インタビュー
——— 新庁舎整備の経緯を教えてください
市民サービスのターミナル化で利便性を向上
寝屋川市は、人口減少や高齢化、そして公共施設の老朽化という「市民サービスの危機」と「公共施設・都市インフラの危機」という二つの危機に対応するため、「市民サービスのターミナル化推進計画」を進めています。この計画の取り組みの一つが「寝屋川市サービスゲート」です。市役所の窓口サービスを駅前に集約することで、市民がアクセスしやすい環境を整えました。大阪電気通信大学の駅前キャンパス跡を活用したこの施設は、ベッドタウンという市の特性を考慮し、電車通勤世代をはじめとする幅広い市民の利用を期待しています。元大学の跡地を活用したことで、周知が容易になり、施設がスムーズに浸透するという利点もありました。
——— 窓口改革や執務環境の整備について具体的に教えてください
「動かさない」「待たせない」空間デザインと職員体制
整備方針でもある「市民最優先」の考えに基づき、市民の利便性を最優先した空間デザインを採用しました。目指したのは、市民を「動かさない」「待たせない」、そして「全ての行政手続きの入口」となるということです。具体的には、市民が利用する窓口部分と、職員の事務所部分を分離しました。これにより、それぞれの空間に最適な環境を提供することが可能となり、特に市民サービスに直結する窓口部分については、窓口に特化したフロアを低層階に配置し、市民の動線の最小化を実現しました。
重厚感のある空間で市民を迎える新たな庁舎づくり
従来の「お堅い」「お役所的」なイメージを一新し、まるでホテルのような重厚感のある洗練された空間を構築しています。落ち着いた内装と家具で統一された快適な環境で、利用者の方々がゆったりとくつろぎながら過ごしていただけるよう配慮するとともに、再び足を運びたくなるような空間を提供することで、市民と行政の距離を縮めます。デザイン性だけではなく、混雑状況に応じた可変型の窓口を採用するなど、機能性にも配慮しています。
開庁のセレモニーでは、その洗練された空間に職員からも驚きの声があがりました。この「寝屋川市サービスゲート」は、単なる公共施設ではなく、新たな行政サービスのスタンダードを創出・発信する拠点となることを目指しています。
フロント・バックオフィス分離による業務効率化
「フロントオフィス(窓口)・バックオフィス(事務所)分離」の導入には、当初、一部業務の煩雑化を懸念する声もありました。しかし、現在では一部の手続きを除き事務処理を窓口内で完結できるように工夫し、円滑な運用を実現しています。
バックオフィスでは、固定席を廃止し、「フリーアドレス」を導入しました。フロントオフィスとバックオフィスを分離したことで、職員がそれぞれの作業に集中できるようになり、業務効率が向上したとの声が挙がっています。分離はされていますが、バックオフィスの職員は、モニターでフロントオフィスの混雑状況をリアルタイムで確認し、必要に応じてサポートに入ることで、市民を「待たせない」サービス提供を可能にしています。
さらに、窓口の混雑状況をオンラインで配信したり、電子申請や郵便申請を推進することで、市民を「待たせない」工夫をするとともに、職員の負担軽減も図っています。
——— 開庁後の市民の反応、今後の展望を教えてください
さらなるオペレーション改善とDX化で市民サービス向上
開庁後、利用者の方から「駅に近くて来やすくなった」「手続きが集約されて便利になった」といった声が届いています。この市民を「動かさない」「待たせない」という基本コンセプトを、今後もさらに追求していきます。
現在、一時的に市民が集中する際には、会議室などを活用して窓口を増設するなどの対応を行っていますが、今後はオペレーションのさらなる工夫が重要になると考えています。
さらに、電子申請をはじめとするDXを積極的に活用することで、場所や時間にとらわれない行政サービスを実現し、市民の利便性を一層向上させていきます。
コクヨ担当者
自治体DXが進み、市役所の窓口の在り方は大きく変化しています。そのような状況にも柔軟に対応でき、将来にわたり長く活用できる窓口空間をご提案しました。
寝屋川市サービスゲートでは、市民が申請書類を書かなくていいように「書かせない窓口を試行」していたり、市民が動かなくていいように「窓口機能を低層階に集約」していたり、支所とも「遠隔でつなぐことのできる窓口」を取り入れていたりと、市民サービスが非常に高いと思います。窓口周りや待合についても、従来の市役所のイメージとは異なる洗練された空間になっており、市民の方々がくつろげる空間になっていると感じます。
寝屋川市サービスゲートは、これからの時代を見据えた新たな庁舎の在り方となるのではないでしょうか。
コクヨ
木村 友香