プロダクトアイデンティティ Product identity モノづくりに秘められた「モノ」語り

vol.12Vol.12 Duora

 ノートPCやタブレットを使った新たな働き方が普及する中最適な着座姿勢も変化してきています。デュオラはそれらの姿勢に着目し、直観的な操作で誰でもクイックにモードチェンジができることをコンセプトに開発された次世代チェアーです。

デザイン担当 プロダクトデザインG 加納隆芳

開発担当メンバー 林 克明
上田 伸行
奥一夫
髙橋 泰崇
鈴木 正義
和氣 大亮

ワンアクションで姿勢を切り替える

 近年のワークシーンを観察していくと、ノートパソコンの普及もあり体を前方に倒した下方視姿勢が頻繁に行われています。上位機種のインスパインやベゼルではそのような姿勢に最適なセッティングを細やかに調整できるよう開発してきました。
 一方、オフィスチェアーの機能調整は操作知識に個人差があり、実際は十分な調整が行われないケースも発生しています。開発チームでは誰でも一目で操作方法が分かり、ワンアクションで最適な姿勢に切り替えられるということをコンセプトにチェア開発をスタートしました。
 
 試行錯誤の結果、背を2通りのモードに切り替える「ペルビックアジャストサポート」を開発しました。前傾時には骨盤を積極的に支えるモードで、背もたれと腰の間にクッションを挟んだような感覚を得ることができ、後傾時には自然なS字カーブを実現し、背全体で体圧を分散させることが可能になります。

ONE ACTION TWO POSTURE

Landscape & Product design

 Duoraの名称由来でもある【Duo】は二重奏という意味を持っています。
 しっかりと構造を支えるフレーム層と、身体にフィットするしなやかなメッシュ層の2層の背フレームを特徴としてデザインを進めていきました。
 オフィスチェアーのデザインは嗜好品のようにプロダクト単体で愛着を持ってもらえるような個性が必要なものでもありますが、空間に多数レイアウトした際に景観に調和するような静的な意匠性も考える必要があると考えました。
 Duoraのデザインは正面視にはシンプルで端正な印象、立ち目線など角度を振ったアングルでは曲線的で優美な表情をみせる【二面性】を大切にし、デザインされています。

直観的な操作性

 誰にでも直観的で簡単にモードチェンジを行ってもらうためには操作部のインターフェイスがとても重要になってくるため、Duoraの操作部は多くのトライアンドエラーを重ね、開発されました。
 3Dプリンターを使用して数十にもわたる試作検証を行い、操作性とデザイン性の両面から納得のいく形状を探っていきました。
 
 最終のデザインでは指のみでも力が伝達しやすいレバー形状を採用。回転操作を造形で直観的に示しています。チェア本体から生えたような素材感で全体感を保ちつつ、クリアリングを挟み込み分離することでレバーの視認性を演出しています。

長く美しく使えるプロダクトを目指して

 近年、チェアの本体カラーが白色の製品が増加しているなか、コクヨでは黒色脚をメインに製品を展開していました。その理由は汚れです。オフィス環境では外出先から持ち帰る汚れや革靴の墨など汚れを発生させる要素が多く、長く使用することを考えると結果的に黒色にしておくことがデザインにおいてベターだと考えていました。
 しかし、今回新しく汚れのつきにくい【クリーンテクトコーティング】を開発。長期間の使用でも製品のデザイン性を美しく保つ、白脚を具現化することに成功しました。
 
 Duoraは、本体は白/黒の2色にアルミ磨き仕様の3種類。張地カラーは10色あり、ベーシックカラーからトレンドカラーまで幅広くラインアップしています。時代を超え長く愛される製品になればと思っています。

※生産終了につき切替のため、後継品のDuora2になります。

受賞