組織の力

2024.02.20

アルミニウム総合メーカー・UACJが目指す企業文化改革〈後編〉

働き方改革の指標としてエンゲージメント向上施策に注力

古河スカイ株式会社と住友軽金属工業株式会社の経営統合によって2013年に誕生した株式会社UACJでは、世界有数のアルミニウム総合メーカーとして、2010年代後半から企業文化変革に取り組んできた。2020年以降は、エンゲージメント向上の取り組みに力を入れ、社員のモチベーションアップを図っている。取り組みを推進した同社の斎藤和敬氏(新しい風土をつくる部部長)、熊谷規一郎氏(人事部 人事企画・労政グループ長)、草留大輔氏(人事部 人事ビジネスパートナーグループ長)、最首英一氏(人事部 人事ビジネスパートナーグループ主査)に、コクヨ株式会社コンサルタントの坂本崇博がお話を伺った。
左から)斎藤和敬氏、熊谷規一郎氏、草留大輔氏、最首英一氏、坂本崇博

納得度の高い指標を設定し
改革の成果を測る

――エンゲージメント向上に取り組み始めたきっかけは?


坂本:御社では近年、企業文化変革の一環として「エンゲージメント」という要素を重視した活動を展開なさっています。「会社の成長のために自らも成長していく」というエンゲージメントの考え方は、企業文化変革において最重要要素のひとつといえるのではないでしょうか。そもそもエンゲージメントに注目したきっかけはなんでしょう。

熊谷:2010年代後半から働き方改革に取り組んできて、明確な目標が必要だったからです。働き方改革の目標として「生産性」を設定する企業もあるかと思いますが、「何を生産性向上ととらえるか」は部門によって異なる面もあり、共通の指標として設定するのは難しかったのです。

坂本:その点でエンゲージメントは、調査によって見える化できるため、社員の働きがい・やりがいがどれだけ高まったかが一目瞭然ですね。

熊谷:社長にも提案して賛成してもらえたので、エンゲージメント調査実施に向けて各部門で説明会を行いました。このときに印象的だったのは、どの部門でもすんなり受け入れられたことです。何か新しい取り組みを始めようとするとき、たいていは懸念を示すメンバーがいるのですが、「エンゲージメント向上」という目標に関しては賛同の声が非常に大きく、スムーズな活動につながりました。

斎藤:2020年から新しい理念を浸透させるための対話会を重ねてきて、「自分たちは何を目指すべきか」が社内で共有されていたことも、多くの賛同を得られた一因かもしれません。目指す姿が明確なら、「目標に向けて自分たちはどの段階にいるのかを知りたい」と関心が集まりますから。もしいきなりエンゲージメント調査を始めることを提案していたら、「何のために行うのかわからない」と反対意見が出ていたでしょうね。

1_org_178_01.jpg 左から)斎藤和敬氏、熊谷規一郎氏




会社への信頼感アップが
エンゲージメント向上につながる

――エンゲージメント向上の施策とは?


坂本:社員のエンゲージメント向上のために、調査とあわせてどんな取り組みを始めたのですか?

草留:「ほめる文化」の醸成に力を入れています。これまでは、製造現場でもそれ以外の部門でも「できて当たり前、できなければ厳しく指導」といった空気があるところもありました。製造業では安全確認を怠ることが命取りになりますから、厳しく指導しなければならないこともケースによっては当然あります。
しかし、この傾向が行きすぎると社員のモチベーション低下につながるのも確かです。そこで、感謝し合ったり小さなことでもほめたりする雰囲気をつくるよう、リーダーや管理職クラスの社員に奨励しています。ほめる文化は、各拠点やグループ会社でも少しずつ浸透していると感じています。

斎藤:また、4年前に目安箱をつくり、制度や設備などに対する改善提案を出してもらっています。上がってきた意見は精査し、必要に応じて改善につなげています。「自分の提案が業務改善につながった」ということでエンゲージメント向上にもつながる取り組みだと考えています。

最首:2023年から全国の製造所やグループ会社を回って社員と話していますが、会社や業務に対して不満がある人は「自分が意見を言っても状況は変わらない」とあきらめを抱いているケースも多いと感じています。こうしたエンゲージメントが高いとはいえないメンバーの意見をすくい上げ、業務改善に活かすことで、全員が同じ目線で会社の成長を支える空気をつくれるのではないでしょうか。

坂本:企業文化変革は、一般に勤続年数の長い社員が取り組むものと思ってきましたが、ここにいらっしゃる4人のみなさんのうち半数以上はキャリア採用で入社なさっているのですね。
UACJ様は企業統合によって誕生した経緯もあり、いろいろなバックグラウンドをもつ社員の方が一緒に取り組んでいらっしゃいます。その混ざり合いぶりがすばらしいと思います。多様な背景をもつみなさんの活躍ぶりも、「意欲があれば応えてくれる会社」と社員が認識するのに一役買っていると感じます。



――さらなるエンゲージメント向上を目指すうえでの今後の課題は?


坂本:この数年、サーベイも導入しながらエンゲージメント向上に取り組んでいらっしゃいますが、今後の課題や目標などはありますか?

熊谷:2023年から「エンゲージメント」の上位概念として「ウェルビーイング」を打ち出しています。ただ、いろいろなキーワードを発信しても社員が混乱してしまうので、その関係性をわかりやすく整理し、納得してもらえる形で示したいと思います。UACJらしさも打ち出していきたいですね、

最首:私が中途入社した2023年時点で、エンゲージメント調査の回答率は8割と高いものでした。今後はさらに割合を上げていくと同時に、社員一人ひとりに「声を上げれば応えてくれる会社だな」と腹落ち感をもってもらい、会社の成長に向けて全員が同じ方向を見て進んでいくための取り組みを考えていきたいですね。

1_org_178_02.jpg 左から)草留大輔氏、最首英一氏

坂本:今後は若手の方の声を積極的に集めるとよいかもしれませんね、どの企業でもいわれることですが、若手社員は、言い換えれば「離職予備軍」でもあるからです。中堅社員にフィットする施策でも、若手にとっては居心地の悪いものである可能性もあります。それぞれの世代に合わせた施策が、今後ますます求められる時代になるはずです。

草留:私も最首さんと同じくキャリア採用ですが、前職まではコストカットなど「マイナスをゼロにする」活動が思い返すと多かったように思います。しかしUACJに入社して社員のエンゲージメント向上に取り組み始めてから、「会社の未来を見すえた取り組みに参画している」という感覚があり、とても楽しく活動しています。まさに自己体験としてエンゲージメントの向上を実感しています。今後も、取り組み内容を自ら考えて挑戦していきたいと思います。

坂本:2023年はUACJ様にとって10年の節目となる年でしたね。11年目以降の挑戦も楽しみにさせていただきます。




株式会社UACJ

古河スカイ株式会社と住友軽金属工業株式会社の経営統合によって2013年に発足。「素材の力を引き出す技術で、持続可能で豊かな社会の実現に貢献する。」という企業理念のもとに、アルミニウム圧延品(板製品)の生産において、国内外でトップクラスの規模を誇る総合アルミニウムメーカー。

文/横堀夏代 撮影/ヤマグチイッキ