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働き方用語辞典 「地政学」

公開日:2024.4.11

執筆:コクヨコラム編集部

#働き方用語辞典

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働き方用語辞典 「地政学」

地政学

地理的な角度から、国家・地域の関係性や政策への影響などを考える研究分野

「地政学」とは、国家・地域間の関係性や政治・社会・軍事的な影響、国家戦略を、地理的条件を基に分析・考察する学問や研究分野です。

加えて、地理的な側面や関係から発生する悪影響を「地政学リスク」と呼び、紛争や衝突により調達や物流、為替や市場経済、そして消費者の生活にまで影響を与えることもあります。

近年では、ロシア・ウクライナ間の情勢や中東問題、アジア各地の軍事情勢などが地政学リスクに上げられ、世界規模で各方面に影響を与えるメガトレンドでもあります。

パラダイムシフトや変化を引き起こす要素であることも多いため、ビジネスシーンにおいても勘案すべきテーマの一つです。

■経済や生活に与える影響の例
・為替通貨の乱高下
・物流やサプライチェーンの混乱
・原材料、エネルギー資源の輸入の滞りと価格上昇

地政学では国家や地域の特性を、陸・海、気候、領域など地理的な側面から力関係や権益について考察するのが特徴で、次のような概念で分析されます。

■地政学における特徴的な構造や概念
1. ランドパワーとシーパワー
※ランドは「国」単位の概念

―ランドパワー
・具体例:ユーラシア大陸にある大陸国家(中国、ロシア、ドイツなど)
・経済や交通:陸上における経済拠点や交通網などを重視
・特徴:他国から侵略されやすく、他国を侵略しやすい

―シーパワー
・具体例:国境の多くが海に接している海洋国家(日本、アメリカ、イギリスなど)
・経済や交通:海上における経済拠点や交通網などを重視
・特徴:他国から責められにくく、権益を守ろうとする

―ランドパワーとシーパワーの地政学的関係
・歴史的にランドパワーとシーパワーは対立しやすいとされる
例)第一次、二次世界大戦、冷戦時代のアメリカとソ連の対立構造など

2. ハートランドとリムランド
※ランドは「領域」を表す概念

―ハートランド
・具体例:ユーラシア大陸の中心部、現在のロシアのあたり
・気候や経済:寒冷で雨量が少なく環境が厳しいことから、文明が栄えなかった
・人口:少ない

―リムランド
・具体例:ユーラシア大陸の海岸線に沿った領域、ヨーロッパや中東、中央アジア、東南アジア、東アジアなど
・気候や経済温暖で農耕の生産性が高く、経済活動が盛ん
・人口:集中している

―ハートランドとリムランドの関係の地政学的
・ハートランドの国は豊かなリムランドに侵攻する
・リムランドはハートランドのランドパワーや周辺のシーパワーと対立し、国際紛争が起こりやすいエリア
例)朝鮮戦争、ベトナム戦争、イラク戦争、アフガニスタン戦争など

3. チョークポイント
・具体例:マラッカ海峡、パナマ運河
・海運が集中する海峡や水上回路で、戦略的に重要な拠点や要所である
・シーパワーの覇権掌握は、海上交通や国際貿易などに影響を与えるため、各国が制したい場所となる

4.拠点の構築
・具体例:世界各国に配置した米軍基地
・周辺国やその地域をコントロールするとともに脅威にも対抗できるため、軍基地などの拠点を設け監視する傾向がある

VUCAの時代と言われる近年は、地政学的要因による国際情勢に加え、感染症のパンデミックや大規模災害などが重なり、世界経済へ大きな影響を与えています。

海外ビジネスはもちろん、国内事業であっても事前にリスクを想定し対応策としての戦略を備えておくことが大切です。地政学の概念を理解し、その国の政治や情勢を注視し把握することで、企業の損失を抑えることができるでしょう。

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