組織の力

2017.10.30

イノベーションを起こし続ける、研究者集団リバネス〈後編〉

世界の未来を変える知識製造業とは?

株式会社リバネスは、2002年に学生ベンチャーとしてスタートし、次々とイノベーションを起こし、新たな事業の支援や立ち上げを行ってきた。代表取締役CEOの丸幸弘氏は、「イノベーションを起こすには、『考え方』と『環境』が兼ね備わった場が欠かせない」という。『考え方』とは?『環境』とは何か? リバネスだから創り出せるイノベーションの秘密について伺った。

『知識製造業』は、
リバネスだから実現できる

「僕たちは、大学・地域に眠る経営資源や技術を組み合わせた『知識製造業』として、『知識製造技術(ナレッジ・マニュファクチャリー・テクノロジー)』を武器に、200以上のプロジェクトを動かしています。これは、一人ひとりが優れた研究者であっても、一人の知識や考えだけでは絶対に実現できないことです。研究者の知識や知恵を組み合わせないと、世の中に無い、スゴイものは生み出せないんです。研究者同士の知識の融合と、専門性に長けた外部ネットワークがあるリバネスだからからこそ『知識製造業』が実現できる。これがリバネスの最大で、最強の価値です」


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現在、農学、生命科学、流体工学、電気電子、経営学や心理学など、あらゆる分野の研究者が在籍している。自ら課題を解決できなくても、各領域のネットワークを通じて専門家にアプローチすれば、新たな知識が得られ、それらを組み合わせることで、解決するためのヒントが得られるのだ。また、研究者たちも自分たちのやりたいことが実現できるのはここしかないと認識しているので、リバネスを辞めた社員はこれまでほとんどいないという。まさに、リバネス設立当初に想い描いていた「研究者が活躍できる場」になっているのだ。

最後に、CEO丸氏に今後の活動について聞いてみた。
「これまでが第一フェーズだとしたら、今後は第二フェーズ。自動車が登場して、馬車の未来からクルマの未来へと、描く未来が変わったじゃないですか。つまり、これまで考えもしなかった未来を描ける時代に突入したんです。分野は問いません。私たちは世界を変えるだけじゃなくて、未来も変えていく。今までの延長線上にある未来ではなく、パラダイムシフトを起こすんです。すでにいくつか面白くてワクワクするアイデアの実現に向けて動いていますし、アイデアは次から次へと湧いてきます。『知識製造業』のリバネスですから(笑)。近い将来、世界の未来を変えるアイデアを製品化やサービス化できればと思っています」

リバネスは、設立以来新たな価値創出(イノベーション)を自分たちだけで行うのではなく、ベンチャー企業や大手企業を巻き込んで進めてきたオープンイノベーションの先駆け的存在である。だからこそ、ユーグレナやジーンクエストのような世の中をあっと驚かせるベンチャー企業の輩出や、出前実験教室などの他にはないプロジェクトを実現してきたのだろう。

「世界の課題を解決する」「世の中にないものを生み出す」という企業の理念を実現することに、社員一人ひとりが大きなやりがいや達成感を見出しているリバネス。研究者の可能性を最大限引き出し、イノベーションにつなげている同社の組織体制やオフィスのあり方、さらに社員への教育などが、これからの企業のスタンダードになるのも、そう遠くないかもしれない。

丸 幸弘(Maru Yukihiro)

株式会社リバネス 代表取締役CEO。東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程修了。博士(農学)。2002年に理工学大学生・大学院生のみでリバネスを設立し、日本で初めて最先端科学の出前実験教室をビジネス化した。世界から研究者の知を集めるインフラ「知識プラットフォーム」を通じて、200以上のプロジェクトを進行させる。創業からユーグレナ社の技術顧問をつとめ、30社以上のベンチャー企業の立ち上げに携わる。経済産業省とNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)から認定を受けているリアルテックファンドの共同代表も務める。著者には『世界を変えるビジネスは、たった1人の「熱」から生まれる。』(日本実業出版社)、『「勘違いする力」が世界を変える』(リバネス出版)がある。最新刊は、『ミライを変えるモノづくりベンチャーのはじめ方』(実務教育出版)。

文/西谷忠和 撮影/ヤマグチイッキ