<あれ?この会社いい香り...。近頃、そんなオフィスが増えてませんか?>
こんにちは!GOOD WORK DAYS. 編集部です。
最近、オフィスのエントランスにアロマを導入する企業が増えています。訪れたときに素敵な香りがすると、その会社に対しても、なんだかいい印象を持ってしまいますよね。
そこで今回は、「心地いい空間」をつくる要素の一つ、「香り」がテーマ。コクヨともお取り組みいただいているアットアロマ株式会社さんに、「オフィスと香り」についてお話を伺いました。
前編はまず、「香りとは?」という基礎知識から、オフィスに香りを導入するメリットなどを教えていただきます。
【目次】
ー最初に、アットアロマさんのご紹介をお願いします。どのような経緯で始まった会社で、現在はどのような事業をされているのでしょうか。
武石:1998年に創業し、もともとは輸入雑貨などを扱っていましたが、そのなかで、弊社代表の片岡がオーストラリアでユーカリと出会ったことをきっかけに、2001年にアロマ事業がスタートしました。
ーユーカリがきっかけなんですね。ユーカリって、かなりスーッとした強い香りがありますよね。
武石:はい。ユーカリはオーストラリアの大多数を占める樹木で、500以上もの種類があるといわれています。ユーカリの魅力は、空気をクリーンに整えてくれるなど、さまざまな機能が備わっていることなんです。そんなユーカリのことを、私たちはよく「絵の具の白のようだ」と例えています。
ーユーカリは絵の具の白? 初めて聞く例えです。
武石:空間にユーカリの香りを広げると、まるで絵の具の白のように、ほかの香りに馴染み、香りの広がりを伸びやかにしてくれます。空間演出に使用する私たちのブレンドオイルには欠かせない存在で、多くの香りにユーカリをブレンドしています。
ーアットアロマさんのアロマオイルには欠かせない存在なんですね。
武石:はい。現在では、自社で開発している大空間用ディフューザーと併せて、『アロマで空間をデザインする』をコンセプトとした「香り空間のトータルコーディネート」をメイン事業にしています。BGMのように香りを届ける「BGA(バックグラウンドアロマ)」をキーワードに、これまでホテルや商業施設など、国内外約3,000か所を手掛けてきました。
ーアロマって「なんだかよさそう」というふんわりとした理解の方も多いと思うのですが、具体的にはどういったことなのでしょうか?
武石:はい。まず、ハーブなどの植物の芳香成分であるエッセンシャルオイル(精油)を使って、心と身体を健康にする自然療法のことを、「アロマ(=芳香)セラピー(=療法)」といいます。
オイルというとオリーブオイルなどを想像されると思いますが、そうではなくて、果物や植物を圧搾や水蒸気蒸留することで抽出されるエッセンスのことを指します。
わかりやすい例でいうと、オレンジの果肉をギューッと絞るとオレンジジュースになりますが、エッセンシャルオイルは、その周りにある果皮を絞ったもの。ミカンを手でむいたときに皮の表面からピッと汁が飛びますよね? あれがエッセンスです。
アロマセラピーで使用するオイルは天然100%であることが一番の特徴で、原料やその部位によって、香りの特徴や効果効能が変わってきます。
ー香りの分類ってどんなものがあるんですか?
武石:アロマには、以下のように大きく4つの分類があります。
「果実」オレンジ/レモン/グレープフルーツ
「花」 カモミール/イランイラン/ローズ
「葉」 ペパーミント/ユーカリ/ローズマリー
「木」 ヒノキ/サイプレス/サンダルウッド
(代表例)
「果実」や「花」は華やかで甘い香りが特徴で、気分を明るくしたり、リラックス効果が期待できます。一方で「葉」や「木」は、ミントのような清涼感のある香りや、ウッド系の落ち着いた印象が特徴です。
ー香りによって心地よくなったり、反対に不快になったりするのは、なぜなんですか?
