行動・発信をしていくことが必要になるでしょう。またコミュニケーションの手段が対面からオンラインに変わったことに合わせて、オンラインに適したコミュニケーション術を自分なりに身につける必要もありそうです。

セクショナリズムの壁を取り払って、部署間コミュニケーションを促進するためには、企業にも個人にも、これまでとは違った工夫や積極性が求められるのではないでしょうか。


調査概要

実施日:2021.2.09-10実施

調査対象:社員数500人以上の企業に勤めているワーカー

ツール:WEBアンケート

回収数:309件


【図版出典】Small Survey「部門間コミュニケーション」



河内 律子(Kawachi Ritsuko)

コクヨ株式会社 ファニチャー事業本部/ワークスタイルイノベーション部/ワークスタイルコンサルタント
ワーキングマザーの働き方や学びを中心としたダイバーシティマネジメントについての研究をメインに、「イノベーション」「組織力」「クリエイティブ」をキーワードにしたビジネスマンの学びをリサーチ。その知見を活かし、「ダイバーシティ」をテーマとするビジネス研修を手掛ける。

作成/MANA-Biz編集部