組織の力

2018.06.04

フラワービズが提案する植物の「ビジネス力」〈前編〉

花や緑がもたらす快適な空間は科学的に証明されている

オフィスに花や観葉植物があると、「なんだか気分が安定する」「疲れが少し緩和される」と感じたことはないだろうか。一般社団法人JFTD(花キューピット)の坂内伊良氏は、「植物は、働き手のストレス緩和やオフィスの環境改善、ひいては仕事の生産性向上を助けるパワーを秘めています」と解説する。花や緑をオフィスに飾ることで得られる効果について紹介しよう。

社内のコミュニケーション活性化や
整理整頓促進などのメリットも

これまで挙げたような「植物をオフィスに置くことのメリット」に賛同し、IT企業やPR会社などフラワービズを取り入れる企業は増えつつある。エントランスやフリースペース、会議室などに花やグリーンを置くだけでなく、デスクに置ける小さな観葉植物や一輪挿しをたくさん用意して社員が自由に選べるようにしたり、優秀社員の表彰で副賞と共に花束を贈呈したりと、企業によって取り入れ方はさまざまだ。

植物をオフィスに置いたことでワーカーの心身にどのような変化があったかは、今後の検証を待たなければならない部分もある。しかしいずれの企業でも聞かれるのが、「コミュニケーションが活性化した」という声だ。花や観葉植物があると、「葉っぱが伸びてきたね」「つぼみが開いた」などの会話が増え、それまで話す機会がなかった従業員同士が接点をもつきっかけにもなることが多いという。また、花束贈呈を始めた企業では、受け取った社員から「支えてくれた仲間と花を分け合えてよかった」という声が出たそうだ。

そして、企業によっては坂内氏も想定していなかった意外な効果もみられたという。
「ある企業の社員様からは、『一輪挿しをデスクに置くようになってから、自然と片づけの習慣がついた』というお声をいただきました。同じように花や観葉植物を置くにしても、確かに整然とした空間の方が見映えはします。植物の存在がきっかけとなって、ワーカーの方が整理整頓への意識を高めて下さったとしたら、とてもうれしいですね」



植物のメンテナンスによって
交流を深める企業も

とはいえ、花やグリーンをオフィスに取り入れる企業はまだまだ少ない。坂内氏が企業にフラワービズの提案を行うとき、ハードルになるのは費用だという。
「例えば観葉植物なら1鉢3000~5000円のものが多く、従業員満足度の向上のためにその費用をかけるかどうかは企業様の経営判断です。特にメンテナンス業者を入れていない企業様では、『世話ができなくて駄目にしてしまうのでは』と心配なさる声もあります」

ただしメンテナンスに関しては、業者任せにせず従業員に任せることのメリットも期待できる。従業員が集まって世話をすることで、コミュニケーションを深めている事例もみられるからだ。例えば坂内氏のオフィスでは、当初は一人が観葉植物の状態を定期的にチェックし、周囲に「ここの水やりは私がやるから、会議室の鉢をお願い」などと声をかけていた。そのやりとりが続くうちに、ほかのメンバーたちも自然と植物の状態を気にかけるようになり、水やりなどのルールをメンバー間で共有して世話をするようになったそうだ。

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「あるワークスタイルコンサルタントの方に聞いた話ですが、某企業で働き方の改善に向けてヒアリングをしたところ、職場環境に必要なものとして花や観葉植物を挙げる女性が何人かいたそうです。うち1人は、ペットを飼うのと同じ感覚で『花を飼いたい』という表現をなさったそうです。オフィスで植物を育てたいという潜在ニーズはあるので、そこにフィットさせる形でフラワービズを拡げていければと考えています」

心身に負担をかけないオフィスや、ワーカー同士のコミュニケーション促進は、組織にとって一大テーマである。植物の力を借りて快適な職場が実現できるなら、オフィスに花や緑を取り入れるのも一案かもしれない。

後編では「オフィスに飾る、置く」からさらに踏み込んで、「生け花」という形で植物と関わることで得られる「ビジネス力」を紹介する。

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全国花き振興協議会

花と緑の産業6団体によって組織される業界団体。生産流通改善や消費増進、花き産業の振興に向けて活動する。農林水産省が推進する「くらしに花を取り入れる新需要創出事業」の一環として、「フラワービズ」を展開中。

文/横堀夏代 撮影/荒川潤