仕事のプロ

2020.12.24

今こそ求められる「ナレッジマネジメント」とは?〈後編〉

積極的なナレッジの発信・共有でコロナ禍を乗り越える

コロナ禍により急速にテレワークが広がり、組織内のコミュニケーションが希薄になりがちななか、組織の「ナレッジマネジメント」は転換期を迎えている。特に影響を受けている無形のナレッジマネジメントや、業務効率化の先にあるナレッジの「共創化」を見据えたアクションについて、引き続きコクヨ株式会社ワークスタイルコンサルタントの吉澤利純氏に解説してもらった。

「急ぎでない重要でない会話」を通して、
ナレッジを発信・吸収し、拡張しよう

ナレッジマネジメントには組織ぐるみで取り組むことが大事ですが、個人がすぐにできることもあります。

テレワークがメインになり、オフィスにはたまにしか行かないという方も多いと思います。オフィスには雑談をしにいくくらいのつもりで、1時間ほど目的もなく歩き回ってみてください。そして、知っている人に会ったら、『最近どう?』と声をかけて雑談をしましょう。

案件の進捗など直近の仕事の話ではなく、そこから少し離れたこと、例えば、最近どんなことを学んだか、経験したか、考えているかなど、「急ぎでない重要でない会話」をしてみましょう。

自分から発信し相手から吸収することで、「経験拡張」が起こります。つまり、個人のナレッジが他者に拡張するのです。オンライン会議などではこういう話はあまりしないと思いますが、最後の5分は「急ぎでない重要でない会話」の時間にあてるなど、工夫して取り入れてみていただきたいと思います。

ナレッジマネジメントは日々の業務効率化に効果がありますが、ときには日々の業務からあえて離れ、視野を広く持つことも大事です。そしてこれこそが、ナレッジマネジメントの大目標である「共創化」、さらには新たなイノベーションにもつながるのです。

人から吸収したいと思うのであれば、まずは自分が発信することが大事です。個人として学んだことや得た情報は、積極的に共有することを心がけましょう。

私が勤めるコクヨには、福利厚生の一環として「学びシェア」という制度があります。社員4人以上で学びをシェアする時間を持ち、その内容を発信すると、ポイントがもらえる仕組みです。この制度により、業務とは関係のないことや趣味として学んだことを教え合ったり、テーマを設けてディスカッションをしたりと、仕事とは離れたところでの学び合いが自発的に起こるようになりました。

こうして得たものも立派なナレッジです。今すぐ仕事に直結しなくても、いつか役立つ可能性がある。そういうナレッジも、「共創化」の観点では重要になってくるのです。

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組織のナレッジマネジメントは、今、コロナ禍のもとで転換期を迎えていると言えるでしょう。テレワークで物理的に離れているからこそ、積極的な発信や共有、また吸収しようという姿勢が重要になります。

個人から組織へとナレッジを拡張し、みんなで使えるものはみんなで使い、より良いものにしていく。そういう意識が浸透すれば、業務の効率化や生産性の向上を超えた「知の共創」が可能になるはずです。


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吉澤 利純(Yoshizawa Toshizumi)



コクヨ株式会社 ファニチャー事業本部/ワークスタイルイノベーション部/ワークスタイルコンサルタント
1級ファイリング・デザイナー/オフィスセキュリティコーディネーター ストア事業、営業、新規事業企画部門を経てワークスタイルコンサルティング部門に所属。 主に、ナレッジシェアリング構築のコンサルティング、オフィス構築、運用改善コンサルティングを担当し、お客様の働き方改革をサポート。

文/笹原風花