テレワークを運用するにあたって定めておきたい運用ルールやガイドラインの項目と、従業員への周知方法を紹介します。
テレワークの運用ルールやガイドラインで定めるべき項目は?
――テレワーク導入のための環境づくりやツール類の準備が整ったら、すぐにテレワークをスタートできますか?
実際に取り組む前に、テレワークを実際に行う際の運用ルールやガイドラインを明確に策定しておくことが不可欠です。策定しておけば、従業員は「どこででもテレワークをしていいの?」「自分の部署ではテレワークを行うことが認められているの?」などと運用面で迷うことが少なく、効率的にテレワークを進めることができます。
――運用ルールやガイドラインは、どのような項目について策定したらよいでしょうか?
業務時間や場所、日数、対象者(どんなときに、誰がテレワークを行ってよいか)、勤怠報告の方法、セキュリティ上の遵守事項、費用(通信費や文具代、コワーキングスペースの利用料金などテレワークで発生する費用)を企業と個人のどちらが負担するか、といった項目は必ず決めましょう。
――それ以外に、運用していく際に見落としがちな項目はありますか?
基本的な項目を決めておいても、個々の対応で迷うところは必ず出てくるでしょう。その時々に応じて1つずつ運用ルールを決め、「FAQ(よくある質問)」として社内データベースで順次公開していくことをお勧めします。例えば「移動時間を勤務時間ととらえるか」は、企業によって考え方が異なるので、「営業先からコワーキングスペースまでの移動時間は勤務時間に含める」などと細かく規定していくことをお勧めします。
テレワーク業務はどのくらいの頻度から始めるのが適切?
――運用ルールやガイドラインの中で、特に注意したい項目はありますか?
テレワークを行う日数の規程については考慮が必要です。多くの企業ではテレワークを導入する際に、週1~2日からスタートするケースが多いようです。
――確かに、日数を決めておかないと、出社せずに毎日テレワークで働く従業員が出てきてしまいますね。
それだけではなく、週3日以上になると人事評価制度を現状のものから見直す必要が出てくる可能性があるからです。
――それはなぜですか?
テレワーク勤務が週の過半数になると、従業員を業務プロセスにより評価することが難しくなり、成果を重視して判断せざるを得なくなる傾向があります。そうなると、会社としての評価基準を変えなければならない場合が出てきます。
――評価基準を変えるとなると、制度も変えることになり、管理側に負荷がかかりますね。
その通りです。ですからテレワーク導入当初は、週1~2日と日数を区切ったり、テレワークを行ってよい曜日や日程を決めるなど、就業時間のうちテレワークの割合を多くても3~4割にとどめることをお勧めします。日数のルールは、テレワークが社内に浸透してきた時点で見直すとよいでしょう。
決めたルールはどんな方法で従業員に周知したらよい?
――テレワークに関する運用ルールやガイドラインは、従業員にどう浸透させればよいですか?
まずは決定した運用ルールやガイドラインをもとにテレワーク時の行動マニュアルを作成し、社内データベースで公開します。マニュアルを整備しておけば、新たに入社した従業員への周知も簡単に行えるようになります。
――従業員がいつでも運用ルールやガイドラインを確認できる環境を整えておくことが大切なのですね。
マニュアルを共有するだけでなく、運用ルールやガイドラインを共有するための説明会を定期的に開催して、直接周知することも必要です。マニュアルの公開だけだと、「マニュアルを見ていなくてテレワークを行うときのルールを知らなかった」というケースが出てくる可能性もあり、周知不足が原因となりセキュリティが脅かされる要因にもなります。必要に応じてテレワーク本格導入の際に、従業員1人ずつに向けて運用ルールに関する同意手続きを行うことも考えましょう。
- テレワークに取り組む際は、業務時間や場所、日数、対象者、セキュリティの遵守事項、費用などに関して運用ルールやガイドラインを決めておく。
- テレワークによる勤務は、週1~2日程度から始めるのが適切。テレワークで働く日が勤務日数の過半数を超えると人事評価制度に影響が出るので、導入からしばらくは3~4割で様子をみる。
- 決定した運用ルールやガイドラインはマニュアル化し、社内データベースで公開する。説明会を開催して周知をはかることも必要。
- 2019.12.16
- 作成/コクヨ