組織の力

2017.04.05

NTTコミュニケーションズのベテラン社員活性化施策〈後編〉

「ワクワクする目標」があれば行動が変わる!

NTTコミュニケーションズ株式会社では、中高年の活性化を意識した取り組みの一環で、50歳の非管理者の社員を対象とした面談を行い、ベテラン社員のモチベーション向上に成功した。担当者であるヒューマンリソース部 人事・人材開発部門の浅井公一課長に、面談にあたっての心がけや、ベテラン社員がどう変化したかなどをお聞きした。

面談後、8割の社員に
継続する行動変化がみられた

面談の効果を最大限にするには、事後のフォローも大切だと浅井氏は考えた。その第一弾として行ったのが、面談を終えた社員へのコンタクトだ。
「ワクワクする目標を決めても、すぐ行動を起こさないと、日々の仕事や生活に紛れて忘れがちです。そこで、例えば資格取得を宣言した社員には、面談から数日後に電話をかけ、『資格試験の勉強、始めた?』と確認しました」

さらに数か月後には、対象者の上司に抜き打ちでアンケートを行い、面談の成果を検証した。浅井氏が知りたかったのは、「その人の行動が変わったかどうか」だった。面談3~4か月後の調査で周囲から「変わった」という声が聞ければ、対象者は面談直後のやる気を維持できていることになる。アンケートの結果、約8割のベテラン社員に行動変化がみられたという。

変化の内容は、「若手向けに勉強会を開催してくれるようになった」、「朝早く出社して英語を勉強するようになった」、「チームメンバーをホームパーティーに招待し、メンバー間のコミュニケーション向上に貢献してくれている」など多岐にわたった。その頃から、面談を終えた社員から「めざす資格を取れた」、「評価がアップした」といった感謝の声が寄せられるようになった。浅井氏は、2016年度以降も50歳を対象とした面談を担当している。今後は徐々に対象年代を下に拡げ、ベテラン社員を「50歳になる時には、すでに生き生きと活躍している状態」にまで引き上げていきたいと語る。

リクナビNEXT主催の「グッド・アクション」で審査員を務める学習院大学の守島基博教授は、NTTコミュニケーションズの取り組みについて以下のように評価する。
「これまでにも他社で、50代社員に向けてキャリアカウンセリングを実施するなどの取り組みはみられました。しかしこの取り組みは、浅井さんがたった一人で熱意を持ってあたり、同じ50歳代でも抱える事情や期待が一人ひとり違うことに注目したところが画期的。『個々のニーズを大切にしていきたい』というメッセージが伝わってきます」と評価する。

NTTコミュニケーションズの今回の取り組みは、浅井氏の情熱とスキルがあってこそ実現したものだ。また浅井氏によれば、「ベテラン社員の活性化は、企業の成り立ちや文化、習慣によって方法がまったく異なってくるはず」と語る。ただしどのようなプロセスで進めるにしても外せないのが、"個への対応"だという。

「人事目線だと『50歳』『非管理者』といった枠から社員に接しがちですが、そうではなく一人ひとりの事情に寄り添った対応をしていくことが重要ではないでしょうか」

またベテラン世代の読者は、もし今後の方向性に迷ったら、そのときが新たな目標設定のチャンスかもしれない。社内の研修や上司との面談を活用するなり、社会人としての軌跡を振り返るなりして、10年後、あるいは15年後に向けて「ワクワクする目標」を探ってはどうだろう。
文/横堀夏代 撮影/ヤマグチイッキ