ライフのコツ

2014.03.25

「絵本ナビ」編集長に聞く絵本との対話法

年齢別おすすめ絵本と親子を繋ぐ読み聞かせとは

絵本を読んであげたくても、どれを選べばいいのか悩んだり、せっかく買ったのに興味を持ってもらえなかったり。年齢や個性にあった絵本を選ぶのは、そう簡単ではありません。しかし、その課題をクリアして、いい形で絵本に出会うことができれば、興味の幅が拡がり感性が高まるといったこどもの成長にプラスがあり、親子のコミュニケーションづくりにも大いに役立つ。年齢別の選び方やおすすめの絵本、親子の関係をより深める効果的な読み聞かせの仕方など、絵本の世界がもっと楽しく豊かになる情報を「絵本ナビ」編集長の磯崎園子さんに伺った。

「いい絵本」と出会う、意外な"コツ"とは
「現職に就く前には書店の絵本コーナーで働いていたこともあり、たくさんの方から「絵本ってどうやって選ぶの?いい絵本ってなに?」と質問をうけてきた磯崎編集長。その回答は意外にも『お母さん自身が読みたいと思う絵本を選んでいい』という。

「こどもの教育にいいものを、とか脳の発達に良いものはどれ?と考えるよりも、読んでいてお母さんが笑顔になるものが一番。キレイな絵だな、おもしろいな、それで選んでいいんです。こどもは絵本を読んでいるときのお母さんの表情を本当によく感じ取るんですよ。

ただ、偏りが出てしまうと、こどもが新しい絵本に出会うチャンスを奪ってしまいます。図書館で借りたり、ママ友に聞いたりといった形で違うタイプの絵本に触れてみると、『こんな絵本も好きなんだ!』とか『意外とおもしろい』なんて発見があるもの。こどもの反応を見つつ、いろんな絵本との出会いを楽しんでくださいね」。

新しい絵本との出会いという面では、「絵本ナビ」も非常に頼りになる存在だ。年齢別でのおすすめ絵本、全ページためしよみ(各作品について1回のみ)といったコンテンツのほか、年間637万人が利用し、26万件を超えるレビューには、うちの子はどんな反応をしたかといった話題がたくさんあり、絵本を購入する際に参考になる情報が揃っている。「いつも本棚にある、私の特別な一冊」。を見つけるための最適なナビゲーションをしてくれるのだ。
毎日たくさんの絵本に触れる磯崎編集長に、年齢別のおすすめ絵本を聞いてみた。

年齢別 心を育むオススメ絵本

■赤ちゃん期~2歳ころまで「芽生えの時期だからこそ良質なものを」。

「おもちゃと同じ感覚で絵本に触れている頃。めくる感触を楽しめるボードブックタイプや、ガタンゴトンとかベタベタのような擬音語・擬声語音のおもしろさ味わえるもの、あそびの『いない・いない・ばぁ~』のような繰り返しと驚きがあるものも、いい反応を示します。また、意外かもしれませんが本物そっくりなリアルな絵も、自分の見ている風景と照らしあわせて楽しみます。

また、1~2歳前後は『もう一回読んで』と繰り返し読みたがる時期。お母さん自身も楽しんで読める内容・長さを選ぶことも重要ですね」。

また「0歳の赤ちゃんに読み聞かせしても意味はあるの?」という疑問もある。それに対して「読みきかせは、思い立ったその日から始めてOK」と磯崎氏。妊娠中なら、お腹の赤ちゃんにお母さんの声は届いているし、こどもによってはなかなか反応が見られないこともあるが、1~2歳になって、ある日とつぜんその絵本のマネをしたり、文章を暗記してたりといった「爆発」が見られることも多い。興味がなさそうに見えても、こどもなりに何かを感じとって内側に蓄積しているのだろう。絵本を破ったりしゃぶったりする時期は、「今はそういう時期」。と割り切って、気楽に眺めていればいいそう。破れた絵本を直す親の姿を見て物の大切さを学びとるし、興味を示したときには、その反応の違いを成長の証として楽しむことができる。

