リサーチ

2020.10.16

ポストコロナ時代に向けた働き方の変化とは

在宅勤務でワーカーの意識はどう変わったのか

新型コロナウイルス感染症の拡大をきっかけに、多くの働き手は半ば強制的に在宅勤務を経験することになった。労働環境が急激に変化する中で、働き方に対する意識も大きく変わりつつある。新型コロナウイルスをきっかけに起こった「ワーカーの意識変化」と、その変化から見えてくる新しい働き方の兆しについて、コクヨ株式会社ワークスタイル研究所の田中康寛が解説する。

在宅勤務経験による意識・行動変化の傾向から
ワーカーを6タイプに分類

今回の調査では、「在宅勤務を実践したことによる働き方への意識変化は、人によって異なるか」を考察する試みも行いました。その結果、6タイプのワーカー像が見えてきました。各タイプの傾向を2つの軸で分類したものが下記の「6つのタイプ分類」の図です。

横軸は、働き方や環境が変わった時に自身の行動を変化させる度合いを示しています。左に行くほど「以前と同じ働き方を継続したい」と感じ、右は「今の環境にフィットする新しい働き方を見つけよう」と志向するタイプになります。

縦軸は、働く上での行動指針をどこに置くかを示しています。上に行くほど「自分で決めたルールに従って行動したい」という志向が強くなり、下は「周りの状況を見ながら適切に行動したい」という思いを大切にしています。

4_res_167_04.png

6タイプのうち、特定のタイプが望ましいといったことはまったくありません。ただ、自社にはどんなタイプのワーカーが多いのかを知ることは、企業が働き方やオフィス改革の指針を決める際に大いに参考になります。

例えば、左下の「早くオフィスに戻りたいワーカー」の割合が高い企業では、ある程度執務空間の面積を確保し、オフィスで充実した時間を過ごせる環境整備をすることも大切だと考えられます。




在宅勤務の長期化により
出社を望むワーカーが増えた

「6つのタイプ分類」で私が興味深いと感じたのが、左下の象限が4割を占めている点です。この象限はこれまでのオフィス勤務を心地よく感じ、「オフィスに戻りたい」と感じているワーカーです。

コクヨを含めさまざまな企業で、「もっとテレワークをしたい」という声もよく聞いていましたし、「今回在宅勤務を経験したことで、多くのメリットを感じた」、との声も多かったことから、テレワークを望むワーカーがもっと多いと予測していました。

もちろん、今回の在宅勤務が強制的だったことや、働く場の選択肢が自宅に限られていたことなどが「オフィスに戻りたい」理由と考えられますが、選択の不自由さだけでなく、先に述べたように交流や仕事のしづらさも強く影響していると推察します。

アンケート実施から数か月が経った今、「社内メンバーとリアルな交流がしたい」という声はさらに強まっています。また、自宅での働き方に悩む人も増えていると聞きます。こうした事由も相まって、オフィス勤務復帰を望むワーカーはさらに増加する可能性もあります。

オフィスの縮小を検討する企業が増えていますが、社員の意向に応じて「オフィスでソロワーク」という選択肢を残したり、メンバー同士が交流を深めるためのスペースを充実させたりすることも検討が必要だと思います。



ポストコロナ時代、企業に求められるのは
予測不能な事態に対応可能な柔軟性

今回のコロナ禍を通じて、社会的状況もワーカーの意識も大きく変わりつつあります。その変化を企業側もとらえようとしています。そこで今後は、場所や時間にとらわれずに生産性向上を目指す柔軟なワークスタイルがますます拡がると考えられます。


しかし、そのやり方で本当に生産性が高まるかどうかは、今後の企業や個人のあり方次第です。定期的に働き方や成果を分析しながら微修正を繰り返すことで、よりよい企業活動を追求していけるはずです。

そのために企業は、今後も起こり得る予測不能な事態に対応できるよう、幅のある働き方をさらに取り入れていくべきでしょう。また個人は、「自分に求められる役割は何か」と考えながら働き方をアップデートしていくことが大切だと思います。


【出典】コクヨwebアンケート『在宅勤務実施中の意識や行動の変化について』


【関連記事】
データから読み解くポストコロナの企業動向

田中 康寛(Tanaka Yasuhiro)

コクヨ株式会社 ワークスタイル研究所 / ワークスタイルコンサルタント
2013年コクヨ株式会社入社。オフィス家具の商品企画・マーケティングを担当した後、2016年より働き方の研究・コンサルティング活動に従事。国内外のワークスタイルリサーチ、働く人の価値観調査などに携わっている。

文/横堀夏代