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2022.07.20

【横須賀市上下水道局】自走・自律型で取り組むオフィス改革(2)

メンバー全員で考え続けた“ありたい姿”と改善アプローチ

Overview

概要

人口減少と高齢化率の上昇により、2040年に向けて生産労働人口減少が予測される横須賀市。上下水道事業を提供する上下水道局においても将来的に職員減少が見込まれており、サービスの維持やリスク管理に強い危機感を抱いています。そこで2021年に働き方改革の一環として、「自走・自律型」のオフィス改革プロジェクトが上下水道局内で立ち上がりました。

第2回の今回は、上下水道局経営部経営料金課経営係でオフィス改革推進を担った滋野氏、島田氏へのインタビューをご紹介します。

横須賀市上下水道局 経営部 総務広報係長 島田 香氏(前:経営部 経営料金課 経営係)
横須賀市上下水道局 経営部 経営料金課主任 滋野 順子氏

Interview

インタビュー

——— 上下水道局でオフィス改革に取り組んだ経緯を教えて下さい。

島田氏
導入の発端は、自治体戦略2040構想の公表だと思うのですが、新型コロナウイルスの感染拡大は大きなきっかけとなりました。上下水道局という職場柄、業務を止めることは絶対にできない。それが、緊急事態宣言によって登庁が制限される状況になってしまい、紙に依存した働き方では、業務継続に支障が出てしまいました。当時は庁外から庁内ネットワークにアクセスできない状態でしたので、交代で登庁するなど何とかやりくりをしていましたが、やはり限界がありました。そうした状況でしたので、オフィス改革によってペーパーレス化が進めば、非常事態などのリスク対応につながるのではないかと思ったのです。また、ウェブ会議への対応も求められていました。

——— ではオフィス改革と同時に、各種ICTツールを導入されたのですね。

島田氏
はい、まずはペーパーレス会議を行うためのモニターと、庁外から庁内のネットワークにアクセスできるモバイル端末を何台か。ウェブ会議ができる端末も最初は1台だけでしたが、ぜんぜん足りなくて、すぐに増やしました。

島田氏

——— オフィス改革を進めるにあたり、どのようなプロセスで取り組んだのでしょうか?

滋野氏
上下水道局全体で働き方改革に取り組んでいたのですが、その一環でオフィス改革プロジェクトが発足しました。私はその中でも、職員6名が所属する経営料金課経営係のチームリーダーをやらせていただきました。

経営係のオフィス改革プロセスですが、最初にブレストを行い、どういうオフィスがいいかということを6名全員で確認しました。経営係では毎週月曜に係内の定例ミーティングがあり、その前後にオフィス改革について話し合う時間をほぼ毎回1時間程度設けました。できるだけ全員に発言してもらえるように事前に資料を渡したり、発言を促したり、ミーティング後の発言メモを早めに共有することで、全員が「オフィス改革について常に考え続けている」ような環境を作りました。

——— 「オフィス改革について常に考え続けている」という環境をつくることで、アイデア出しから試行、改善という一連のサイクルをすばやく何度も回すことができたのですね。検討を始めた当初から、「こんなオフィスにしたい」という意見は出ていましたか?

滋野氏
そうですね。メンバーそれぞれがネットやテレビから情報収集をしていたので、「こんなことをやってみたい」というアイデアや、逆に「私たちはこの部分が遅れているね」などの課題意識も当初から共有できていました。それを見える化し、定例で集約し、出来ることから実行していった形です。都度、メンバー全員で方向性を確認しながら進めていきました。

私たち自身、コミュニケーション不足を感じていました。また限られた執務室に膨大な紙書類が積まれていたため、働きづらさも感じていました。“ありたい姿”ってこうだよねと、話し合いながら目指すオフィスを決めていきました。

滋野氏

——— オフィス改革を進めるにあたり、どのようなプロセスで取り組んだのでしょうか?

島田氏
ブレストによる課題抽出に加え、職員意識調査で顕在化した課題を踏まえてコクヨと一緒にレイアウト案を作成しました。提案への理解を深めるために、コクヨのTHE CAMPUSと霞が関ライブオフィスを見学しました。両方見させて頂いたのですが、それぞれ少しづつ違いがあって。働き方に合わせてオフィスをつくっているんだなという感じが、非常に参考になりましたね。

滋野氏
当初、デスクが変わることにすごく不安がありました。1人1台のデスクではなく、全員で大きなデスクを共有する感覚が分からなかったので。ですからオフィス見学の際にデスクの大きさや重さ、動かしやすさなどを実際に触って確認できたのが良かったです。

——— 新しい働き方についてイメージを具体化する一方、それまでの働き方をどのように変えていきましたか?

滋野氏
まず、既存のデスクのままクリアデスクを行いました。その時に、「何か気持ちいいよね」という空気になりました。文房具も全部共有して、デスク収納を空にすることでフリーアドレスをやってみると、「なんとかできそうだね」と。そこから、新しいデスクサイズやレイアウトを決めていった形です。

——— 元々は書類量も多かったとおっしゃっていましたが、書類削減はどのように行いましたか?

