仕事のプロ

2018.04.20

エアークローゼットにみる行動力が導くビジネスの展開法〈後編〉

ブレのないサービスは行動指針の徹底共有から

プロのスタイリストが女性顧客一人ひとりのために似合う洋服を選び、レンタル制で毎月届けるファッションレンタルサービス「エアークローゼット」。後編では、このサービスを運営する株式会社エアークローゼットの代表取締役社長 兼 CEOである天沼聰氏に、新感覚のビジネスを支える組織づくりについてお聞きした。

「意識が低い」と感じたら
怒りを隠さない

コンサルティングファームで戦略立案やビジネスモデル構築に携わってきた天沼氏だけに、「沈着冷静な経営者」という先入観を持たれることも。しかし、ご本人は「かなりの感情人間」と自己分析する。仕事の場面でも、メンバーに怒りを見せる瞬間はある。それは「真剣にやっていない」と感じたときだ。

「真剣にやっているかどうか」の基準は、「考え抜いているかどうか」だという。例えば、自分が直接関わっていない案件に関連する会議に、社長として意思決定のために出席するとき。報告を聞くうちに気になる部分が見つかり、「ここに対してはどうアプローチしてるの?」などと質問することがある。そのとき担当メンバーから「考えていませんでした」と言われると、「真剣にやれよ」という言葉が天沼氏の口から飛び出す。

「私の質問に答えられないのは、能力がないからではなく、考えるのをサボっているからとしか思えません。なぜなら、担当者はその案件について、社長である私の10倍以上は考える時間があるはずですから。能力差ではなく意識差の問題だ、と感じたら、真剣にやっていないと判断して迷わず怒ります」

組織内で堅い信頼関係を築くためには、全員が仕事に全力投球し、自分を高め続けていくことが求められる。だからこそ天沼氏は、メンバーに「真剣であること」を期待し、時に怒りを見せる。高い熱量に触れることが、メンバーにとっては、プロフェッショナルに近づくきっかけとなるのかもしれない。

2016年に実店舗を開店したり、2017年には新サービスである「pickss(ピックス)」の提供を開始したりと、同社はファッションレンタルサービス「airCloset(エアークローゼット)」のサービスに加えて新規事業を次々と開拓している。近い将来の展開として、海外での展開やメンズ、シニア、マタニティ向けファッションレンタルサービス、アクセサリーなどレンタルアイテムの追加なども見据えている。

ただし、目的はビジネスの拡大ではなく、あくまでも「お客さまの感動」だという。「お客さまが新しいモノと出会う体験をどんどん拡げていきたいですね」と天沼氏は強調する。

株式会社エアークローゼットの事例からわかるように、価値観を徹底的に共有することで、ブレのないサービスを展開するための土壌が生まれる。組織の規模が大きくなるほど意識統一が難しくなるのは事実だが、だからこそ努めて価値観のすり合わせを行っていくことが必要といえるだろう。

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株式会社エアークローゼット

“新しいライフスタイルをつくる”を理念に株式会社ノイエジークとして2014年設立(2015年に「株式会社エアークローゼット」に商号変更)。2015年2月に女性向けファッションレンタルサービス「airCloset(エアークローゼット)」の提供を開始し、現在は登録会員数15万人に。ファッションスタイリングサービス「pickss(ピックス)」や、不動産会社エイブルと提携運営する実店舗「airCloset×ABLE(エアークローゼットエイブル)」など、新形態のビジネスも続々と展開している。

文/横堀 夏代 写真/石河正武