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COLUMN

「働く人」から未来のオフィスを考える【後編】ワークスタイル研究所 田中康寛さんインタビュー

<仕事も趣味も、「人」への関心がモチベーションに。家族の介護を通じて感じた、
これからの理想の働き方とは?>

こんにちは! GOOD WORK DAYS.編集部です。

前回に引き続き、「ワークスタイル研究所」の研究員、田中康寛さんのインタビューをお届けします。

実は田中さん、元「DAYS OFFICE」チームメンバーの一人。本コラム編集メンバーも、一緒に働いていた時期もあったんです!
現在は、ご家族の介護をしながら働く様子を、『介護と働く』と題して個人noteにも綴られています。そこで今回は、そんな田中さん自身にフォーカスし、彼の働き方や考え方について、お話を伺いました。

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プロフィール
田中 康寛さん:2013年コクヨ株式会社入社。オフィス家具の商品企画・マーケティングを担当した後、2016年より働き方の研究・コンサルティング活動に従事。国内外のワークスタイルリサーチ、ワーカーの価値観調査などに携わっている。(note:https://note.com/tanakaya444

【目次】

    イスの企画担当から「働き方」の研究者に


    ―まずは、田中さんのバックグラウンドを改めて伺っていいですか?

    田中 はい。学生時代はUXや人間工学分野で研究をしており、卒業後はイスの設計をしたいと考えていました。

    なぜイスかというと......、イスは、一日のなかで身体に触れている時間が長いですよね。その時間が心地よいものであれば、人は日々を幸せに過ごせるのではないか、と思っていたんです。

    そんなとき、たまたまコクヨのインターンに参加したところ、イスも手掛けられるということを知り、入社しました。

    ―そうなんですね。入社後はどんなお仕事をされていたんですか?

    田中 入社後はオフィスチェアの企画担当になりました。もともとこの仕事を望んでいたので仕事自体はとても楽しかったのですが、徐々にイスだけでなく「働き方」全体から幸せを考えたいという思いが芽生えてきたんです。

    それから、いくつかプロジェクトを経験するなかで、もっと「人」を探究して働き方を考えたいと思うようになりました。ワーカーが持つ欲求から働き方を設計するフレームをつくりたいと提案するようになって。

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    田中 そんなことをいろいろな場面で話していたからか、運良く「ワークスタイル研究所」という働き方をリサーチする部隊に異動することになり、現在に至ります。

    田中さんの現在の仕事内容については、前編をどうぞ→<

    「介護」と「働く」を両立させて、どちらも豊かに


    ―前編でも少し触れましたが、今年からご家族の介護をされていますよね。

    田中 はい。昨年の夏に父が倒れて入院し、今年2月から在宅介護になりました。七段階ある介護レベルのうちの一番重い状態で、寝たきりです。だから24時間体制での介助が必要で、いまは母と交代で父を診ています。

    スクショ
    田中さんの個人note。『介護と働く』のサブテーマで、介護の状況、介護を通じて感じたこと綴られています。


    ―予想もしない出来事だったと思います。現状をどのように感じていますか?

    田中 率直に、リモートワークができてよかったな、と。毎朝はやく出社して、夜遅くに帰宅して深夜まで父の面倒を見て、という生活は難しかっただろうと思います。

    だから、コロナの影響でリモートワークが当たり前になったいまの環境は、ある意味ありがたかったですね。

    ―奇しくも、介護による自身の環境の変化と、コロナによる世の中の変化が同時期に起きた、と。

    田中 はい。これまでも育児・介護ワーカー向けのリモートワークは会社の制度としてはありましたが、機能していたかというと不十分だったように思います。

    コロナ以前は会社に出社するのが当たり前で、制度としてリモートワークを活用できる身でも、そういった空気を感じ取って結局出社しなくてはいけなくなる。そして、育児・介護ワーカーは分刻みでワークとライフを行き来することになり、苦しさが増していたわけですが、私自身そのことを完全には共感しきれていなかったのだと今では感じています。