島田氏
全員で書類削減を行う日を決めて、1日で行いました。2~3時間程度でしょうか。時間をかけるとうまく行かないなと思ったので、全員で一気に。

滋野氏
削減した書類は、個人で収集していたものや過去の引き継ぎ書類です。電子データがあるものは処分をしようということで、文書だけでも段ボール約12箱分(約4.6fm)を削減できました。

削減中の様子

とは言え、ステップを2段階に分けました。まずはクリアデスクで、個人の書類やものは、デスクの引き出しに入るだけの量に削減する。それが出来たら、次は引き出しのものを、個人ロッカー代わりの既存キャビネットの一段分に、全部整理・移動しましょうという形です。そうすることで、クリアデスクとフリーアドレスはそこまで難しいと感じませんでした。

——— 先程「何か気持ちいいよね」とおっしゃっていましたが、削減前のデスクと削減後のデスクを比較すると、すごく劇的な変化ですね。

滋野氏
書類や文房具を削減するステップは、今思えば「使っていないものがいっぱいある」ということを確認するための作業だったように感じます。書類も文房具も、全く使っていないものが沢山ある。そこを切り離すことで身軽になったような気持ちになりました。

既存デスクで書類削減前の状態

既存デスクで書類削減後のデスクの状態

——— 既存の什器で、クリアデスクとフリーアドレスまで実践されたとのことですが、デスクを入れ替えた後はコミュニケーションにどのような変化がありましたか?

島田氏
従来の片袖デスクでは座る場所が固定されてしまうのですが、大型テーブルなら横移動がしやすく、どこにでも座れるのがメリットだなと感じました。その日にテーブルに座る人数に合わせて場所を変えますし、お誕生日席を選ぶこともあります。座る人数が固定されないので、ちょっとした打合せもしやすくなりました。

オフィス改革後の執務席

滋野氏
後輩の業務内容や進捗なども把握しやすくなりました。固定席の時も定例などで必要なコミュニケーションは行っていましたが、フリーアドレスだと周囲の職員の状況を自然と把握できるので、非常に便利だなと。

島田氏
「なんとなく見える、なんとなく聞こえる」をきっかけに、ちょっとした働き方の工夫を教えてもらうこともフリーアドレスになってから経験しました。

——— では、新しく導入した立ち会議スペースはいかがでしょうか。

島田氏
導入前は、周囲の職員には「そんなものを使うの?絶対座ってしか使わなくなるよ。」と疑問視されていたのですが、現在はモニターを使った立ち会議が日常的に行われています。今回オープンスペースに設置したことで、多くの職員の目に触れました。そうすることで、利用したことがない職員にも自然と浸透していったように思います。また、隣の課との共用にしたことで、より多くの職員が使いやすくなったのも成功要因だと思っています。

近接する課と共用の立ち会議スペース 「通称:ぷらっとスペース」

——— なるほど。「オープン」「共用」が利活用促進のキーワードだったのですね。モニターを使った立ち会議によって、会議の生産性はどのように変化しましたか?

島田氏
モニターの活用と、「会議の心得」という運用ルールを設けることで会議全体の効率化が図れました。これまでは、どんなに小さな会議でも資料を人数分印刷していましたが、「会議の心得」で決めたルールでは資料は前日までにネットワークの中に投入、当日はモニターに投影というスタイルに変えました。

写真:上下水道局で作成した会議の運用ルール

滋野氏
事前準備もそうですが、会議中もその場で資料を修正したり、会議しながら議事録を書いたりといったスタイルに変化しました。会議終了から議事録共有までの時間が短縮されたので、次のステップに移るまでの時間が短縮されました。別の視点では、コピー機やプリンターの印刷枚数削減といった定量的な効果も出ています。実際印刷する機会はとても減りましたし、現在もペーパーレスワークを維持できています。

その他にも、経営料金課ではモニター付きの集中スペースを2席設けるなど、試行錯誤を重ねた上で考えたオフィスでは、ほぼ希望通りの働き方が実現できたと感じました。

レイアウト検討前に実施した職員アンケートで課題感が大きかった「集中環境」確保のため、オフィス改革では集中スペースを2席設置

——— 冒頭では非常事態でのリスク管理という言葉もありましたが、災害時の働き方への意識は?

島田氏
やはり上下水道局なので、他の部局と比べても強く意識しています。片袖デスクに紙の書類が積み上がっているような従来の働き方だと難しいですが、今の経営料金課や総務課のようなオフィスであれば、非常時でも在宅勤務で業務が継続できるほか、執務室内では机を連結して広いテーブルが確保でき、図面データや被害状況をモニターに共有するなどを行いすぐに災害対応業務に移れます。

滋野氏
拠点として位置づけられるので、災害が起こった場合は人員が増え、打合せや作業スペースが必要になります。今のデスクであれば、座る人数のほか、キャスター付きで場所の自由度も高く、そうした用途にも活用できるのではないでしょうか。

——— 経営料金課経営係でオフィス改革を実施された後、島田氏は4月から総務課に異動されました。総務課では今まさにオフィス改革を実施しているということですが、どのように感じていらっしゃいますか?

島田氏
同じオフィス改革とは言え、経営料金係課と総務課では課題も違うし、決めていくプロセスも違うので、戸惑う部分もありました。オフィス改革を実施していない部署から異動してきた職員は、私以上に戸惑ったかもしれません。改めて、オフィスはそれぞれの職場で作り上げていくのだなと感じました。

ただし、実際のところは走りながら考える、必要に応じてルールを作るという形にならざるを得ないと思います。ですから、今後試行錯誤しながら自分たちでオフィスを作っていくことになるでしょう。オフィスの改善に関しても、困っている人へのフォローや、定期的な声がけによってメンバーが改革を意識しやすい雰囲気づくりをしていけたらと思っています。

(作成/コクヨ)

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