GOOD WORK DAYS

COLUMN

「働く人」から未来のオフィスを考える【前編】ワークスタイル研究所 田中康寛さんインタビュー

〈オフィス勤務とリモート勤務、半々くらいがちょうどいい?変化するワーカーの価値観から、
これからの働き方を予測する〉

こんにちは! GOOD WORK DAYS. 編集部です。

コロナ禍になり一年。みなさんのオフィスや働き方は、大きく変化したと思います。でも、まだまだ模索中......という方も多いのではないでしょうか?
編集部ではこれまで、納入事例を通じてさまざまな企業の方々に、‟これからのオフィスのあり方や働きかた働き方"について、お話を伺ってきました。

【目次】

    そこで今回は、コクヨ社員にインタビュー。「ワークスタイル研究所」に所属し、「働きかた働き方」や「働く人」にまつわるリサーチやコンサル活動を行っている田中康寛さんに、いまオフィスに求められていることや、これからの働き方についてなどなど、いろいろとお話を聞いてみました!

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    プロフィール
    田中 康寛さん:2013年コクヨ株式会社入社。オフィス家具の商品企画・マーケティングを担当した後、2016年より働き方の研究・コンサルティング活動に従事。国内外のワークスタイルリサーチ、ワーカーの価値観調査などに携わっている。(note: https://note.com/tanakaya444

    「オフィスを変えたい」経営主体からワーカー主体へ


    ―まず、田中さんの最近のお仕事について聞かせてください。


    田中 はい。「ワークスタイル研究所」の研究員として『企業文化』や『働く人』をテーマに研究・調査をしながら、スペースソリューション事業部のコンサルチームの一員として、さまざまな企業さまの働き方やオフィスを設計させていただいています。コロナ以降、コンサルティングのご相談案件が増えていて、最近はコンサル業務のウエイトも割と大きいですね。

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    ▲「ワークスタイル研究所」は、「働き方」「働く場」「働く人」にフォーカスし、それらがよりよくなるためのリサーチやコンサルティングを行う機関。ワークスタイル戦略情報メディア「WORKSIGHT」の編集・運営をはじめ、社内ラジオやレポート作成など、ざまざまな方法で研究内容をアウトプットしています。(㏋:https://workstyle-research.com/

    ―最近はどんなご相談が多いんですか?

    田中 やはり働き方やオフィスを刷新したいというご相談が圧倒的に増えました。この一年で在宅ワークも浸透して、オフィスの使い方が大幅に変わりましたよね。そもそもオフィスは必要なのか、という話もある。確実な答えのないなかで、どう検討していったらよいか分からないから、まずは話を聞かせてほしい、とご相談されるケースが多いです。

    ーオフィスを変えることに対して、みなさんどのような意識をお持ちなのでしょう?

    田中 私たちがお話を伺う方々はポジティブに変化を捉える方が多いですが、その裏には危機感もあると感じますね。「世の中の大きな変化に、自分たちも適合していかなければいけない。さてどうするか?」と。

    ひとつ、以前と比べてとくに変わったと思うのは、経営層だけでなく一般ワーカーもオフィスの重要性を実感していて、「オフィスを残したい、変えたい」と考えている点です。外出自粛やリモートワークで「人と会えない、リアルで話せない」という孤独を感じた経験が大きいと思います。だけど上司や経営層への説得の仕方がわからないから、一緒に経営へ答申する資料をつくってほしいとご相談を受けることもありますね。

    新入社員とベテラン社員。‟共通体験"が架け橋に


    ーいまは「どのようなオフィスにしたい」というニーズが多いのでしょうか?


    田中
     いまは、コミュニケーションや人とのつながりを渇望しているワーカーが多いので、そういう場をつくろうというケースは結構増えています。逆に、「せっかくオフィスにいても個人作業ばかりで、結局孤独感が生まれてしまう」という空間はあまり重要でなくて。ただ美しい空間をつくる、レイアウトを変えるだけではなく、そこに同僚や会社とのつながりを感じられる体験をどう創造していくか、それをお客さまと一緒に考えることが多いですね。

    ー場だけではなく、コンテンツが大事。ではどういったコンテンツが有効なのか?が気になります......。

    田中 これはコロナ前から注目されていたことでもありますが、「食」は強いですよね。たとえば、キッチンでどんな飲み物をつくっているのか、カフェスペースのコーヒーの味が変わったとか、みんなの共通の関心ごとである「食」が、会話のきっかけになったり。

    ーたしかに、コーヒーがドリップされるまでのちょっとした間(ま)なんかも、絶好の雑談タイミングだったりもしますよね。

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    田中 ほかの例ですと、「知」の共有ですね。たとえば、会社の共有書籍を活用するのも面白いと思います。これは、ベルリンのIXDSという会社で実践されているものですが、オフィスの書棚に置いてある本の感想を社員間で共有する仕組みがあるんです。それぞれの本に、それを読んださまざまな社員の感想が付箋に書かれて貼ってある。「自分はこう感じたけど、あの人はこんなことを感じたんだ!」って相手の思想を少し知ることができれば、話しかけやすくなりますよね。

