組織の力

2026.10.13

防衛省が実践する働き方改革

さらなる生産性向上目指してオフィス環境を整備

近年、官民問わず働き会改革が進められている中で、陸上・海上・航空自衛隊の管理・運営などを担う防衛省においても、「組織風土・文化の見直し」と「働く上での制度・ルールの見直し」、「オフィス・インフラ改革」が全国規模で進められている。そこで、先陣を切って改革に着手した東京・市ヶ谷の本省においてオフィス改革を担当している大臣官房企画評価課の曲山修平様と、地方協力局沖縄協力課 の佐々木俊様、総務課の小嶋一輝様に、改革の目的や現状感じているメリットなどについてお話をうかがった 。
写真左から)曲山修平様、佐々木俊様、小嶋一輝様


組織のパフォーマンス最大化に
向けて働き方改革を開始

――今回、オフィス改革を含む働き方改革に着手なさったのは、どのようなきっかけからだったのでしょうか?


曲山:近年、本省において求められる業務の質・量が増加する中で、組織としての機能をより効果的に発揮するためには、職員の働きやすさの向上や意思決定の迅速化、部局間の連携強化などが重要となっており、働き方改革に取り組む必要性が高まっていました。

このような状況下で、改革に着手する直接のきっかけとなったのは、令和5(2023)年9月、防衛事務次官が着任の辞において働き方の問題意識や働き方改革の必要性を提案したことでした。そして、防衛事務次官の指揮のもと「自由で開かれた市ヶ谷オフィス(FOIO:Free and Open Ichigaya Office)」実現プロジェクト」の検討チームが設置され、改革に向けた検討を開始しました。

さらに、FOIOでの検討成果を着実に推進するため、令和6年(2024)9月には「市ヶ谷におけるより良い組織文化を実現するための推進チーム(OC:Organization Culture)」が設置され、それぞれの所掌事務に関係する各課等が相互に協力しながら取り組みを推進しています。本省内部部局におけるオフィス改革についても、こうした働き方改革の取り組みの一環として実施しています。

1_org_199_01.jpg 曲山修平様




――働き方改革の内容として、具体的にどんなことに取り組んでいらっしゃるのですか?


曲山:働き方改革においては、「組織風土・文化の見直し」と「働く上での制度・ルールの見直し」、「オフィス・インフラ改革」を三本柱として、関係する各課等がそれぞれの所掌に応じた取組を進めています。その中で企画評価課では、主に「オフィス改革・各種業務効率化施策」を所掌しており、職員の働きやすさや業務効率の向上に向けて、執務室のレイアウト見直しやオフィス環境整備等に取り組んでいます。




管理職席数を減らして
機能的なレイアウトに

――オフィス環境に関して、職員のみなさまはどんな課題感をお持ちだったのでしょうか?


曲山: 近年、業務量の増加に伴い職員数も増加しており、執務スペース不足や通路の狭さが課題となっていました。課と課の間には収納キャビネットが配置され、視界や見通しが十分に確保されていない状況でした。また、行政文書の電子化は進めていたものの、紙文書や収納庫も残っていたため、オフィス内の通路幅が狭く、閉塞感があるとの声もありました。このため、職員が安心して働くことのできる環境整備や災害時の避難経路確保の観点から、オフィス環境の改善が重要な課題となっていました。

また、当時は有線LANを前提とした執務環境であったため、自席を離れて柔軟に業務を行うことが難しい状況でした。Web会議についても自席で実施せざるを得ず、発言者・周囲の職員双方が音に配慮しながら利用する必要があり、職員から改善を求める声が寄せられていました。

1_org_199_02.jpg 執務エリア内にあるオープンミーティングスペース。クイックに集まってミーティングができる




――課題に対して、どのような解決策を打たれたのですか?


曲山:執務スペース自体の面積を大きく変更することは難しいため、限られた空間を有効活用できるよう執務環境の見直しを進めました。具体的には、窓際に集中的に配置されていた管理職席を見直し、多くの管理職席を一般職員と同じ執務エリアへ移設しました。また、課と課の間に設置されていたキャビネットの配置を見直し、執務室内の見通しを改善しました。

あわせて、関係各課と連携し行政文書の電子媒体化を進めるとともに、行政文書管理規則に基づく書類整理を進めたことで、収納スペースの縮減にも取り組みました。

こうした取組により生み出したスペースを活用し、少人数での打合せや意見交換に利用できるミーティングスペース、防音ブース、ソファスペースなどを整備しました。

1_org_199_03.jpg 背の高いキャビネを取り払い、見晴らしがよくなった執務室

  • 1_org_199_04.jpg
  • 1_org_199_05.jpg
元々は管理職席が並んでいた窓際のスペースには、誰でも使えるソファータイプのミーティング席を設置。オープンタイプと防音タイプがあり、用途によって使い分けられる

