リサーチ

2021.04.09

部署間コミュニケーションの現状と課題

交流の場づくりと個人の意識改革が解決のカギ

セクショナリズムが根強い日本企業では、他部署との連携が課題となることも多い。在宅ワークが増えた今、部署間コミュニケーションの課題はより顕在化しているのではないか。コクヨ株式会社が実施した調査結果をもとに解説する。

部署間コミュニケーションの
現状と課題

調査では、部門間コミュニケーションの実態について、シーンを「仕事」と「仕事外」に分けて聞きました。

調査結果をみると、仕事に関する部署間コミュニケーションについては、おおむねスムーズに取れていることが読み取れます。しかし、仕事外になると「スムーズである」という感触が全体的に下がっていました。

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また、仕事外での部署間コミュニケーションが「スムーズである」と回答した割合は50%未満だった一方で、「必要だ」と回答した割合は75.4%にのぼり、理想と現実に大きなギャップがあることがわかります。

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仕事外の部署間コミュニケーション
進まない理由は?

調査では、「他部署とのコミュニケーションで困っていること」を聞きました。「気軽に話しかけられる場所がない(22.7%)」、「業務内容がわからず声をかけづらい(22.0%)」、「共通の話題がない(20.7%)」が上位に挙がっています。

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この結果をもとに、仕事外の部署間コミュニケーションが進まない要因を考えます。

<要因1>必要性を感じていても実践できていない人が多い

仕事相手が社外のお客さまであることが多い営業部門などは、社内にいる時間が短いため、なかなか仕事外の会話をするきっかけをつかむことが難しいと考えられます。

また、相手の「業務内容」や「繁閑状況」が把握できないことで、コミュニケーションの取りづらさを感じる人も多いようです。特に、自部署内で完結する業務が多い業務を担当している場合、仕事上でもあまり接点がないと、他部署の状況を知る機会もなく、仕事外のコミュニケーションのきっかけがなかなかつかめないという実態もありそうです。

<要因2>必要性を感じていない人も一定数存在する

仕事外コミュニケーションは必要と思わない層(24.6%)からは、「仕事とプライベートは別」「仕事への支障を感じない」「面倒くさい」「上司が他部署とコミュニケーションを取ればいい」という意見がありました。

たしかに、日々の業務を進めるという意味では、仕事外でのコミュニケーションは必須ではないかもしれません。しかし、コミュニケーションに積極的な人の多くは、仕事の話題を糸口に会話を拡げて情報収集をすることや、人脈を拡げることが、長期視点または工夫しだいで仕事に活きてくることを知っています。こうした仕事外コミュニケーションに対する意識の差は大きいでしょう。

<要因3>気軽なコミュニケーションの場がない

「他部署とのコミュニケーションで困っていること」への回答に、「気軽に話しかけられる場所がない」が多く挙げられたことから、コミュニケーションの場の問題も浮き彫りになりました。 「他部署の人と会えば話す場所」として最も多く挙げられたのは「タバコ部屋」でした(タバコ部屋を利用している人のうち、他部署の人と会えば話すと回答した人の割合)。しかし、昭和時代の仕事場での情報発信基地であった喫煙スペースは、近年オフィスから消えつつあります。そういった自然と人が集まる場による部署間コミュニケーションの機会減少も、要因の一つである可能性があります。




部門間コミュニケーションは
どこで行われている?

「他部署の人と会えば話す場所」としては、「個室(会議前後など)」「休憩室・カフェスペース」「通路」が上位に挙がっています。他部署とのコミュニケーションは、偶然居合わせた場や隙間時間で生まれていることがわかります。他部署とのコミュニケーションが取れている人は、こうした偶然の機会や隙間時間をうまく活用しており、コミュニケーションが取れていない人と比較するとその差は歴然です。

「個室(会議前後など)」「休憩室・カフェスペース」「通路」「複合機付近」など、部署の垣根がないスペースはオフィス内にいくつもあります。仕事外の話題であれば、より偶然性が大切で、部署間コミュニケーションに特別な場所は必要ないのかもしれません。もっとも重要なのは、部署特有の空気が薄れる場所で、他部署の人と出会うセレンディピティにおいて、いかにコミュニケーションを促進できるかということのようです。

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河内 律子(Kawachi Ritsuko)

コクヨ株式会社 ファニチャー事業本部/ワークスタイルイノベーション部/ワークスタイルコンサルタント
ワーキングマザーの働き方や学びを中心としたダイバーシティマネジメントについての研究をメインに、「イノベーション」「組織力」「クリエイティブ」をキーワードにしたビジネスマンの学びをリサーチ。その知見を活かし、「ダイバーシティ」をテーマとするビジネス研修を手掛ける。

作成/MANA-Biz編集部