仕事のプロ

2023.03.07

「多様性」が職場の新陳代謝を生み出す

軸足を複数持つために必要な自己表現とは

新型コロナウイルス の流行は働き方にも大きな影響を与えた。その代表的なものとしてテレワークが一気に普及した結果、時間や場所に縛られないワークスタイルへの移行が進んだ。多様で新しい働き方を取り入れるために個人と企業は何をすべきなのか。株式会社パソナでの仕事を主軸に置きながら、東京テレワーク推進センターの統括責任者など8種類の名刺を持つパラレルワーカーでもある湯田健一郎さんにお話を伺った。
※本記事は、MANA-Biz編集部著『LEAP THE FUTURE』(プレジデント社)から、内容を一部抜粋しております。

登壇者

■湯田健一郎氏(東京テレワーク推進センター 統括責任者)

インタビュアー:高木秀樹(コクヨ株式会社 ワークスタイルコンサルタント)




ダイバーシティの3つの側面

――労働力不足の解消やイノベーションにつながるアイデア創出への期待からダイバーシティの推進を謳う企業も増えていますが、そもそも「ダイバーシティ」をどのように捉えればいいのでしょうか?

2_bus_130_01.jpgダイバーシティには大きく3つの側面があります。1つ目は性別や人種など生まれながらの違いである「インターナルダイバーシティ(内的側面)」。2つ目は経験や趣味、家族構成など、周囲の環境から影響を受けたり、教育や時間の経過によって変化する違いである「エクスターナルダイバーシティ(外的側面)」。3つ目は働く場所や時間、雇用形態や給与形態など、組織によって割り当てられた違いである「オーガニゼーショナルダイバーシティ(組織的側面)」です。

私は企業や組織は、内的側面だけでなく、外的側面や組織的側面に着目し、多様性が発揮できるようにすべきだと考えます。組織を構成する個々人の「違い」と「共通項」が何かを理解し、尊重しあうことが大切です。




企業が老化しないためにも
多様性が求められる

――さまざまな考え方や経験、働き方などの多様性を武器にしていくために企業はどうあるべきでしょうか。

企業も個人も、こういうことをやりたい、こういうものを求めているという「想い」を発信していく必要があります。企業がどういう志を持ち、そこにどんなメンバーがいるのかに惹かれて人は集まるわけですから。
その想いを実現するために自社のメンバーだけで実現するのは難しい場合は、正規雇用の方だけでなくIC(外部プロ人材)や契約社員、パート・アルバイトなど多様な人材リソースマネジメントを考えていくといいですね。

企業の寿命は30年と言われています。企業を一つの生命体として見ると、新陳代謝をしていかないと同質化していきますし、古いものを捨てきれないと老化して弱くなっていきます。時には、断捨離によって飢餓状態になることで、代謝を促して適正な状態を管理することも必要になるでしょう。

ただし、社内にいるだけでは、古いものや不要なものに気づけないこともありますし、外の環境に出ることで自社の課題や良さがわかることもあります。組織もフルコミットな人ばかりではなく、パラレルワーカーのようないろいろな人が出入りできる環境をつくっておく...。多様な人が入り混じることで企業内、組織内での循環を促すことが大切です。




多様な個が活きる
パラレルワーク

――企業の新陳代謝を高めるためにも、個々人の多様性を活かすためにも、企業の外に出てさまざまな環境で働いてみることが有効とのことですが、パラレルワークをするにあたって大切なことはなんでしょう。

自社の課題やありがたみ、自分が求めるものや自身の市場価値など、外に出ていろいろな軸足を持つことで改めて見えてくるものがあるので、パラレルワークや越境体験をするべきです。
ただ、そこで重要なのは、そうした体験を通して気づいた自分の好きなことや得意なことを可視化してシェアしていくことです。ポートフォリオもそうですし、FacebookやLinkedInなどのSNSで発信することもその方法の1つです。

これからは非金銭的報酬を求め、自分の価値観に合う仕事を選ぶ人がますます増えていくでしょう。そのため、外に向けて自己表現できる人が活躍しやすくなると思います。自ら発信していくことで、組織の中でも業務の幅が拡がるでしょう。企業側は、社員の求めていることや強みを把握してマッチングしたり、外に向けて自社の求めるものややりたいことを発信する必要があります。

政府も今後はパラレルワークが当たり前になるとレポートしています。仕事の軸足を複数持つには、自分が働くうえで何を望んでいて何ができるのかを知り、それを表現することが、出会いの機会につながっていくでしょう。

※本記事は、MANA-Biz編集部著『LEAP THE FUTURE』(プレジデント社)から、内容を一部抜粋しております。



書籍紹介

LEAP THE FUTURE 未来の常識を跳び越える「働き方」(プレジデント社)

【書影】コクヨさま『LEAP THE FUTURE』.png 「2030年」という未来に焦点を置いて、それまでにどのような働き方を実現しているかを予測・考察した1冊。高齢化や労働力不足が深刻化していく未来を見据え、企業の仕組みや風土を変えるには今からアクションを起こしていく必要があると考え、現代の働き方を取り巻くさまざまなデータをもとに、足元の課題を分析し、解説します。また、そこから各分野で活躍する見識者と意見を交わすことで、これからの時代を明るく照らす、新たな発想へとつなげています。https://www.amazon.co.jp/dp/4833452200




湯田 健一郎(Yuda Kenichiro)

東京テレワーク推進センター 統括責任者。2001年にパソナへ入社。ICTを活用し、場所を問わず多様な人材の能力を活かす「LINK WORK STYLE」の推進を統括している。現在、テレワーク&8つのパラレルワーク&二地域居住を実践中。




東京テレワーク推進センター
テレワークの普及を推進するために、東京都と国が設置した施設。テレワーク関連の製品・サービス体験の提供や情報発信、テレワークの導入・拡大に伴う相談受付を行っている。2020年7月には、『TOKYOテレワーク・モデルオフィス』を府中市・東久留米市・国立市に新設した。https://tokyo-telework.jp/

高木 秀樹(Takagi Hideki)

コクヨ株式会社 ファニチャー事業本部/ワークスタイルイノベーション部/ワークスタイルコンサルタント
2002年コクヨ入社。2年目から現在の部門にて活動。オフィスサーベイをはじめとしたオフィス関連調査、書類削減や共有サーバー再整理等のファイリング、フリーアドレスやABW導入サポート等の働き方改革支援や新築ビル入居のPM業務等を経験してきました。「実際に運営された時どうなるか」を運用面・心理面等多角的に考えることで、やりっぱなしにならない方法論をお客様と一緒につくりあげるお手伝いをさせていただいています。

作成/MANA-Biz編集部