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    ▲コクヨが運営する「THE CAMPUS」の共有スペースにある本棚の例。会話のきっかけになりそうな「旅行」をテーマとした棚があったり、デザイン、アイデア関係の書籍、コミュニケーションに関する書籍もラインナップ。

    ー田中さんが今年1月に発刊されたレポート『WORK VIEW 2021 ~ポストパンデミックの仕事観~』でも、オフィスの利用目的がこれまでの「個人作業中心」から、雑談などの「コミュニケーション中心」に変化したという内容も印象的でした。

    田中 そうですね、リモートワークの浸透によって、「これまでオフィスの多くを占めていた個人作業はオフィス外でも行える」とワーカーは認知したようです。一方で、雑談や相談など、対面によって充実するコミュニケーションをオフィスに求める傾向が強まっています。

    人々の間で雑談の欲求が高まっているのは、今年「clubhouse」が流行ったことからも見てとれますよね。ただし、雑談って偶然起こるから楽しいもので、「雑談をしにオフィスに行きましょう」と強要されるのは少し違う気がしていて。だから、前提に「オフィスに行ったら健康的に働ける」とか「仕事がはかどる」という動機があって、結果的にそこで同僚や上司と出会って雑談をする。そして、あの人と話せてよかったな、また話したいなと思える体験も記憶されて、また出社する動機になる。そんな好循環ができあがるのが理想的ですよね。

    ただ、カジュアルな会話はすべて偶然に任せようというのは、乱暴でもあります。たとえば、この時期の新入社員や転職者って、入社後すぐリモートワークで、仕事仲間とコミュニケーションをとるのがすごく難しいじゃないですか。

    ―そうですね......。同期の顔も知らない、なんて話を聞くこともあります。

    田中 そんな状況だとオフィスで誰からも声をかけられず孤立してしまうし、かといって面識のないベテラン社員にいきなり話しかけるのって精神的にハードルが高いですよね。だから、ベテラン社員から、オフィスやランチで会おうと計画したり、細やかに声をかける勇気が一層大切なのではないかと。そういった勇気を後押しするのも、仕事以外の共通体験なんじゃないかと思うんです。新人も、仕事以外のさまざまなフィールドで、ネットワークを築けますし。

    ―その媒介としてDAYS OFFICEの家具が役に立ったらいいなと思います!

    「働く人」から、これからの会社のあり方を紐解く

    ーところでこの『WORK VIEW』ですが、どんなきっかけで作成されたんですか?

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    田中 そもそもは、働き方設計への疑問がはじまりでした。というのも、働き方を設計するとき、職種や年代といった人の表面的な属性で考えることが多かったのですが、同じチームにいても考え方やスタイルって、結構違くないかと。私自身、「若いから」とか「男だから」と言われることに違和感がありました。そこで、価値観やモチベーションなど働く人の内面に焦点を当てて研究し始めたのがきっかけです。

    加えて、社会的に「いい会社」の定義が徐々に変わってきたこともきっかけとなりました。たとえば、会社の評価にESGの観点が盛り込まれたことなど、従業員・社会・地球の健康に貢献することが「いい会社」であると。なので、個人的にも社会的にも「働く人の本質」から「働く環境」を再定義したいと、研究を続けています。

    そして今回、コロナ禍で働く環境が急激に変化したことを受けて、働く人の内面の変化をつかむために、レポートを制作しました。

    ーレポートを読んで、リモートワークの頻度と体験充足度の相関についての調査がとくに興味深かったです。週5日出社だけ、在宅だけの人よりも、出社と在宅をブレンドした働き方のほうが、充足度が高いという。

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    田中 レポートでは「働く」を充足する11個の体験を明らかにしたのですが、いずれの体験に対しても、オフィス出社と在宅勤務をブレンドして働く人のほうが充足度が高いという結果になりました。これは、「出社するよさ」と「在宅のよさ」を適度に享受できることが理由だろうと考察しています。つまり、出社によって同僚とのつながりや会社の空気を感じられ、在宅によって誰にも邪魔されず個人作業に集中できる。そのバランスが、働くことを充足させるのではないか、と考えられます。

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    ▲現在、在宅でご家族の介護をしながら働く田中さん。インタビューはリモートで実施しました。

    ー今回のレポート、作成されてみていかがでしたか?

    田中 実は今回のレポート、結構孤独につくっていたんですよ(笑)。レポートには「苦楽を共にできる人は多いほうがいい」という要素を随所に盛り込んでいるのですが、たまに上司や同僚に相談したときに「チームっていいなぁ...」って私自身が一番実感した結果になりましたね(笑)。

    後編は、田中さん自身の働き方について、お話をお聞きします!

    『WORK VIEW 2021 ~ポストパンデミックの仕事観~』の詳しい内容は、
    こちらからダウンロードしてご覧ください。

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