2022.10. 4[ オフィス空間 ]

【オフィスのチカラ】オフィスと地域社会

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【オフィスのチカラ】オフィスと地域社会 【オフィスのチカラ】オフィスと地域社会

昨今オフィスは、ワーカーが「働く場」という役割だけでなく、地域社会との接点としての機能を持ちつつあります。以前から社会貢献の取り組みの一環として、企業がホールやミュージアム、運動施設などを設置する動きはありましたが、専門施設としてオフィスや工場とは別に地域社会との接点機能をもつことが多かったのではないでしょうか。近年、その役割をオフィスなどの「働く場」に持たせ、企業の内と外を結びつけるハブとして活用する事例が増えてきています。今回は地域社会との接点としての「場」で具体的にどんなものを設置しているのか、それを設けることでどんなメリットがあるのかについてご紹介していきます。

地域社会のための施設の種類

企業が、地域社会への貢献を目的として設置・提供する施設やスペースには、大きく分けて次の5つがあります。

社会貢献のための専用施設

社会貢献を目的とした一般的な専用施設。例えば、ホールやミュージアムなどの文化施設や体育館やグラウンド、テニスコート等のスポーツ施設です。社員用の福利厚生施設を一般にも開放している場合もあります。

企業施設に併設する専用施設

一般の方が利用することを想定してオフィス施設内に飲食店やショップを開いたり、ラウンジや広場を開放する場合です。テナントオフィスビルでは1階や地下に飲食店などが入っていることは珍しくありませんが、自社ビルでの取り組みはあまり見られなかったのではないでしょうか。コクヨの品川オフィス「THECAMPUS」も「街に開く」をコンセプトとしてオフィスビルの一部にパブリックエリアを設置し、広場やカフェ、ショップなどを利用することができます。「働く場」での地域との接点ということでは工場見学施設もこの考え方に近いといえます。

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コクヨ品川オフィス「THE CAMPUS」
画像©ナカサ&パートナーズ

企業施設の一般開放

社員のためにオフィスに設置したスペースの一部を一般利用としても開放するパターンです。社員食堂やカフェの一般開放や、一部スペースをコワーキングスペースとして使えるようにするなどの例があります。自社ビルの1階の施設に限らず、テナントビルでもスペースを開放するケースもあります。また、常時開放するのではなく、地域向けのイベント時などに一般の方が入れるようにする場合もあります。

企業施設の緊急時の開放

地震や水害などの緊急時に避難場所や防災備蓄として利用できるよう、ホールや会議室などの企業内施設の開放を想定した設計にしている企業もあります。自治体などと地域防災協定を結び、日頃から防災訓練などに合同で取り組んでいる企業もあります。

企業活動と地域社会との融合

以前は、工場見学を除いては社会貢献のための専門施設を「働く場」とは関係のないところに設けることが多かったのですが、オフィスを一般開放施設に近づけることで、社内にいながらワーカーと地域社会との接点を増やす企業が増えています。

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■資生堂グローバルイノベーションセンターの「S/PARKBeautyBar」

研究員が一般のお客様の肌を解析し、自分だけのスキンケア(化粧水・乳液)をその場でつくってもらえるパーソナライズスキンケアサービスを実施しています。

■キユーピー仙川キユーポート

建物内には企業ミュージアムのほかに食育に力を入れる認証保育所もあり、社員だけでなく地域の方も利用できます。

■ヤフー株式会社八戸センター

プログラミング学習企画の地域格差解消のため、施設内で小学生向けプログラミング体験教室を開催(現在はコロナの影響で休止中)するなど、職業体験の機会を提供する事例も。また、育児用品等を販売するピジョン株式会社では、社屋内の授乳・搾乳スペースを近隣に勤務・居住する方にも開放しています。

このように、多くの企業が地域の人と接点を持つための施設やイベントを取り入れていることがわかります。

地域社会と接点を持つことで期待されるメリット

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オフィスを外に開くことで期待できる効果には、以下のように様々なものが考えられます。

企業の社会貢献によるイメージ向上とPR

近隣住民のニーズに応えるサービスの提供や文化・スポーツの振興への貢献などの姿勢に共感して社会的評価が上がるなど、企業のブランドイメージ向上の効果が期待できます。企業の姿勢や価値観、製品やサービスを地域社会に対して発信する情報発信メディアとしての側面もあります。また地域の方にとっても、製品やワーカーと接する機会が増えることで、その企業に親しみを感じるようになることでしょう。

多様な価値観・ニーズを知ることにつながる

ショールームの場合は自社商品・サービスにすでに関心がある方が来場するケースが多いのですが、オフィスに設けたカフェや食堂などを利用される方の場合は必ずしもそうとは限りません。そのため「働く場」に接点を設けることで、社員がより一般的なエンドユーザーのリアルな感覚に触れる貴重な場となるかもしれません。自社のワーカーとは異なる多様な価値観やニーズに触れることは、商品開発や販売促進をしていく上でも欠かせない機会となるでしょう。

地域自体の存在価値を高める

自社の取り組みを起点に、地域自体が活性化され存在価値を高めることは、地域社会へのメリットはもとより自社にとっても有効です。交流が生まれ、街の魅力が高まることでより一層、多様な方を集める機会となり、その中でより自社との関わりを深く持ちたいという方とのつながりも生み出されるかもしれません。

富山県の砺波工業株式会社では地域貢献の一環として、砺波市と指定避難場所としての協定を締結。エントランスホールではプログラミング教室やコンサートなどを開催しています。また、大正時代から続く街の一大イベントである「夜高祭り」の際に、行灯の休み所として場所を提供することを想定して社屋を設計しています。

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まとめ

地域社会に対して企業が「場」を提供することのメリットは他にもまだまだありそうです。セキュリティに配慮し動線を工夫すれば、自社ビルでなくても地域との接点となるスペースを持つことは実現可能なはず。まずは自社の持つノウハウを活用した地域社会に向けてのイベントなどの実施などから検討してみませんか。

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