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伊丹市役所

デジタルを活用したスマートワークの実現で目指す、「職員自ら考える」働き方

新庁舎

Award

第36回 日経ニューオフィス賞 近畿ニューオフィス奨励賞

Point1
ABWの実践
Point2
コミュニケーション促進
Point3
ペーパーレス

名称伊丹市役所

完成年月

完成年月
2022/11

対象面積

対象面積
21700

対象人数

対象面積
1,000

自治体規模

自治体規模
19万7千

建築種類

建築種類
新築

事例詳細Overview

平成7年の阪神・淡路大震災を経験した旧庁舎は耐震性能に問題を抱えていたため、伊丹市は「市民の安全・安心な暮らしをささえ 夢と魅力があふれる庁舎」を基本理念として新庁舎整備計画を推進。2021年には、人口減少社会における生産年齢人口の低下によって生じる人員・人材不足といった課題対応と、市民サービスの維持・向上の両立を目的とした「Smart Itami(スマート イタミ)宣言」を発表。職員の生産性向上を通じて市民サービス向上を目指すべく、新庁舎ではコミュニケーションの活性化やデジタル化への対応など、働き方改革に資する“場”の実現を目指し、より魅力あるワークプレイスの創造と生産性向上により、課題解決に取り組みました。

従来の伊丹市役所では、紙書類に基づく非効率的な業務やコミュニケーション不足、部門間の連携不足、いわゆる縦割行政が大きな課題となっており、結果的に職員の政策形成能力やモチベーション低下を招いていました。そこでペーパーレスやテレワークの導入によってスマートワークの推進を図るとともに、ABW(Activity Based Working)の働き方やウェルネスの視点をオフィスに採用。オープンオフィスでのグループアドレス運用によって所属長や他部署とのコミュニケーションを取りやすくすることや、業務に適した場を自身で選べる働き方としたことで、「自分で考える・発想すること」をテーマとした意識改革を目指しました。

コクヨはオフィススタンダードの作成支援や旧庁舎でのパイロットオフィス構築、実施設計支援等を実施。備品計画においては、可動式の什器を多数提案。レイアウトの自由度を高めることで、非常時や将来を含めた「自分で考える・発想する」働き方の実践が可能な場づくりを支援しました。

ご担当者の声Voice

●業務継続への課題意識について
業務が出来なくなる状況については、これまでの震災や火災のほか、昨今の新型コロナウィルスによるパンデミックへの対応など多岐にわたります。それらを経験する中で、ペーパーレスとABW(モバイルワーク含む)のほか、柔軟に配置を変えられる可変性家具の検討は新庁舎整備において重要な要素となっています。

ペーパーレス化は単なる紙文書の電子化ではありません。働き方において「場所を選ばない」だけでなく、これまでの紙媒体に比して、災害による破損・焼失などを防ぐことができ、業務継続を可能とします。さらに、新型コロナウィルスがきっかけで社会にもたらした働き方であるテレワークやABWを可能とします。

加えて、可変性のある家具を導入することで、刻々と変化する状況や業務の内容に応じて、フレキシブルなオフィス展開を可能とし、業務継続性を高める要素となります。このように、市役所として市民サービス維持(・向上)という課題に対応するだけでなく、平常時・非常時問わず、さまざまなシーンに対応できることを意識して整備してきました。

●「Smart Itami」の実現に向けた職員像について
「Smart Itami」は、来る人口減少社会における生産年齢人口の低下によって生じる人員・人材不足への対応と、市民サービスの維持・向上の両立を目的としています。「Smart Itami」では労働生産性の向上を求め、職員が自身で考え、政策形成を行うことを目指しており、その実現に向け、①超勤レスでスマートな働き方を実現し、②ペーパーレスでスマートな職場環境を構築し、③キャッシュレスでスマート決済の導入に取り組みました。

目指す職員像としては、市民サービスの根幹である「現場主義」であること。それに加えて、変革に対応すべく、「既成概念に捉われない自由な発想をすること」を求めています。そのためには、目の前の業務から将来に向けて「自身で考える」力を日頃から養うことが必要となり、そういった力は日常の中で、「考えたことをプレゼンテーションする」ことや「コミュニケーションとネットワーク」によって養われると考えています。当然に、その手法としては「デジタルを道具として普通に扱える」ことが前提となります。新庁舎に生まれ変わることによって、職員が生き生きと働くスマートな職場と市民サービスの向上が実現し、未来に向けて選ばれるまちとなることを期待しています。

●建築特徴について
新庁舎は未来型の庁舎として整備しました。免震構造やライフラインの多重化など、BCPを向上させたことに加え、抗菌・抗ウィルス仕様の内装材や換気量の充実といった新型コロナウィルス対応など、安心して利用できる庁舎になっています。そして「共に創る」をテーマとし、市民や障がい者団体とディスカッションやワークショップを重ね、誰でも利用しやすいユニバーサルデザインを実現する庁舎となっています。

さらに、将来に向けたグリーン社会の実現として、床面積2万㎡を超える大型庁舎では西日本で初めて「 ZEB Ready 」に認証されたほか、地元県産材の木材を活用することや建設地に植えてあったクスノキを保存、利活用するなどグリーン社会が求めるカーボンニュートラルとサスティナブルを体現するグリーン庁舎となりました。