    恥ずかしながら、いざ自分が介護をする立場になってみて、ようやく理解しきれたわけです。育児や介護をしている人にとって、ワークとライフの時間をカスタムしやすいリモートワークは本当に必要。今回は、それを強く実感しました。

    ―たしかに。みんなもリモートなら精神的負荷は少ないですし、いまは理解を示してもらいやすいかもしれないですね。

    田中 コロナによって良くも悪くもさまざまなことが変化して、日本人の価値観も変わり始めました。たとえば、男性でも育休を取る人が増えていること。リモートワークの件と近いですが、今までの固定観念がいい意味で崩れて、少しずつ多様性が受け入れられている兆しですよね。

    ―いまはどんなことを目標にお仕事をされていますか?

    田中
     「介護」と「働く」を両立させながら、どちらも豊かにしたいと考えています。

    介護をしながらでも仕事のクオリティは上げていきたいし、一方で、父との限られた時間も大切にしたい。そのためには、きっとリモートワークという枠組みだけではない、もっと何か別の要素もあるはず。そこを探っていきたいと考えていますね。

    ―そうなんですね。「介護と働く」の両立だけでも大変そうだと想像してしまいますが...。田中さんは趣味も多いですし、以前は飲み会など社交の時間も大切にされていましたよね。時間はどのようにやりくりしているのですか?

    田中 偉そうに聞こえたらごめんなさい(笑)、そこは自分のモチベーションで優先順位を決めていました。

    たとえば仕事で「いまはこの企画に注力したい」という状況であれば、それを第一優先としてスケジュールに落とし込み、周囲にも共有しておく。逆に「趣味や副業をめちゃくちゃ頑張りたい」という状況なら、残業はしないように本業の仕事量をあらかじめ決める。とはいえ時間は限られているので、平日にプライベートの時間を増やし、休日に仕事を移すなど、7日間をフルに使ってやりたいことを散りばめるイメージですね。一日モチベーションが上がらないことで占められていたら、きついじゃないですか。(苦笑)。

    ―そうだったんですね。

    田中
     仕事にしても、趣味や副業にしても、「これをやりたい、これを追求したい」というモチベーションがあることが、豊かな生活につながっているように感じます。給料が支払われているからとか、重要度が高いからという義務感だけで仕事をするよりも、自分の欲求も満たせたほうが、結果的に生産性も上がるし、一番効率的な気がします。もちろん「やりたいことだけやる」のは理想論ではありますが...。

    ―なかなか難しそうですね。

    田中
     もちろん、「やらなきゃいけないこと」も当然ありますよね。いまは介護で仕事の時間が限られていることもあって、「やりたい」よりも「やらなきゃ」の比率が増えていますけど。

    仕事も介護も、趣味も副業も全部全力でやりたい、という思いがあったのですが、体力的にも時間的にも厳しいので、どれかを諦めなければいけない。それで、いまは副業をやめています。

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    田中さんが長く続けている趣味の一つ、「歴史」。「史実をただ覚えるのは好きではなくて、偉人の生き方に興味があるんです。ナポレオンはどんな人生を歩んだのかとか、物語的に理解するのが面白くて」。仕事も趣味も、「人への興味」がモチベーションの一つということが伝わってきます。

    仕事とは? オフィスとは?

    ―田中さんにとって、仕事とは?オフィスとは?

    田中
     仕事は、社会や人とつながっている感覚を得られるものですね。とくにいまは介護で家にこもることが多いので、以前より社会的なつながりが薄れている気がして不安に感じることが多いんです。でも、仕事柄お客様の話を伺う機会も多いので、そのときに社会にコミットできている感覚を得られます。「働くって幸せだ」と思いますね。

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    オフィスは、その人とのつながりを直接的に感じられる場、でしょうか。僕個人はいまは完全リモートですが、やっぱりオフィスで直接話す時間や、共有できることが多いほど、仕事は楽しいですよね。

    ―ありがとうございました!

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