仕事のプロ

2016.09.06

準備に時間をかけることが効率的な働き方に

Vol.20 今の自分の限界を認識すれば焦らない

三井住友海上火災保険株式会社
総合営業第三部 情報通信事業室
川上 恵子さん
入社以来、保険の個人向けリテール営業を経て、企業営業畑の第一線で活躍。現在は9時半から3時半の時短勤務で、企業の社員を対象とした自動車保険の販売拡大活動について保険代理店と連携する一方で、保険契約の申込書の計上や、契約更新や事務管理項目に関する進捗管理も行っている。4歳の男児と2歳の女児のワーキングマザーで、2度の産育休を経験。

最初の復帰で気づいた
復帰の大変さ
――川上さんは、今回2回目の育休復帰となりますが、1人目のときの経験を生かして、スムーズに復帰できたんじゃないでしょうか。
復帰に対しての不安は確かに減っていたと思いますが、それでも保活は大変でした。その頃は現在会社が行っている保活サポート「保活4ステップTo Doリスト」がまだなかったので、まず自治体に行って復帰の8か月前ぐらいから園の見学を始めました。家族構成も変わって、上の子の育児もしなくてはならないし、そのうえ自治体の制度変更もあったので、自分の家の点数を自治体の人と確認したりなど、1人目のときより大変でした。それでも、育休を延長して会社に迷惑をかけたくないと思っていたので、復帰予定月には復帰しようという思いがありました。
――やはり、年が変われば、"保活"の状況も変わってしまうのですね。しかし、復帰への不安は減っていたんですね。1人目のときはどうでしたか?
そうですね、復帰がどういうものか経験がありましたから、だいたいのことは想定できました。しかし、1人目のときは育児で仕事を忘れちゃうのでは? ということから、朝起きて電車に乗って毎日仕事ができるのか?それこそヒールを履けるのか? ―そんな些細なことも不安でした。
実際、復帰後も、仕事の質とペースがぜんぜん違う、前のようにいかないなと感じました。1年間の育休で仕事の段取りも忘れてしまっていて、復帰して以前の自分のように仕事ができない、時間も足りないのでどうしようと思いましたね。それに加えて、心理的な焦りもありました。
――心理的な焦り、とは?
産育休前は部署内においてリーダー的な立場で、がむしゃらに仕事を進めていました。復帰をスムーズにしたいという思いがあり、職場との連絡を密にとりたいと頼りになる後輩に自分の立場をお願いして休みに入りました。復帰したら、もちろん後輩と立場が逆転。後輩はどんどん成長して活躍しているし、私は以前と同じようには働けないし...。
そのあたりの心の持ちようみたいものが、自分は乗り越えるのが一番大変でした。でも、現実的に今の自分は時間も限られていて、対応できない部分もあるじゃないかと割り切って、自分の限界を受け入れることで気持ちも変わりました。また、別の業界のワーキングマザーと励ましあったことも、大きな助けになりましたね。
自分が頑張ることで
周囲に認めてもらう
――現在は2度目の時短勤務となりますが、限られた時間の中でパフォーマンスをあげるために、どんな工夫をしていますか?
何でも時間を意識するようになり、仕事の密度は以前よりも上がったと思います。
それに、1回目の時短勤務のときよりも事前の準備を入念にやるようになりました。例えば、難しい契約が近々ある場合、様々な過程で問題が起こったときに対処するのではなく、事前に各過程で起きそうなことを想定して対応を考えておくということです。つまりリスクヘッジとして事前に調べておくと、何かが起こらない場合でもその回避策はいつか役に立つし、物事は効率的にスムーズに進みます。それに自分の勉強にもなります。
――事前準備の手間を惜しまないことが、結局、効率的な時間の使い方に結びつくんですね。川上さんの課には時短勤務ではたらく人がほかにいないと聞きましたが、周りの方たちとのコミュニケーションは円滑ですか?
ある先輩から「川上さんも限られた時間の中で、ここまで頑張っているからこっちもココまで支えよう、という気持ちがあるよ」って言われたことがあります。その言葉はとてもうれしかったですね。やはりお願いするだけでなく、自分もできる範囲内で積極的に何かを引き受け、ギブアンドテイクの関係性をしっかりつくっておくことで、お願いをしやすくなる。そんな空気づくりが大事だと思います。自分は時短だからコレはできない...そういう枠はつくらずに一生懸命にやり、常に感謝の念をもって仕事をすることだと思います。
子育てをサポートしてくれた
会社に恩返しがしたい
――川上さんも、来年には時短勤務期間が終了し、フルタイム勤務になるそうですが、不安はありますか?
残業をしないで時間内で仕事を終えて帰る、そのやりくりができるかですね。そのためには周りへの理解を求めていくことが大事だと思います。フルは9時から17時、今より勤務時間が伸びても、時間が限られているのは同じです。フレックス制度もあるので、時間をずらして働いて乗り切りたいです。そう言っても、小学校に入ると、学童保育の問題や、夏休み期間をどう対処するかなど新たな課題がいろいろ出てくるので、心配は尽きないですね。
――そういった心配を抱えながらも、「ずっと働こう」と思える理由はなんでしょうか?
こどものため...というと少し違うかもしれませんが、こどもに働いているお母さんの姿を見せたい。働きながら子育てしている大変さをこどもに見せて、そこから何か学んでほしいと思っているから、ですかね。それと、2回も産育休を取らせてもらって、時短で働かしてもらっていることに感謝しているので、一生懸命働くことで会社や職場に恩返しをしたいという気持ちもあります。
――企業が社員に対して子育てのサポートすることが結果企業に返ってくるということが、川上さんのお話を聞いているとわかります。最後に、川上さんは共働きとお聞きしましたが、ご主人のサポートは十分にありますか?
1人目のときは、「私だって仕事をやりたいのに、時短をとってキャリアを中断している。あなたはフルで働いて仕事が楽しいそうでずるい!」なんてよくケンカになりましたね(笑)。
こどもが2人になるともう物理的に大変なので、「早く帰ってきて!」と毎日思っています(苦笑)。男性の育児参加もかなり進んできていますが、やはり男性も時間を効率化して、社会全体で残業をなくしていくということが大切だと思います。
今は、こどもたちとの外出が楽しみ。最近は、車で気軽に行ける関東の山に行って、2~3時間ほど登山をしたり、キャンプをしたりして、日ごろの疲れを癒しリフレッシュしています。

川上さんの ある1日


6:00 起床 身じたく 朝食づくり
6:30 こどもを起こし、朝食
7:45 家を出て、保育園にこどもを送る
9:15 出社
保険代理店からの電話照会・メール照会の対応
保険代理店への提案資料を作成
保険代理店へ定例ミーティングのため訪問
15:30 退社
16:40 保育園にお迎え
17:30 帰宅、夕食準備
18:30 夕食
20:30 こどもとお風呂
21:30 こどもが就寝、夫が帰宅
23:30 就寝

文/イデア・ビレッジ 撮影/白木裕二