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2026.07.28

機会の均等化か、逆差別か。企業が意識すべきアファーマティブアクションとは

トレンドワード:アファーマティブアクション

マイノリティへの機会の均等化をめざし、約60年前のアメリカから始まったアファーマティブアクション。それが今、世界的な転換点を迎えている。女性を管理職に登用することが「数合わせ」と批判されるなど、公平性と能力主義で対立が起きているのだ。アファーマティブアクションの基本や世界の状況、働く環境への影響について解説する。

アファーマティブアクションとは?

アファーマティブアクションとは、性別や人種等の理由で差別を受けている人たちに対する、制度や政策による"積極的差別是正措置"のこと。女性や少数民族、有色人種、障害者など、社会構造上の差別の影響で不利益を受けている人に対する、教育や職業上の差別の是正、機会の均等化、多様性の尊重をめざす措置や制度を指します。

アメリカの公民権運動を契機として、ジョン・F・ケネディ大統領が「Affirmative Action」という言葉を1961年の大統領令で初めて使用し、1965年にジョンソン大統領が「人種、信仰、肌の色、国籍を理由に従業員や応募者を差別しないこと」と拡充したのが始まりです。

公平性をめざす似た概念として、DEI (ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)があります。DEIとの違いは、アファーマティブアクションが社会的マイノリティを対象に機会の均等化をめざした政策や制度による是正措置なのに対し、DEIは組織に属するすべての人を対象とした、多様性・公平性・包括性の実現をめざした組織文化や意識改革の取り組みです。




アファーマティブアクション 各国の取り組み

世界ではどのような取り組みが行われているか、特徴的な5か国の事例を紹介します。

アメリカ

アメリカでは大学入試や採用において、人種や性別などを考慮する優遇措置が積極的に行われてきました。1964年の公民権法によって設置された雇用機会均等委員会が、差別の防止や申し立てがあった場合の調査などを行っています。しかし近年、こうした措置が特定の人種に対する不当な優遇で憲法違反だという批判が高まり、すでに一部の州では進学時の優遇が廃止されています。



フランス

2000年に「男女同数制(パリテ法)」が制定され、選挙において、各政党で男女同数の候補者を擁立することを義務付けました。違反した場合、名簿不受理や助成金減額などのペナルティが科せられます。その結果、国民議員の女性議員比率は大幅に増加し、女性の政治参画が進みました。また、2017年に民間企業の取締役会や監査役会における男女比率を各40%以上にすることを義務化。2021年には従業員1000人以上の企業は幹部社員の女性割合を40%以上とするための法律も成立しています。



ノルウェー

特定のグループに割り当てる割合を定める「クオータ制」の発祥といわれ、特に男女平等に関する先進的な取り組みで知られています。男女平等法で、4名以上で構成される公的に設置される委員会等の男女比は一方の性を40%以上にすることを義務付けたほか、2008年以降ノルウェー企業の取締役会の40%を女性にすることを義務化。政治分野でも、クオータ制の導入や政党による候補者名簿の男女交互登録など、女性の参画を積極的に推進した結果、男女平等が定着しています。



インド

カースト制度是正のため、社会的弱者への優遇制度として「留保制度」がインド憲法に定められています。高等教育機関への入学許可数や公的機関での雇用数、各種議会での議席数などで、社会的に不利な立場にある指定カーストや指定部族に対し、人口比で一定の数値まで優遇する制度です。中央政府の留保制度では最大49.5%が上限とされていますが、一部の州では60%を超える留保枠を設けており、上位カースト層の不満の高まりが問題となっています。



日本

事業主に対し、障害者の雇用を促進するための措置を義務付ける障害者雇用促進法や、雇用に関する性別を理由とする差別を禁止する男女雇用機会均等法などが定められています。しかし2025年の日本のジェンダーギャップ指数ランキングは148か国中118位、特に政治と経済分野で依然として男女格差は改善されているとはいえない状況です。




近年高まる、アファーマティブアクションへの批判の声

近年、アファーマティブアクションが「逆差別」にあたるという批判が高まっています。2023年、アメリカの連邦最高裁判所が大学入試で人種を考慮することが、黒人や中南米の志願者優遇でアジア系や白人が差別されているとして違憲判決を下し、大きな議論となっています。一方、実力で入学したにもかかわらず「アファーマティブアクションで優遇されたから入れた」という偏見を受けるという事態も起きています。また、インドの留保制度によって「バラモン」などのカースト上位層が逆差別で職を奪われたとして、海外へ移住するケースが増えている現状もあります。

一方、社会的・経済的な不平等によって十分な教育機会が与えられないなど、スタート地点や条件がマジョリティと同じではないという事実もあります。機会が平等に与えられているかを踏まえて議論を進める必要があります。




企業内でのアファーマティブアクション

企業がアファーマティブアクションに取り組むことで、組織の多様性が促進されるというメリットがあります。その結果、新たなアイデアやイノベーションが生まれたり、社会の変化や顧客のニーズに柔軟に対応する適応力がつくといった効果が期待できます。また、優秀な人材の確保や企業イメージの向上、組織の活性化などにつながる場合もあります。

企業のアファーマティブアクションの具体例として、女性や障害者の雇用促進、育児や介護の支援制度、柔軟な勤務体系の導入、女性管理職の育成プログラムの実施などがあります。同性パートナーを配偶者と同等に扱う制度を導入している企業や、社員食堂で宗教上の食事制限に配慮したメニューを提供する企業もあります。

また、有価証券報告書で人的資本の情報開示が義務付けられました。女性管理職比率推移や男女間賃金格差、男女別育休取得従業員数や育児休業後の復職率・定着率など、企業のアファーマティブアクションの取り組み結果が数値化され、外部からも見えるようになっています。

近年AIによる採用選考を導入する企業も増えてきています。その際、例えば過去の採用データを学習したAIが"男性・白人・高学歴"を理想モデルと認識してしまった場合、バイアスを助長する危険性もあります。AIによる選考は人間の偏見による"偏り"をなくすのか、それとも過去の差別を再生産するのか。今後の流れに注目が集まっています。




MANA-Biz編集部