◎どんどこももんちゃん(作: とよた かずひこ/出版社: 童心社) 「どんどこ、どんどこ」のリズムが心地よい一冊。ラストは、きっとお母さんも感情移入してしまうはず。何回読んでも飽きない魅力がいっぱいですよ。
◎だるまさんが(作:かがくい ひろし/出版社:ブロンズ新社)誰もがプッと吹きだす笑える絵本。ページをめくるたびに、きっと、こどものかわいい笑い声が聞けるはず。ファーストブックにもおすすめです。
◎もこ もこもこ(作:谷川 俊太郎/絵:元永 定正/出版社:文研出版)詩人と画家による、不思議な世界観の絵本。シンプルな言葉と絵に惹き込まれます。息子が5~6歳になっても引っ張り出してきて読むほどお気に入りでした。
◎くだもの(作:平山 和子/出版社:福音館書店)リアルな描写の果物が、とってもおいしそう。こどもは、自分の知っているものが出てくると非常に喜びます。絵のスイカをとろうとしたり、食べようとしたり、おもしろい反応を見せてくれることもありますよ。
◎がたんごとんがたんごとん(作: 安西 水丸 /出版社: 福音館書店)音の繰り返しが楽しく、あそびながら読める絵本。おひざに乗せて「がたんごとん」と、揺れながら読んでみてください。きっと「やって~!」と何度もせがまれることになります(笑)
絵本を慈しむように手に取り、読んでくれる磯崎編集長。手にしているのは「どんどこももんちゃん」
■3歳~就学頃「世界が広がる年齢。こどもの目線で読めるものを」。

「少しずつストーリーを理解し始め、ボリュームのある絵本が読めるようになってきます。どのくらいの文章量なら理解できるか見極めの難しいところですが、内容によっても違うので、4~5歳くらいまでは、こどもの反応や様子を見て決めてあげてください。『お気に入りの一冊』ができたら、その絵や文章量を基準にして、似たタイプを探すのもいいですね。

内容については、こどもが共感できたり感情移入したりしやすいものがいいでしょう。興味を持ちやすいですし、現実世界とうまくリンクすると理解が深まります。

また、こどもがいたずらをするようになって、お母さんがしょっちゅう『コラー!』なんて怒っている時期でもありますよね。お母さんの心をスッとほぐし、親子で笑える絵本を一緒に楽しむのもおすすめです」。

◎14ひきのシリーズ(作:いわむら かずお/出版社:童心社)※URLは、14ひきのシリーズ(12冊セット)。
散歩中の足元に広がる世界を垣間見た気持ちになる、ねずみたちの物語。絵本でイメージを広げ、外あそびで自然の力を感じる...そんな風に『想像と本物の世界を行き来して楽しむ』ことの手助けをしてくれます。
◎もっちゃう もっちゃう もうもっちゃう(作: 土屋 富士夫/出版社: 徳間書店)トイレに行きたいのに、あっちでもこっちでも、おかしなことが起こって...。こどもの「もうもれちゃうよ~」という体験とリンクして共感できます。


ブレイク必至の注目の絵本作家の作品にも、親子で楽しめるおすすめ作品がある。tupera tuperaという、亀山達矢さんと中川敦子さんによるユニット。飾りたくなるほどおしゃれで、それでいて発想がどれもユニークでおもしろい。親子で楽しめること間違いナシ!です。

◎パンダ銭湯(作:tupera tupera/出版社:絵本館)かわいいパンダの衝撃の秘密が明かされる、衝撃の絵本(笑)親も、こどもも、思わず吹きだしてしまうはず!最近話題を呼んでいる、注目の絵本です。
◎うんこしりとり(作:tupera tupera/出版社: 白泉社)とにかくずっと「うんこ」が続くしりとり絵本(笑)。排泄物は汚い・恥ずかしいものではなく、自然なこと。明るくオープンに扱っていれば、こどもたちもトイレに行くのが楽しくなると思います。

お父さんにオススメの読み聞かせ絵本
「お父さんの読み聞かせ」は、それだけでとても特別なもの。お母さんがやさしく読むのとはちがう目線や雰囲気は、こどもにとって新鮮に響きます。絵本は、読む人や、その日の調子や気分によっても印象が異なります。いろんな人が読んであげることで、こどもの世界はより広がります。