曲山:通路幅が確保され、キャビネット配置の見直しにより執務室内の見通しも改善されたことで、職員からは「執務環境が明るく感じられるようになった」「以前より快適に業務に取り組めるようになった」といった声が寄せられています。

また、少人数での打合せに利用できるスペースを整備したことで、「会議室を探さなくても気軽に打合せができるようになった」といった声も聞かれています。

さらに、管理職席を一般職員と同じ執務エリアに配置したことで、管理職と職員の距離が近くなり、「相談しやすくなった」「声をかけやすくなった」といった意見も寄せられています。管理職からも、おおむね理解を得ながら取組を進めることができました。




――今後の改革のご予定をお教えください。


曲山:2026年秋にはWi-Fi環境の整備を予定しており、ミーティングスペースでパソコンを活用しながら打合せを行ったり、防音ブースでWeb会議を実施したりすることが、これまで以上に容易になります。また、必要に応じてカウンター席などに場所を移して業務を行うなど、より柔軟な働き方が可能となり、職員の働きやすさの向上にもつながるものと考えています。

今後も順次オフィス改革を進めていく予定です。各拠点において、それぞれの業務実態に応じたより良い執務環境を整備できるよう、今回の取組の成果や課題を検証しながら、各拠点の改革を支援していきたいと考えています。

1_org_199_06.jpg オープンミーティングスペースの家具はキャスター付きで配置やテーブルサイズを柔軟に変更できる。




職員の柔軟な働き方を
後押しするオフィスに進化中

――地方協力局沖縄協力課様のオフィス改革において、執務スペースで大きく変更なさったのはどの部分ですか?


佐々木:職員からの「気軽に打合せができるスペースが欲しい」という要望を受け、使用頻度も考えながらミーティングスペースを拡充するなど、執務室全体のレイアウトを見直しました。

1_org_199_07.jpg 佐々木俊様

佐々木:また、防音ブースを新たに設置したことも大きな変更点の一つです。防音ブースは個別に重要な打ち合わせするなど使い勝手がよく、人気の設備となりました。

さらに、管理職席の配置を見直すとともに、課と課の間に間仕切りのために設置していた書棚についても、安全面にも配慮しつつ、執務室内の見通しを改善する観点からも排除した結果、開放感のある執務環境の整備につながりました。




――改革によって、職員の方々の働き方はどのように変化しましたか?


小嶋:ロッカーを整理したことで執務室内の見通しがよくなり、誰がどこで業務をしているか把握しやすくなりました。その結果、「課長が在席しているので相談してみよう」といったように、以前より気軽に相談や打合せを行う場面が増えたように感じています。

1_org_199_08.jpg 窓際の管理職席を最小限に減らし、誰もが使えるオープンミーティング席を配置(写真左奥)

小嶋:また、ミーティングスペースが充実したことで、ちょっとした打合せであれば会議室を予約することなく実施できるようになり、業務の効率化につながっていると感じています。一方で、機密性の高い内容を扱う際には防音ブースを利用することができるため、打合せの内容に応じて適切な場所を選べる点も大きな利点だと感じています。

1_org_199_09.jpg 小嶋一輝様

佐々木:これまでの働き方から大きな変化があったため、当初は戸惑う職員もいるのではないかと思っていましたが、多くの職員は新しい環境にも比較的スムーズに適応し、円滑に業務を行っています。

一方で、現時点ではミーティングスペースの活用が主に打合せに限られており、さらなる活用の余地があると感じています。まもなくオフィス全体でWi-Fi環境の整備が予定されていることから、今後は固定席だけでなくミーティングスペースなども活用しながら業務を行う働き方について、職員への周知を進めていく予定です。




――今後、オフィス改革に取り組まれる職員のみなさまに向けて、実施のご経験を踏まえてアドバイスをお願いします。


小嶋:既存の什器や家具の寸法を事前に確認し、「どのスペースにどの備品を配置するか」をあらかじめ整理しておくなど、十分な準備を行うことで、移転やレイアウト変更時の混乱を抑えることにつながると思います。

一方で、実際に工事や移設作業を進める中では、配線の位置が想定と異なるなど、事前には把握しきれない事象が発生することもあります。そのため、関係部署間で速やかに相談しながら柔軟に対応していくことが重要であると、今回の取組を通じて改めて実感しました。

佐々木:改革に直接携わる職員だけでなく、できるだけ多くの職員が他組織のオフィス環境や取組に触れる機会を設けることが重要だと思います。「より良い執務環境を職員全員でつくり上げていく」という共通認識を持つことで、改革を円滑に進めることにつながるのではないかと思います。




文/横堀夏代 撮影/石河正武