さらに、デジタル技術の活用により「待たなくていい」「書かなくていい」「行かなくていい」をコンセプトにしたスマート窓口を実現するほか、デジタルサイネージによる情報発信や自治体施設では全国初となる無人決済コンビニを導入するなど、未来型のスマート庁舎となっていると自負します。

このように、さまざまなアイデアと技術、共創によって建設された庁舎は、夢と魅力があふれる庁舎となりました。まだ生まれたばかりの建物はこれから、これまでの文化や歴史を継承しつつ、新しい時代に向けて成長し続けるものとなります。そして、利用される市民にとって「普段使いのできるリビングのような市役所」となるように、どんどん使い尽くして、より魅力的な市役所となってほしいと考えます。

  • 中西 寛氏

    伊丹市

    総合政策部 デジタル戦略室 主幹(新庁舎等整備担当)

    中西 寛氏

事例写真一覧Gallery

【伊丹市役所】1F 市民課・証明交付窓口

1F 市民課・証明交付窓口

スマート窓口の実現に向けた取組みの一つとして、各種証明書の発行をワンストップ化させ、クイック窓口としてハイカウンターを設定。そして、スマートな手続きとするため、マイナンバーカードの読み取りや電子サインによる「書かなくていい」窓口や、オンライン事前予約による「待たなくていい」窓口に加えて、オンライン申請における「行かなくていい」窓口を実現。また、窓口で取り扱う証明書発行手数料等にはキャッシュレス(スマート)決済を導入。

【伊丹市役所】1F 市民ロビー

1F 市民ロビー

ロビーチェアー Madre<マドレ>をはじめ、来庁者向けスペースにはユニバーサルデザインに配慮した家具を採用。キッズスペースや音声呼出しの他、デジタルサイネージによる案内など、誰でも利用しやすいロビーを実現。また、1Fは明るく色味の薄いアースカラーをテーマカラーとし、柔らかく明るいリビングの印象を持たせたカラースキームを設定。大きな窓による採光と採風により、「縁側のような」居心地の良い半屋外的な空間も見どころとなっている。

【伊丹市役所】1F 市民協働スペース

1F 市民協働スペース

「普段使いのできるリビングのような市役所」を目指し、市民スペースを拡充。市民ワークショップによって考えられた空間は、大型サイネージモニターによる情報発信や市民とともにまちづくりを語らう空間としつつ、手続きの待ち時間など、日常的に利用されるよう、可変型のテーブルやくつろぎのソファの他、ホワイトボードパネルなどを設置する設計。

【伊丹市役所】2F 市民ロビー

2F 市民ロビー

R型の窓口で受付後、各窓口に案内する形式を採用した相談窓口ではL型のブースタイプを採用するなど、来庁者のプライバシーに配慮しつつ、窓口を見通せる安全・安心の設計。

【伊丹市役所】2F 市民ロビー

2F 市民ロビー

「子ども」や「教育」関連の窓口を集約した2F市民ロビーでは、明るく元気なイメージとなる内装テーマ「カラフル」に設定。ロビーチェアー Madre<マドレ>をはじめ、キッズコーナーなど、来庁者向けスペースにはユニバーサルデザインに配慮した家具を採用。

【伊丹市役所】3F 執務室

3F 執務室

フロア内は全てユニバーサルレイアウトを採用し、所属長を島型デスク内に配置し、さまざまな連携の取りやすさが向上。新庁舎でのオフィス思想はABWを採用し、集中作業や意思決定など自身の業務に最も適した場所を選んで業務できる機能空間を各フロアに整備。

【伊丹市役所】3F 市長応接室

3F 市長応接室

主に市長あての来客をもてなす室として、清酒発祥の地らしく、地酒の酒米を利用した「お米和紙」を天井仕上げ材に採用するほか、明るい色調にするなど、上質なインテリア空間を演出。
面談や会議にも利用できるように大型モニターと共に「対面」と「囲み」に対応する馬蹄型のテーブルを配置。

【伊丹市役所】3F 議場

3F 議場

地元兵庫県産材のスギを内装と家具にふんだんに使用した市議会議場。機能性と更新性を両立するキャスター付チェアを採用するとともに、車椅子利用や身長差が大きい場合などに備え、ユニバーサルデザインに配慮した昇降装置付きの演台を採用。

【伊丹市役所】4F 執務室

4F 執務室

ABWとフリーアドレスの思想のもと、大型テーブルとユーティリティスペースを配置。椅子やテーブルなど、多様なカラーバリエーションにより、活力ある「ビタミン」なインテリアを設計。また、執務デスクには可動テーブルを採用し、将来の大きな組織改編や空間リニューアルに対応した執務デスクを採用。

【伊丹市役所】4F ユーティリティスペース

4F ユーティリティスペース

職員が自分自身で業務を考え、最高のパフォーマンスを発揮できるために必要な環境として、各フロアにユーティリティスペースを配置。ペーパーレス化によってもたらされる余剰空間を利用。ハイカウンターやソファー席など、職員同士のコミュニケーション、モードチェンジを促す空間設計になっている。

  1. コクヨの庁舎空間づくり
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