組織の力

2017.11.22

01Boosterが提案する、これからの大企業による事業創造〈前編〉

外部のコミュニティとのつながりが極めて重要

昨今、大企業によるオープンイノベーションや社内起業プログラムが盛んに行われている。しかし、新規事業の創出に至っているケースは「少ない」という株式会社ゼロワンブースターの合田ジョージ氏。新たな事業創造をめざす大企業はどのような課題を抱え、実現するためには何が足りないのか。起業家支援や、大手企業向け新事業開発の支援事業やプログラム開発を行っている同社共同代表 取締役の合田ジョージ氏に話をお聞きした。

日本には欧米にはない継続という概念があり、
これからが正念場

 
「これまでは、日本の大企業が逸脱型イノベーションを起こせない課題ばかりを述べてきましたが、もちろん日本の大企業にも、海外の企業にはない良い所はあります。それは、“継続”という概念です。特に英米の企業には、この概念が希薄です。だから、うまくいかなかったら会社や事業をつぶして、新しいものをつくればいいと考え、行動する。その点、日本は“継続”という概念があるがゆえに、今までは“なにくそ精神”で、新規事業を起こせてきた。だから老舗企業も多いわけです。成果主義や、コスト削減中心のマネジメントなどが導入され、大きく環境が変わってきた、これからが正念場だと思います」
 
大企業は、今までのやり方で成功を収めてきたからこそ、なかなかその考え方から抜け出せないでいた。そして、変化する必要性にも気づかなかった。さらに、海外では当たり前になっている外部のコミュニティとのつながりが希薄であることも、新たな事業創造を生み出しにくい要因にもなっている。
 
後編では、そんな状況の中で大企業が逸脱型イノベーションを一歩進めるためには、社内にどんな人材が必要なのか。そして、どんなスタイルなら新規事業の創出が可能になるのかについて、詳しくお聞きする。
 
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合田 ジョージ(Goda George)

株式会社ゼロワンブースター共同代表 取締役。MBA、理工学修士。東芝の研究開発やグローバルアライアンス、村田製作所の海外拠点戦略マネージメント等に関わり、2011年にはスマートフォン広告のNobot社に参画し、海外展開を指導。KDDIグループによるバイアウト後には、M&Aの調整を行い、海外戦略部部長としてKDDIグループ子会社の海外展開計画を策定、2012年3月末にて退社。現在は同社にてコーポレートアクセラレーター・事業創造アクセラレーターを運用すると共にアジアを中心とした国際的な事業創造プラットフォームとエコシステム構築を目指している。日本国内の企業や行政や大学などで多数の講演やワークショップなどを行い、活動している。


株式会社ゼロワンブースター
運営メンバーの全員が大企業の新規事業開発と起業経験を有するということから、大企業と起業家のいずれの文化も理解したアクセラレータ―として、企業と起業家がコラボレーションできるプラットフォームの構築を行っている。シェアオフィスのほか、独自のメンターやネットワークを活用した教育プログラムによって大企業の事業創出プログラムも手がける。また、同社は世界最大級のアクセラレーター業界団体であるGlobal Accelerator Network(以下 GAN)の日本国内初の「Full GAN Member」にもなっており、グローバルで行われているアクセラレーターの情報やノウハウなどを常に共有している。

文/西谷忠和 撮影/石河正武