2021.5.25[ オフィス空間 ]

ビンテージビルを新たな技術でアップデートし
安心して集える環境を実現
~株式会社リクルート~

#Covid-19対策

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ビンテージビルを新たな技術でアップデートし安心して集える環境を実現 ~株式会社リクルート~ ビンテージビルを新たな技術でアップデートし安心して集える環境を実現 ~株式会社リクルート~

2021年4月、株式会社リクルート様は国内のグループ企業7社を吸収合併し、新たな組織体制でのスタートを切りました。同社は組織再編と同じタイミングで、九段のビンテージビルに新しいオフィスを開設しています。プロジェクトが始動した2020年2月以降、コロナ禍が続く中でどのような働き方を目指してオフィスを構築していったのか、お話を伺いました。

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総務・働き方変革
総務統括室
ワークプレイス統括部
西田 華乃 様
宮本 勇次 様

――そもそもオフィスの新設を決めた理由は?

西田:今回の組織再編で統合されたリクルートをはじめとした各グループ企業は、東京駅周辺から新橋エリアの賃貸ビルに入居していました。しかし別々に借りているのでコスト効率も良くなく、ビルによっては設備や環境が従業員のニーズとそぐわないという課題がありました。そこで、まとまった面積を確保できるビルをこれまでとは異なるロケーションに確保し、賃料の効率化をはかると共に、従業員の増員にも対応できるオフィスを構築しようと考えました。

宮本:最終的に選んだのは、九段にある築60年のビルでした。かつては大学施設として使用されていた低層の5棟からなる建物です。面積や賃料も私たちが求める条件を満たしていたうえ、靖国神社や皇居、武道館などが近接する緑豊かな環境も魅力的だったことが決め手になりました。

――ビンテージビルということで、ためらいはなかった?

西田:従来のオフィスとは全く異なる、低層で学校のような建物に入居できないだろうか、とずいぶん前から自分自身では考えていました。一般的には、築年数が経っていることはマイナス要因ととらえられやすいかもしれません。しかし、必要なテクノロジーを付加したりすることによって、ビルに新しい命を吹き込むことは可能です。今回は5棟まるごとお借りするということで、空間構築やテクノロジー導入においてさまざまなチャレンジをさせていただきました。例えば、建物に囲まれる中央の棟は外壁をガラス面とすることで明るさと他の棟との視線の交錯を生み出しています。一方で、開閉できる窓や丁寧に作られた内階段など、ビンテージビルならではの魅力的な設備をそのまま残している部分もあります。日本には竣工から時を経たビルがたくさんあります。今回のオフィス移転を一つの事例として、オフィス構築にビンテージビルを活用することのメリットを社会に発信したいという思いもありました。

――オフィス構築のポイントは?

西田:プロジェクトが動き出した2020年2月から、新型コロナウイルス感染拡大の動きが顕在化しました。そして1回目の緊急事態宣言をきっかけに、多くの従業員がリモートワークに踏み切りました。宣言解除もリモートワーク中心の傾向は続いています。そこで私たちは、新しいオフィスを構築するにあたって「安心安全な環境に集い、快適に働くことができる」を目的として掲げ、コロナ禍においても従業員が不安なく安心・安全に集えるオフィスを目指しました。

宮本:具体的には感染対策の取り組みをふんだんに取り入れています。例えば、間仕切り壁を極力つくらずに広い空間とすることで空気の循環を保ったり、オフィスに来てから共有部分のどこにも触れずに「タッチレス」で仕事ができるようなテクノロジーを導入しました。

西田:また、コミュニケーションやソロワークにとフリーに使える共有のスペースを随所に設けています。テラスや棟の間のスペースなどの屋外空間も取り込んでいます。

――感染対策以外で、広い空間をつくるメリットは?

西田:これまでのオフィスでは、レイアウト変更を行うたびに大量の廃材やゴミが出ていました。しかし、壁を最小限に抑えた広い空間を構築しておけば、家具を移動させるだけでレイアウトを変えることができ、環境負荷を低減できます。また、コロナ禍など今後の働き方が予測しづらい中で、スペースの使い方をいかようにも変えられる態勢をつくっておくことは重要という判断もありました。

――個室の会議室が最小限でも、支障は出ない?

宮本:個室会議室と全く同じ環境というわけではありませんが、打合せスペースはカーテンで空間を区切ったり、サウンドマスキングで会話漏れを軽減するなどして、議論に集中できるようにしています。

――「タッチレス」を実現するにあたって、具体的にどのようなテクノロジーを導入している?

宮本:今回、オフィス内の共用物に触れる機会を約90%削減しています。例えば、ほぼすべての出入り口を自動ドアにしています。ビンテージビルということで、建物の制限上、引戸タイプの自動ドアにできないところは、開き扉を電動で開ける装置で対応しました。既存のエレベーターには、手をかざすと反応するボタンを後付けしています。空調や照明の調整も、手をかざすだけで行うことができます。もともとこれらのテクノロジーは、利便性を高めるために検討していたものですが、コロナによって必要性が高まり導入に至りました。

西田:オフィス内には、レジのない自動決済システムを備えた無人コンビニエンスストアも設置しています。販売員の手に触れずに商品を購入し、決裁までできるので、これも「タッチレス」の一環だと考えています。

――新オフィス開設にあたって、「こんな働き方に変えていきたい」といったビジョンは?

