組織の力

2016.05.31

18年間の赤字を半年で黒字化。チャレンジし続ける組織に〈後編〉

再建により得られた最高の実用実験場を持つハウステンボスの魅力

ハウステンボスの再建を成功させた澤田秀雄社長の次のチャレンジは、ロボットがフロント、クローク、ポーターなどの業務をこなし、究極の生産性とエンターテインメント性を兼ね備えたロボットホテルだった。「変なホテル」というこのホテルの名前は、「変わり続けることを約束するホテル」に由来する。常に最新の技術やアイデアを取り入れるハウステンボスは観光ビジネス都市であり、未来の構想の実用実験を行える最高の実験場でもある。それこそが、澤田社長が命運をかけて再建に取り組んだハウステンボスの真の価値なのではないだろうか。

ロボットの進化は
働くことの概念を変える

「変なホテル」の取り組みは、期せずして労働力が足りなくなる時代のロボットとの協働という未来の職場環境を実現している。そんな時代には、人間とロボットの住み分けはどうなっていくのだろうか?
 
「いまのロボットの能力では心のサービスはできないですから、例えば五つ星ホテルのサービスはヒューマンサービスでいいと私は思います。逆に三つ星、四つ星は泊まり心地がよくてコストが安いに越したことはないと思うので、ロボットを使って生産性を高くしていくことになるでしょう」と澤田社長。
組織のマネジメントとしては、単純作業が得意というロボットの性格・特徴を含め、適材適所ということは変わらない。
「チームの場合はタイプの異なる人を集めた方がいいですね。チンパンジータイプやゴリラタイプ、オランウータン、ボノボタイプと4種類の人がいると昔からいわれていて、(類人猿分類法)、この4種類が揃うとチームワークはいいんですね。同じタイプの人間を集めると反発してしまう。チームワークというのは違うタイプの人が集まることで生まれ、いい仕事につながります」と澤田社長はいう。
ただし、ロボットの進化が進めば、あと10年か15年で人知を越えると考えられる。ロボットによって食料やエネルギーを潤沢に提供できるようになれば、人間は食べるために働かなくてもよくなる。そういう社会が実現すると、働くことの概念そのものが、今では想像もつかないものに変わってしまうのかもしれないという。
 
若いころから世界を見てきた澤田社長の思考は驚くほど幅広い。多忙な日々を送っている現在も、あらゆるジャンルの本を読んでいるという。そういった好奇心・探求心が澤田社長の源泉なのではないだろうか。
 
最後に、数多くある愛読書の中から、おすすめの本を伺った。
「もちろん歴史書とか思想書とか、いろんなものがいいと思いますね。人間形成されます。歴史書を読んでいると、一つの世にいろんな人物が出てきて十分勉強になりますね。その次はものの考え方といいますか、思想の本がいいんじゃないですか。もちろん、私の本もオススメですよ(笑)」

 

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澤田 秀雄(Sawada Hideo)

ハウステンボス株式会社代表取締役社長。株式会社エイチ・アイ・エス代表取締役会長。澤田ホールディングス株式会社代表取締役社長。旧西独・マインツ大学経済学部に留学後、1980年㈱インターナショナルツアーズ(現 ㈱エイチ・アイ・エス)を設立。その後ホテル業への進出と同時に1998年航空会社スカイマークエアラインズ(現 スカイマーク㈱)を就航し、国内航空料金低価格化のきっかけをつくった。1999年には協立証券㈱の株式を取得し金融業界にも進出。新しいことにチャレンジし続ける日本を代表する実業家。著書としてハウステンボスの再建を題材とした『運をつかむ技術』(小学館)、『H.I.S.澤田秀雄の「稼ぐ観光」経営学』(イースト新書)などがある。

文/兵土 剛 撮影/JUGAR(松鵜 剛志)