レポート

2020.09.09

豊かに働くためのオフィス環境のポイントとは?

『TOKYOテレワーク・モデルオフィス』オープニングセミナーレポート

2020年7月、東京・府中市の『TOKYOテレワーク・モデルオフィス』で、「『豊かに働く』環境整備のポイントとは~テレワークとサテライトオフィス等の活用を上手に組み込むこれからの働き方~」と題したセミナーが開催された。新型コロナウィルス感染症対策としても新たな働き方が模索される今、働く場所にも注目が集まっている。オフィス環境整備に詳しい3人のスピーカーが登壇したセミナーの模様をレポートする。

企業が外部との接点を
持つために設置する事例も

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第1部の最後には、一般社団法人コワーキングスペース協会の代表理事を務める星野邦敏氏がスピーチを行った。

自らもコワーキングスペースを運営する星野氏は、「コワーキングスペースの上手な活用方法について」と題して、コワーキングスペースがもつ多様な役割や活用法の拡がりについて紹介する。

星野:「不特定のワーカーが集まって働くコワーキングスペースは、2010年代の初めから大都市を中心につくられ始めました。現在全国に約1200カ所のコワーキングスペースがあり、うち7割は都市部に集中しています」

「近年では、企業が自社オフィスなどにコワーキングスペースを設ける事例も目立ちます。オープンイノベーションや人材採用のきっかけをつくるために、企業外との接点を持てる場としてコワーキングスペースを設置することが多いようです」



コワーキングスペースの
経済効果に政府も期待を寄せている

星野:「コワーキングスペースは、地域活性化や人口減少抑止策として、地方都市にもつくられています。コワーキングスペースをつくって、移住してきた人が働く環境を整えるわけです。居住人口が増えれば、地方の財政も改善します。また、その場所に集まる人同士が交流することによって、地域に新たなビジネスが生まれる場合もあります」

「政府は、地方にコワーキングスペースを設置することで生じる経済効果に期待を寄せています。私たちの協会も、経済産業省や厚生労働省、国土交通省の方からよくお問い合わせをいただき、情報交換を行っています」

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目的にフィットするスペース選びを

星野:「コロナ禍をきっかけに、テレワークが急速に普及しました。その一環として、コワーキングスペースを働く場所の選択肢として用意する企業が、今後は増えていくと思われます」

「私たちの協会でも、コワーキングスペースの利用を検討中の企業様から、使用料の支払い方や出退勤の管理方法、3密対策などについてご相談いただく機会が増えています。これらの観点は、利用を導入するにあたって、具体的に決めておきたいところです」

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「加えて大切なのが『何を求めて利用するか』です。各スペースには、『快適にソロワークできる環境』『ワーカー同士の交流がしやすい』などそれぞれ特徴があります。自分たちの働き方を見極め、目的に合うコワーキングスペースを活用していきましょう」



豊かに働くための環境形成について
それぞれの立場から発言

第2部では、「これからの『豊かに働く』環境形成のポイントとは」というテーマで、トークセッションを展開。ファシリテーターを務める東京テレワーク推進センター事業責任者の湯田健一郎氏のキースピーチとともに、登壇者3人への質問によって、活発な意見交換が行われた。

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――ワーカー個人がワークプレイスを選ぶにあたって必要な観点とは?

鈴木:「現在は、センターオフィスはもちろん、自宅やコワーキングスペースなど、働く場所の選択肢が拡がっています。仕事内容やその日の体調・気分などを考え、『今日の自分が一番気分よく、効率的に仕事ができるのはどこかな? 』と検討することが大切です」

星野:「副業を解禁する企業が増え、今後は個人が複数の仕事をすることが増えていきます。『多様な人と接したいならこの場所』『快適な環境で集中したいならここ』といった感じで、複数の拠点をもつのもお勧めです」


――サテライトオフィスやコワーキングスペースを上手に利用するポイントは?

石崎:「企業は近年、民間のサテライトオフィスと契約するなど、社員のために働く場所の選択肢を少しずつ増やしています。しかし肝心の社員が『働く場としてどんな選択肢があるか』を知らない可能性もあるので、定期的に社内周知していくことも必要です」

星野:「社外のワークスペースを自分で選ぶことが可能なら、それぞれの場所のwebサイトを閲覧してみるとヒントが得られるかもしれません。新着情報や開催されているイベント内容には、場所の特徴が凝縮されているので、チェックしてみてください」


――特定の時間しかオフィスを使わない場合、オフィス面積はどのように決めればよい?

鈴木:「『ピークカット』という考え方を取り入れてはいかがでしょうか。例えば社員全員が同じ時間にオフィスを使うのではなく、時間帯を分散させれば、人数分の床面積は必ずしも必要ありません。『定例ミーテイングは月曜の朝イチ』、といった固定観念を捨てて柔軟に考えることは、効率的な働き方につながります」


――豊かに働くにあたって、就業環境をよりよく変えていくポイントは?


石崎:「イノベーションを興す企業は必ず、働き手の声をこまめに拾ってPDCAを回しています。どんな働き方と働く場の整備が生産性向上につながるか、そのためにデータを集めながらワーカーのニーズを吸い上げていくことを重視しています。またワーカーの方も、自分たちのパフォーマンスをあげるために、どこでどう働くか、仕事内容に応じた最適な働き方を1人ひとりが自律的に考えていただきたいと思います」



新型コロナウィルス感染症拡大をきっかけに、多くの企業や働き手が「どの場所で働くのがベストか」を模索し始めている。自分やチーム、組織にとっての「豊かに働く」を常に考え、メインオフィスやコワーキングスペース、サテライトオフィス、自宅などを意識的に使い分けていく取り組みは、今後ますます重要になるだろう。




TOKYOテレワーク・モデルオフィス

TOKYOテレワーク・モデルオフィスは、自宅以外の場所でもテレワークを行える環境の整備を進めるため、都がモデル的に設置するサテライトオフィスです。都内在住または在勤で、企業等で働く方(個人事業主を含む)に無料でご利用していただけます。https://tokyo-telework.jp/modeloffice/

文/横堀夏代