仕事のプロ

2020.12.29

今こそ知りたい『ビジネスモデル・キャンバス』〈前編〉

9つの要素でビジネスモデルの世界観を描く

『ビジネスモデル・キャンバス』とは、新規ビジネスモデルの構築や既存事業の見直しに有効とされるフレームワークの一つ。海外では2000年代から推奨され、2012年頃からは日本国内でも広く知られるようになった。コロナ禍の今だからこそ、ビジネスモデル・キャンバスに再注目しているというコクヨ株式会社ワークスタイルコンサルタントの曽根原士郎氏が解説する。

2つの視点でビジネスモデルを捉える

ビジネスモデル・キャンバスの9つの要素を、下図のように「可能性」と「実現性」の2つに分けて考えるといいでしょう。

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図の赤い部分は、こんな顧客にこんな価値を提供してこんなことができたら、成長しそうだね、面白いね...という、表面から見たときのビジネスの「可能性」(表側可能性)です。

一方、青い部分は、面白いけど...、パートナーはいるのか? 資産はあるのか? コストはどれくらいかかるのか? という、ビジネスの「実現性」(裏側実現性)です。

「可能性」と「実現性」の両方をドライブさせる本質が、中心にある「価値提案」であり、「価値提案」が合意できて初めて具体的な議論が可能になります。

可能性は優れていたものの、実現性が不足していたために失敗に終わったサービスや商品は数多くあります。その一つが、かつて日本でもいくつかの企業から「全面が画面でボタンがない、メールやWEB、画像送信ができる携帯電話」は開発されていましたが、、回線や周辺の付加価値サービスプレーヤー・コンテンツがプアでビジネスとしては成功しませんでした。リソースとパートナーが足りなかったわけです。

スティーブン・G・ブランク氏は著書『アントレプレナーの教科書』のなかで、失敗したビジネスのほとんどは、「価値提案』以外の実現性に問題があった、と述べています。まさにその通りで、「価値提案」がいくら斬新で優れていても、実現性が不足しているビジネスモデルを成功させることは難しいのです。



ビジネスモデル・キャンバスを活用した成功事例 〜ネスプレッソ〜

ビジネスモデル・キャンバスを活用して新しいビジネスモデルを構築し、社会的に大きくブレイクした好事例が、グローバル企業のネスレです。本サイトに過去に掲載した記事(2016年4月5日開催、ビジネスモデル・キャンバスの開発者 イヴ・ピニュール氏の講演)を抜粋して紹介しましょう。

〈関連記事〉ビジネスモデル・キャンバスでイノベーションを起こす〈後編〉

記事概要

"ネスレは皆さんもご存知のように、小売店にコーヒーを卸すBtoBがメインの会社でした。ですが、近年はネスレのコーヒーが企業内や家庭でも飲まれていますね。そう、ネスプレッソのコーヒーを入れられるマシーンと挽きたてのコーヒーを密封したカプセルをつくり、家庭や企業といった、新しい販路を開拓したんです。そして、そのカプセルを売るための店舗もつくりました。今では、世界のあちこちにネスプレッソブティックがあり、20種類以上のカプセルを売っています。そうやって、小売店からだけでなく顧客からも定期的に売上げをあげることができるようになり、この、カプセルという一つの商品だけで、実に50億スイスフランもの収益を生み出しました。これこそ、新しいアイデア、新しいビジネスモデルです"(イヴ・ピニュール氏)





なぜ、今、ビジネスモデル・キャンバスなのか?

海外では2000年代から用いられてきたビジネスモデル・キャンバスですが、今の時代にこそ、必要とされるビジネスのフレームワークだと私は考えています。

昨今は企業が集中と選択を繰り返し、各社が無駄のないビジネスモデルを構築しています。逆にいうと、コア事業以外のあそびの部分がないため一社でできることが限られ、既存の領域の延長線上にない、今までの価値観を壊すような破壊的なイノベーションとても難しいといえるでしょう。

これからの時代は、一社単独のイノベーションではなく共創によるオープンイノベーションや価値創造がより重要になってきます。求められるのは"勝ち組"ではなく、世の中をより良くしていこう、持続可能性を追求しよう、社会を巻き込んで何かを変えていこうという意志ある組織・企業、そしてコロナ禍を受け様々な社会の価値観の変化を体感しながら働く私たち一人ひとりなのです。

オープンイノベーションにおいては、さまざまな領域の多様なメンバーが協働します。その際に必要になる共通言語として、私はビジネスモデル・キャンバスの価値を改めて見直しているのです。


曽根原 士郎(Sonehara Shiro)

コクヨ株式会社 ファニチャー事業本部/ワークスタイルイノベーション部/ワークスタイルコンサルタント
1989年の入社後すぐに新規事業(OA・ICT)営業・企画の部署に配属。2001年より研究開発部で、新規事業・新領域商材担当。結果、6本上市。2014年より企画部門で新たなコラボレーションクラウドサービスの開発・立上げに従事。2016年からはコンサルティング部門で「働き方改革」コンサルと同時に新規ITサービス開発に携わる。2017年より同部隊にて、さらに新たな「働き方改革」ITサービスを立ち上げ中。

文/笹原風花