西田:リクルート各社では、働き方改革の流れを受けて、2015年からリモートワークができる制度を整え、仕事の内容に応じて最適な場所を選んで働けるABW(Activity Based Working)を実践してきました。このような働き方は今後も継続していきますが、新オフィス開設きっかけに全面的にフリーアドレスを採用し、オフィスの中でも場所の選択肢をより豊富に設けることで、個人としてのABWからチームとしてのABWを目指しています。

宮本:例えば、「7Fの大空間"パノラマ"で100人規模のキックオフを開催→少人数のグループに分かれて会議スペースでミーティング→1人ずつに分かれてミーティングで上がった課題を考える」といった感じです。つまり、仕事のフェーズにあわせて適した場所を選んで働くということです。「ソロワークは自宅で」という考え方もありますが、前後の業務の関係や、自宅の作業環境などから、オフィスにも集中できるスペースがあったほうがよいと考えています。個人にとってもチームにとっても場所の選択肢が豊富に用意されているので、工夫次第でさまざまな働き方ができるのではないでしょうか。

――ICTに関して導入したことは

西田:今回、電源や通信回線といったコードの存在をオフィスから消す「コードケス」という取り組みにチャレンジしました。これは、オフィス利用時におけるワーカーの移動や動作などの効率化といった使い勝手の側面だけでなく、環境負荷や空気の循環への影響を鑑みてOAフロアを新たに敷設することの代替として導入しています。配線方法を工夫したり、一部無線化することによりおおむね実践できています。そのためにまとまった台数の大容量バッテリーも揃えました。

――感染症対策としてほかにオフィスに取り入れたことは?

西田:空気環境を測定できるシステムを導入しています。二酸化炭素濃度など大気の状態をデジタルデータとして見える化でき、一定値を超えると換気を促してくれます。濃度が高いということは「密になっている」可能性があるということなので、このシステムも感染回避に役立っています。

宮本:「タッチレス」という観点で言えば、実はトイレに設置する除菌クリーナーもタッチレスのものを導入予定です。あるメーカー様が、今回の移転にあたって新規開発して下さったものです。また、オフィス内にあるドリンクの自動販売機は取り出し口の蓋を除去しています。当たり前についているものだと思っていましたが、屋内に設置する分には不要です。ちょっとしたことですが接触の機会を減らすことが出来ます。

――社員の心身の健康に向けた取り組みは?

西田:オフィスの一角に、更衣室やシャワールームを備えたランニングステーションを設置しました。皇居周辺はシティランナーに人気の高いランニングエリアです。リモートワークが増えると運動不足になりがちですが、オフィスに施設があれば、身体を動かすきっかけになるのでは、と思っています。

宮本:九段下のオフィスでは、社内の移動に内階段を利用する機会が増えたことも、地味ですが運動不足解消につながっていますね。また、窓から見える皇居や靖国神社の緑も、気持ちの切り替えに一役買っている気がします。従業員の間でも、最上階からの眺望はとても好評です。

西田:また、オールジェンダーに対するケアの観点から性別に関わらず利用できる「みんなのトイレ」を設置しています。

――今後の働き方はどうなっていく?

西田:日本において歴史上、これほど経営者が働き方やオフィスのことを真剣に考えたことはなかったのではないでしょうか。コロナ以降、リクルートでもリモートワークで働く人が増え、現在の出社率は2割程度です。新オフィス開設によって従業員1人あたり面積が増えたことから、今後はひとまず5割程度を想定しています。とはいっても、コロナ前のような「全員が同じ時間に出社して働く」といったスタイルが復活することはないでしょう。その状況の中でオフィスに強く求められるのが「集まる」という機能です。

宮本:私たちのオフィスも、リクルートグループ全体の拠点として開放しており、他のオフィスを拠点とするグループ各社の従業員も自由に使うことができます。距離は近いのですが東京駅周辺のオフィスからここに来ると、「ちょっとしたリゾート」の感覚にもなりますね。空間的にも開放感があることや、低層階で街の人たちの動きを感じられるこのオフィスで、組織をまたいだコミュニケーションが生まれることを期待しています。

――コロナが収束したとして、今後取り組みたいことは?

西田:社内やグループ企業だけでなく、社外パートナーとこのオフィスで共創活動を行ったり、地域を訪れる多様な方々と交流できる機会をつくっていくことが今後の目標です。九段という地域には学校がたくさんあり、研究職や学生の方も多数しています。多様な方々とコラボレートできる場になれば、と願っています。

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最上階のフリースペースからは、皇居や靖国神社の緑が一望できます。イベントなどでの使用を想定しています。

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全面ガラスとすることで光が差し込む食事スペース。

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レジのない自動決済システムを備えたオフィス内の無人コンビニエンスストア。

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食事やミーティング、ソロワークなど自由に使えるスペース。外部のテラスと同じレンガの床仕上げ。

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大容量モバイルバッテリーを活用して、配線を視界から消す「コードケス」を実現しているフレキシブルなミーティングスペース。

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集中ワークに適したソロスペース。他にもブースなど「こもり度」の異なる場を用意。

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感染対策の一環として、既存のエレベーターに後付けでタッチレスボタンを搭載。

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天井照明のスイッチもタッチレス対応。

今回は、株式会社リクルート様の取り組みをご紹介させていただきました。

他にも20201年間のデータでの振り返りから、1stプレイス、2ndプレイス、3rdプレイス各企業の実例、感染症やワークエンゲイジメントなどの有識者へのインタビューなどをまとめ、様々な視点から熟考と判断を「WORK TRANSFORMTION vol.3」にまとめました。ぜひご一読いただき、これからのオフィスづくりご検討にお役立てください。

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