仕事のプロ

2021.03.08

Withコロナ時代だから考えたい「ライフ・シフト」〈後編〉

変化への対応力が人生100年時代をワクワクに変える

人生100年時代を豊かに生きるための「戦略」として提唱されている「ライフ・シフト」。後編では「ライフ・シフト」への関心が高まる背景と「ライフ・シフト」を実現するための具体的なアクションについて、引き続きライフシフト・ジャパン株式会社・代表取締役CEOの大野誠一氏にお聞きした。

第1法則 5つのステージを通る

「『自分はこのままでいいのか?』、という疑問に素直に向き合うのが最初のステージです。私たちはこれを『心が騒ぐ』ステージと名づけています。

日本人には、不安に思ったり疑問に感じたりした際に、その思いに蓋をしてしまう人が多いように感じます。心のどこかで感じた違和感と正直に向き合うことが、新しい変化を起こすための最初の一歩なのです。

次が、何かやってみようとアクションを起こす『旅に出る』ステージです。思い切って動いてみると、自分が本来やりたかったことや大切にしたいものが見えてきます。これが、『自分と出会う』ステージです。生活のために、やりがいのない仕事をしていたり、やりたくないことを我慢して続けていたりしますよね。そこから踏み込んで、本当にやりたいことを見つけるステージです。

さらに、自分が本当にやりたいことの実現に向かいインプットや試行錯誤を重ねる『学びつくす』ステージ、その先には新たな自分になる『主人公になる』ステージがあります。

『心が騒ぐ』『旅に出る』『自分と出会う』『学びつくす』『主人公になる』、この5つのステージを人生の中で何度も回し、変身し続けることで、100年ライフが楽しく豊かなものになるのです」

2_bus_099_02.png




第2法則 旅の仲間と交わる

「ライフ・シフトの道中には、さまざまな旅の仲間が登場します。『使者』『ともだち』『支援者』『師』『預言者』『寄贈者』『門番』...。

転職や移住を考える夫に対して妻が反対することを『嫁ブロック』と言いますが、この場合の『嫁』はまさに『門番』にあたります。

さまざまな立場の仲間に問い・問われ、時には反対されたりしながら交わるなかで、自分はどのように生きていきたいかを考え、深めていくのです」

2_bus_099_03.png




第3法則 自分の価値軸に気づく

「誰かのために役立ちたい、関わりたいという『社会価値』。自分の志向や価値観、能力などを活かしたいという『個性価値』。生きていくうえで大切なことを起点にしたいという『生活価値』。

ライフ・シフトの過程では、この3つを軸に、これまで自分が大事にしてきた価値軸やこれから自分が大事にしたい価値軸は何かを深めていきます」

2_bus_099_04.png




第4法則 変身資産を活かす

「ライフ・シフトにおいて、次のステージへとコマを進めるために大事なのが『変身資産』です。ライフ・シフトを実践したい、ライフ・シフトに興味があるという方は、次に挙げる10の変身資産にフォーカスしていただきたいと思います」

  • ・JUST DO IT(とにかくやってみること)
  • ・LEARNABILITY(どんなことからも学んでいること)
  • ・UNLEARNABILITY(学んだことを捨てられる勇気を持っていること)
  • ・SOMETHING DIFERENT(違和感を大切にしていること)
  • ・UNIQUENESS(みんなと同じじゃなくても平気なこと)
  • ・MULTI COMMUNITY(3つ以上のコミュニティに所属していること)
  • ・SEAMLESS(有意義に公私混同していること)
  • ・SELF ASSESSMENT(自分についてよく知っていること)
  • ・TIME MANAGEMENT(自身の人生時間を自分でマネジメントしていること)
  • ・FUN TO SHIFT(人生に起きる変化を楽しんでいること)


2_bus_099_05.png




変化に対応する力やマインドを養えば
人生100年時代がワクワクに変わる

「私たちが開催するワークショップなどでは、この4つの法則を通して自分自身のこれまでのキャリアや生き方を振り返り、これから大事にしたいものについて考えを深めていきます。実際、ワークショップの参加者を見ていて感じるのがマルチ・ステージ型の人生や変身資産といった視点のインプットを増やすことで、これからの人生をポジティブに捉えてワクワクしてくる人が多いということ」

「逆に言うと、こうした視点や戦略を知らないからこそ不安になるんです。この法則を参考に、ぜひご自身でも内省の時間を持っていただきたいと思います」

「ライフシフト・ジャパンのキャッチフレーズは『さあ、人生の主人公へ』。自分の人生の主人公は自分だと言うのは当たり前のようですが、会社のため、上司のため、家族のため...というウエイトが大きくなりすぎて、自分の人生を生きていない人が意外と多いのではないかと思います。
わがままを我慢するという日本人の特性もあるかもしれませんが、もっと自分自身を大事にして本当にやりたいことに向き合うことを大切にしてほしい。そしてそれが、ライフ・シフトの第一歩になるのです」

雇用は企業の責任だという前提で、労働に関する制度や仕組みが整えられてきた日本社会。雇用が保障される反面、企業が個人を抱え込み、企業と個人との関係が対等ではなかったと大野氏は分析する。

「今後は企業と個人との関係性がもっとフラットになり、雇用システムがメンバーシップ型かジョブ型かといったことに限らず、より多様で柔軟になっていくと思います。
今はまさに、ライフシフター(ライフ・シフトを実践する人)のロールモデルをつくっていくとき。人生100年時代って楽しいよね、ワクワクするよね、という人たちの声を発信することで、人生という旅に出て、自分と出会う人が増えることに貢献したいと思います」



大野 誠一(Ohno Seiichi)

ライフシフト・ジャパン株式会社代表取締役CEO。1982年リクルート入社。『ガテン』『とらばーゆ』『アントレ』『ダ・ヴィンチ』の編集長を歴任。2001年パナソニックに転身し、2006年アクトビラを設立、代表取締役社長に就任。退任後、フリーランス時代を経て2011年ローソンHMVエンタテイメント取締役常務執行役員、2012年ハッツアンリミテッド副社長執行役員(現職)、2017年ライフシフト・ジャパンを設立。「人生100年時代」のマルチ・ステージ型ライフデザインを提供している。

ライフシフト・ジャパン株式会社
組織から個人として自立・自律した人生の主人公となり、100年ライフを楽しむ人たちをサポートすることを目的に、2017年10月に設立。ロールモデルとなるライフシフターの発掘・紹介・プロモーション、ワークショップや研修の開催、ライフデザイン支援のためのサービス・コンテンツの開発・提供、コンサルティングなどを行う。ライフシフト・ジャパンのホームページでは、ライフシフター約100名へのインタビューを掲載している。

文/笹原風花