組織の力

2016.04.06

国内のグローバル化で変わるワークスタイル〈前編〉

グローバル人材サービスのパイオニア・パソナグループに学ぶ

人材サービス大手のパソナグループは、今年6月、フィリピンのグローバルヒューマンリソース大手・マグサイサイグローバル社と提携し、フィリピン人スタッフを直接雇用するハウスキーピング事業を開始する。グローバルにビジネスを進めるうえでの気づきや課題について、営業総本部ハウスキーピング事業の蒲生智会ユニット長(写真左)と山田良子(写真右)シニアリーダーに伺った。

フィリピンのグローバル企業と提携し
ハウスキーピング事業に参入する

パソナグループがこの新事業への参入を決めた背景には、政府の動向がある。「女性の活躍推進」を掲げる政府は、家事負担を軽減することが女性の就業率向上の一助になるとし、その家事の担い手として外国人の家事支援人材の受け入れを検討しているのだ。昨年夏に国会で審議された「改正国家戦略特区法案」の中に「女性の活躍推進等への対応のための外国人家事支援人材の活用」が盛り込まれ、神奈川県と大阪市で試験的に外国人人材を受け入れることが決まっている。

 

創業当初から女性の活躍を支援してきたパソナグループは、その一貫として新事業に取り組む。子会社のパソナライフケアが10年以上取り組んできた家事支援サービスの実績、さらに、パソナのグローバル事業部で構築してきた国境を越えた外国人人材の人材紹介スキームも、新事業の基盤となっている。

人材を輩出する対象国フィリピンは、もともと客船スタッフ(船員)やハウスキーパー、エンジニア、ホテルスタッフなどで女性・男性、母親に関係なく、長期にわたって外国へ働きに出ることが文化の一部となっている。

そのような国にある提携先マグサイサイグローバル社は、世界中に15拠点を持ち、多様な職種の人材を育成し、世界中に輩出しているグローバル企業だ。

 

 

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スタッフ受け入れについての打ち合わせ

 

フィリピンでの人材選考はマグサイサイグローバル社に一部委託し、両社で企画した日本語習得や家事代行スキル、異文化・ホスピタリティなどの研修は、フィリピンで実施する。

まず、研修では、海外と日本のハウスキーピングの違いのマインドセットから行う。海外では、ハウスキーパーはメイドという立場から、家に住み込むケースがほとんどだが、日本では時間単位にて各家庭をクリーニングするという、よりプロフェッショナルなスキルが求められる。そのために必要な、日本家屋を想定した研修施設にて、家事をはじめ、日本料理に必要なスキル及びタイムマネジメントを修得する。実際のサービスに基づいて、スキルと語学のトレーニングを同時に行うのが特徴だ。また、家に上がる際は靴を脱いで靴を揃えるなどといった日本独特の文化や習慣も教えていく。

 

さらに、来日前後のオリエンテーションにて、日本の交通状況やごみの出し方など、ハウスキーパーがスムースに日本の生活に馴染めるよう、生活面でもハウスキーパーを支援していく。

スタッフは現地で約2か月間の研修を受けたうえで、日本へ渡航。パソナで直接雇用し、約1か月間のオリエンテーション・OJTを経て、就業開始となる。現在、フィリピン人スタッフは現地にて選考中で、6月頃に日本に入国予定だ。

 

「フィリピンに行き、マグサイサイグローバル社にて研修を受けている受講生にお会いした瞬間、とても驚きました。みんなとても輝いていて、やる気に満ちていたんです。今の日本ではあまり見かけることが少なくなりましたが、体中からパッションがあふれているんですよね。それだけ仕事に対してのやりがいや使命感を持っているのだと思います。そういう仕事に対する姿勢を目の当たりにして、自分も士気上がる感覚を得ることができました」(蒲生ユニット長)

 

 

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文/笹原風花 撮影/ヤマグチイッキ