◎「三びきのやぎのがらがらどん」(作: 北欧民話/絵:マーシャ・ブラウン/訳:瀬田 貞二/福音館書店)地声で読めるのでお父さんにおすすめです。迫力満点に読んでください!文字の大きさに声も合わせて!
◎うんちっち(作: ステファニー・ブレイク/訳:ふしみ みさを/出版社:あすなろ書房)何を言っても「うんちっち」。と答えるウサギのお話。とにかく、こどものウケ方が尋常じゃない!親子で思いっきり笑えます。たとえ読む側が、疲れている日でも、読めばきっと心が和らぎます。お母さんが躊躇してしまうような内容もお父さんならOK!
◎フルーツがきる!(作:林 木林/絵:柴田 ゆう/出版社: 岩崎書店)『時代劇×果物』という、異色の組み合わせ。セリフがユニークで、だじゃれも満載なのに、キャラクターがみんなかっこいいんです。地声で読んでも自然なので、お父さんの読み聞かせにもおすすめです。時代劇口調はお父さんがかっこよく見えますよ。
◎「ぼくだってウルトラマン」 (作:よしなが こうたく/出版社:講談社)昔ウルトラマンに夢中になったお父さんも多いのでは?新しいウルトラマンの絵本をきっかけに、男同士の会話も弾むでしょう。ウルトラマンは世代を超えます!
◎「ダットさん」(作:こもり まこと/出版社:教育画劇)車好きなお父さんのほうが興奮してしまうかも!こどものころ好きだった車を思い出しながら、車の音は恥ずかしがらずに思いっきり読んでください。

"絵本至上主義者"にならないで
ファンタジックなものから、リアルな心情を描いたものまで、実に幅広い絵本の世界。親としては、こどもにたくさんの絵本に触れてほしいと思う。ただ"絵本至上主義"にならないように、というアドバイスは身に染みる。

「絵本に興味を持ってくれない...と焦る方もいらっしゃいますが、絵本は飽くまでひとつのツール。こどもの個性にあう方法を探せばいいのだと思います。絵本はあんまりだけど図鑑は好きという場合はいっしょに写真を眺めて楽しめばいいし、外あそびが好きな子なら、眠る前に即興でお話をつくって物語の世界に触れたりするのもいいですよね」。

絵本が育むチカラと効果
「本は日常と違う世界へ連れて行ってくれたり、つらい気持ちの時や落ち込んだ時に助けたりしてくれる力を持っています。こどもたちにとっても現実はとても厳しいもの。いつもページを開けばそこにある、絵本の中に広がる世界や友だちの存在が救いとなるんです。それに、幼い頃から絵本に親しんでいれば、本を読む力も育ちます。

また、感性も育ててくれます。ストーリーや絵から得るものはもちろんたくさんありますし、版型もとてもユニーク。大きさや厚み、形などは、より効果的な訴求のために考えられていて、めくり方や見え方の違いが楽しめます。『当たり前』が広いほど、こどもの感性を育てるもの。本棚の整理は大変ですが(笑)、『小さな画集』と思っていろんなタイプを楽しんでみてください」。
「親子で大笑いできる」絵本を読む行為は大人にとっての癒しの時間なのかもしれない。
いそがしいお母さんとこどもの間を深める「読み聞かせ」
そしてまた絵本は、親子の関係づくりにこそ大きな力を発揮する。

「絵本は、コミュニケーションの道具です。いっしょに読むときは、ぜひ、お子さんをおひざに乗せてあげてください。作品によってトーンや声色を変えて、昼間はおもしろおかしく、眠りに就く前はやさしい声で...と自由に、お母さんも楽しみながら読むことが大切です。ひざの上で包まれる安心感、耳に響くやさしい声、いっしょに笑ったり感動したり...絵本の時間は、親と子が一対一で過ごす、幸せで大切な時間です。

たとえ短い時間でも、毎日時間を決めて読んであげるのは非常にいいことです。いそがしいワーキングマザーはその時間をつくることも大変だと思いますが、こどもにとって『毎日同じ時間にいっしょに絵本を読める』というのは、大きな安心につながります。ぜひ、親子いっしょに絵本を楽しんでもらえたらと願っています」。

"できるナビby Ehon Navi"と"KOKUYO MANABI LAB."で一緒に絵本のあそびのレシピをつくりました。あそびのレシピはこちらです!
【絵本のあそび】わたしのお弁当
【絵本のあそび】あおくんとあかちゃん?
【絵本のあそび】ちぎり絵に挑戦
【絵本のあそび】形で想像する

磯崎園子

絵本ナビ編集長として、絵本作家さんへのインタビューやオススメの絵本を紹介するメルマガ・絵本ナビコンテンツページの企画作成をしております。前職で大手書店の絵本担当をしていた経験や、自身の子育て経験を活かし、絵本ナビサイト内だけではなく、各雑誌やメディアでも子育て・絵本をキーワードに情報を発信します。Ehon Naviはこちら

  文/田中社(田中青佳) 撮影/ヤマグチイッキ