リサーチ

2020.07.22

新型コロナウイルス感染拡大が
「障がい者雇用」に落とす影

採用活動の停滞は、社会的弱者にとって大きなネックに

新型コロナウイルス感染拡大による、雇用への影響が深刻化している。発達障がい(広汎性発達障害、ADHD、自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群等)に特化した人材サービス事業、就労支援事業、教育事業等に取り組んでいる株式会社Kaienは、2020年3月に『コロナウイルスによる障害者雇用への影響』に関する緊急アンケートを行った。

2018年11月にアプリを一般公開 新型コロナウイルスは企業の経営に甚大なダメージを与え、雇用の継続や採用活動に影響を及ぼしている。2020年3月には厚生労働省から「新卒内定者の内定取り消し等をしないよう配慮を」という要請が出たが、企業側も経営上難しい側面もあるうえ、来期に向けては感染対策のために採用活動自体が従来どおりに行えていない現状がある。

 
そのなかで、障がい者雇用に関しては、一般的な雇用よりも影響を受けやすいのではないか…と懸念する声がある。株式会社Kaienが実施した『コロナウイルスによる障害者雇用への影響』に関するオンラインアンケートには、企業の人事担当者65人から回答が寄せられた。今後の障がい者雇用の動向を占う一つの目安として紹介したい。
 
障がい者雇用の採用について、調査では7割の企業が「当初の計画どおりに進める」と答えたが、縮小の可能性を示唆する企業もある。新型コロナ禍での採用の縮小は障がい者雇用に限ったことではないし、企業には政府の定める法定雇用率をクリアするという課題もあるとはいえ、当事者たちにとっては、今後経済状況がさらに悪化したときの不安は拭えないだろう。
 
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新型コロナウイルス関連で、障がい者雇用への採用活動に「すでに影響が出ている」と答えた企業は、全体の4割弱だった。採用イベントの中止を余儀なくされたり、開催しても人が集まりづらい等の理由から、採用スケジュールの遅延が発生しているようだ。
 
これらは通常の採用活動においても同様だが、特に障がい者雇用において難しいのは、ハンディキャップを抱える人たちに対しての配慮だ。
 
身体的なハンディキャップによって重症化リスクが高まる人は、厳重な感染対策をしても外出は恐怖だろう。発達障がい者や精神障がい者のなかには、スケジュールや選考手段の変更といったイレギュラーな事態への対応が難しい、という特性を持つ人もいる。
 
採用活動を進めるべく何かしらの手を打っても、機能しにくい可能性があるのが障がい者雇用の現場だ。それを理解し、じゅうぶんな配慮をしながら進める必要がある。
 
 
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新型コロナ禍でも障がい者雇用を通常どおりに行いたいと思っている企業が7割にのぼるなか、「採用活動が思うように進められない」という状況がある。収束の見通しがつかないなかで「オンライン就活」の推進が期待されているが、感染拡大の最中はもちろん、収束した後も経済は難しい状況が暫く続くうえ、感染拡大防止のための「新しい生活様式」への移行も求められている。
 
また、今回のように緊急事態により働き方を変えざるを得ない場合、障がい者が働きやすい環境を新たに構築し、迅速にセッティングするのは容易ではない。障がい者の場合、普段から個別対応が必要なケースが多く、一般的なビジネスパーソンよりも「働き続けること自体が難しい」という状況になりやすいのだ。
 
新型コロナウイルスによって、採用活動、そして採用した後に関しても、「緊急時に、障がいのある労働者にどう配慮していくのか」という課題が示されている。採用活動において、そして採用した後も、「働きたい障がい者」や「働き続けたい障がい者」が真っ先に置き去りになるような状況を避けるため、リスクマネジメントをしていく必要がある。
 
 
【出典】株式会社Kaien 緊急アンケート『コロナウイルスによる障害者雇用への影響
作成/MANA-Biz編集部