リサーチ

2019.03.29

物言わぬ退職「不妊退職」を防ぐには?

働く女性を支えるために妊活支援でできること

上司や同僚への相談がしづらい不妊治療。妊娠出産に比較するとあまり注目を浴びない話題だが、仕事と治療の両立に悩み、退職を選ばざるを得なかったという女性もいるようだ。悩みを抱える30〜40代の社員は、企業の第一線で活躍する世代でもあり、会社としても貴重な戦力を失うダメージは大きい。「不妊退職」を防止するために企業ができるサポートはないのだろうか。

NPO法人Fine(ファイン)が仕事をしながら不妊治療を経験したことのある、もしくは考えたことのある男女を対象に、不妊治療のために働き方を変えたか調査したところ、約40%の人が「変えた」と回答した。そのうちの約50%が退職を選んでいる。つまり、不妊治療によって5人に1人は退職しているということだ。
 
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職場には社員の不妊治療をサポートする制度はあるのだろうか。残念ながら「ない」との回答が8割を超えている。プライベートな問題であり、そもそも社員が不妊治療をしているかどうか把握していないため、企業側のサポートが進まないのだろう。
 
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数少ないながらも現在の職場にあるサポート制度としてあがっているのは、「就業時間制度」「休暇・休業制度」「不妊治療費に対する融資・補助」などで、職場に欲しいサポート制度の項目と一致する。多くの不妊治療中の社員が望んでいるのは、通院しやすい環境づくりであることがわかる。
 
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不妊治療中の社員は、治療による身体的負担、治療費等の経済的負担、通院にかかる時間的負担、いつ妊娠できるのかという精神的負担を抱えている。こうした負担を少しでも軽減するべく、企業側の取り組みも始まっている。
 
例えば、IT大手のサイバーエージェントでは、外部の専門家を招き、個別カウンセリングをする「妊活コンシェル」の制度や、不妊治療の通院などで休暇を取得できる「妊活休暇」を取り入れている。また、妊活中であることを知られたくない社員のために、女性の有給休暇を「F休」と呼び、具体的な取得理由を告げる必要はないよう配慮している。また、共済会が不妊治療の費用を一部負担するなど、金銭面で治療のサポートをしている企業も出てきている。
 
こうした具体策を企業側が打ち出すことで、社員全体に不妊治療への理解が深まることはもちろんだが、女性にとどまらず全ての社員が働きやすい職場づくりにも寄与していくことが期待される。労働人口の減少する中、ビジネスパーソンに選ばれる企業であるためにも、見えにくい問題にも焦点を当てていく必要があるのではないだろうか。
 
 
 
 
作成/MANA-Biz編集部