テレワークとABW

第9回:テレワークとABW、最大の違いは?

新しい働き方として注目されるABWとテレワークを比較しながら、「自社に導入するならどちらのスタイルがよいか」「オフィスや自宅以外での業務にあたってどんな場所を用意したらよいか」について解説します。

テレワークとABW、最大の違いは?

――近年、働き方改革が進められる中で、新しいワークスタイルとして「ABW」という考え方が注目されていますが、ABWとはどんな働き方なのですか?

ABWとはActivity Based Workingの略で、業務の内容や気分に応じて時間・場所を自分で選んで働けるスタイルです。

――そう聞くと、テレワークとABWは似ているような感じがします。

確かに、最適な場所で働けるという点はテレワークと同じですね。ただ、テレワークは定められた就業時刻に働くのが基本ですが、ABWはいつでも最適な時間に働くことができます。1か月など定められた期間内で決められている総労働時間を満たせばよいので、例えば「今日は9~12時と、15~18時に仕事をしよう」といった感じで、日ごとに自分で働く時間を決められるわけです。

――テレワークと比べてABWの方が、より自由度が高いということですね。

その通りです。ABWでは、自分が最も快適でパフォーマンスを発揮できる時間と場所を選択します。ですからテレワークに比べて、より自律的な働き方が求められるのです。

自社に導入するならテレワークとABWのどちらがよい?

――生産性アップに向けてテレワークを導入しようと考えてきましたが、ABWのメリットを知るにつれて、ABWの方により魅力を感じるようになりました。テレワークとABWでは、どちらがお勧めですか?

場所だけでなく時間も自分に最適な選択をして働くABWの方が、テレワークと比べて生産性がより上がると期待できます。ただし、労働時間の制約を取り払うとなると、労務管理体制や勤怠管理の仕組みなどを変える必要が出てきます。企業によっては「そこまでドラスティックな変革は求めていない」という場合もあるので、働き方を変えることで何を実現したいのかを再確認し、テレワークとABWのどちらを選ぶか決めるとよいでしょう。

――ABWに興味はあるのですが、急に制度を大幅に変えるのが難しい場合はどうしたらよいでしょうか?

ABWは本来、「時間と場所を自由に選択できるワークスタイル」のことです。ただし狭義では、「オフィス内で好きな場所を選んで働けるスタイル」を指すこともあります。ですから企業様とご相談しながら、場合によってはテレワークの導入前に「狭義のABW」をお勧めすることもあります。この場合従業員は、ソロワークができる集中エリアや、サッとミーティングができるオフィスラウンジなど、1人ひとりが業務の内容に合わせて社内のスペースを選び、仕事をします。

――この働き方だと、上司も部下も「離れた場所でのコミュニケーション」を無理なく体感できそうです。

しかも同じオフィスにいるとわかっていれば、緊急で直接話したい用事ができたときも安心です。この状態に慣れてから、テレワーク、そして場所と時間を選択できるABWへと段階的に働き方を変えていくのも一つの方法ではないでしょうか。

テレワークやABWで働くとき自宅とオフィス以外でお勧めの場所は?

――テレワークも広義のABWも、オフィスと自宅以外に仕事ができる場としてコワーキングスペースを会社側で用意した方がよいでしょうか?

テレワークの場合は、導入の目的によってコワーキングスペースを用意すべきかどうかは変わってきます。例えば「育児・介護中の従業員が働ける環境づくり」が目的なら、自宅でテレワークをする人が多いため、コワーキングスペースが必要とは限りません。一方で、「営業部門の効率アップ」を目指してテレワークを取り入れるなら、コワーキングスペースという場所の選択肢もあった方がよいでしょう。取引先からわざわざオフィスや自宅に戻らずコワーキングスペースを利用してテレワークを行うことで、隙間時間を有効に活用することが可能となり、効率的だからです。

――ABWの場合はどうですか?

ABWは、自分の業務に合わせて場所と時間を選ぶ働き方です。仕事のパフォーマンスを最大限に発揮するためには、働く場所の選択肢は多い方がよいと考えられます。オフィスと自宅以外に、コワーキングスペースを活用できるよう、会社側で制度を整えたいところです。

――外出先というとカフェで仕事をすることも考えられますが、テレワークやABWにおいてコワーキングスペースで働くメリットは何ですか?

カフェなど不特定多数の人が出入りする場所だと、テレワークやABWで仕事をしているときにモニターをのぞき込まれて、機密情報が流出するといったリスクもあります。その点で法人契約ができるコワーキングスペースなら、セキュリティ面でも安心して仕事ができます。ABWもしくはテレワークを導入する場合は、働く場所の選択肢としてコワーキングスペースを検討してみるとよいでしょう。

このコラムのまとめ
  • テレワークは「オフィス以外の場所でも仕事ができるスタイル」を指し、ABWは「場所と時間を自由に選択できるスタイル」を指す。
  • ABWとテレワークのどちらを導入するかは、目的や企業体質をみながら検討する。まずはオフィス内で自由に場所を選んで働く「狭義のABW」をトライアルで導入する方法もある。
  • ABWを導入するなら、働く場所の選択肢としてコワーキングプレイスを用意するのが望ましい。テレワークの場合は、「企業として何を目指すか」に応じてコワーキングスペースの活用も検討する。
吉田大地(Yoshida Daichi)

コクヨ株式会社 ファニチャー事業本部/ワークスタイルイノベーション部/ワークスタイルコンサルタント
ITコンサルタントとして、ITをベースに複数のクライアント企業の課題解決を手掛ける。現在はワークスタイルコンサルタントとして、空間、働き方の両面から、働く人1人ひとりの感性を刺激し、創造性を発揮するオフィス環境の構築を支援中。働く人の能力を発揮させ、互いの知識・情報を共有し、交流を活性化させるオフィス環境の実現をサポート。

2019.12.16
作成/コクヨ

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