武石:まず、香りは鼻先で嗅いでから0.2秒ほどで脳に到達するといわれていますが、「感じる脳」と呼ばれる大脳辺縁系に直接届きます。これは五感のなかでも嗅覚が唯一だといわれています。
ー「感じる脳」ですか。
武石:そうです。視覚などほかの感覚は「考える脳」と呼ばれる大脳新皮質に直接届くのですが、嗅覚だけは「感じる脳」を経由します。そうすると、それが何なのかを考える間もなく、好きか嫌いか、自分にとって必要か、あるいは危険かといった本能的な区別を瞬時に判断してしまうんです。
ーたしかに、不快なほうで例えると、傷んだ料理などは見た目ではわからなくても、ニオイを嗅ぐと一発で「危険だ」とわかりますね。
武石:大脳辺縁系は脳の中枢であり、記憶や喜怒哀楽といった感情に関わり、本能に基づく行動を支配する部位でもあります。
「ある香りを嗅ぐと昔の大切な人を思い出す」とか「おばあちゃんの家の匂いみたいで落ち着く」というように、自分の記憶の中にある「知っている香り」と結び付けて話すことが多いのも、こういうメカニズムなんです。
さらに、脳に入った香りの情報は、その後、免疫や内分泌調整を司る部位へと達するため、心身を整えることができるのです。
ーアットアロマさんはその「香り」で空間をデザインするということを事業とされているわけですが、これは具体的にはどういうことなんでしょう?
武石:はい、香りの持つ機能を活かして、感性に訴えかける空間づくりのことを「アロマ空間デザイン」といいます。大きくは「デザイン性の高い空間演出」と「より機能性に特化した演出」の二つの側面があります。
ーではまず、デザイン面の機能やメリットから教えてください。
武石:はい。デザイン面では、たとえばロビーやエントランスに香りを導入いただくことで、お客様への「おもてなし」の演出をすることができます。
また、ショールームなどでは、内装やインテリアなど環境に合わせて香りをコーディネートすることで、空間の質が高まり、「イメージアップ」にもつながります。
さらに、よりオリジナリティを出したい、よりお客様の記憶に残る演出をしたいという「ブランディング」を望まれる企業様には、オリジナルアロマもお作りしているんですよ。
ーなるほど。感情や記憶ごとデザインするみたいな。
武石:一方、機能面では、たとえばカフェスペースや喫煙スペースに「消臭」作用のある香りを入れて匂い対策をしたり、抗菌作用のある香りで「空気環境の改善」を行ったりと、心地いい空間づくりに効果が期待できます。
また、オフィスにリフレッシュやリラックス効果のある香りを取り入れていただくことで、コミュニケーションの増加やストレスの緩和など「働きやすい環境づくり」にも役立ちます。
ー導入する目的やメリットによって香りの選び方がかなり変わりそうですね。
武石:そうなんです。なので、まずは目的や場所、環境をしっかりヒアリングさせていただきます。そのうえで、オリジナルアロマの場合以外は、既存のオイル約100種のなかから最適な香りをご提案していますね。
ーそもそも、オフィスに香りを導入する企業さんが増えたのって、いつ頃からなのでしょうか? 何かきっかけはあったのですか?
村上:そうですね、やはり働き方改革の影響が大きいでしょうか。心地よく働ける空間づくりを各社の総務さんが意識されるようになって、そのなかで香りも取り入れてみよう、と。
導入されるのは、エントランスが多いです。お客様へのおもてなしや、会社のイメージ作りといった目的がメインですね。あとはカフェスペースなど、飲食をする空間の消臭作用を求められることもあります。
ーオリジナルアロマはどうやって香りを作るのですか?
武石:そのブランドや企業を象徴する香りをお作りすることになるので、まずコンセプトや理念をヒアリングします。そこからキーワードをピックアップして、イメージに合う香りをご提案していきます。
たとえば「日本の伝統」を大事にされている企業様なら、原料にもこだわり、和精油であるヒバやヒノキの香りをブレンドしたり。
ーこの言葉ならこの香り、という共通認識を重ねていくんですね。
武石:そうです。ただ「いい香りですね」だけでは決められないので、ご要望やイメージに沿うよう、時間をかけてすり合わせていきます。
ーアロマ導入後、お客さまからはどんな反応がありますか?
村上:「集中力が上がる香りを導入したことで、気持ちの切り替えができて仕事がはかどった」ですとか、もちろんアロマだけが要因ではないとは思いますが、「欠勤率が下がった」というお声をいただいています。
ー印象的だった導入事例はありますか?
村上:あるIT企業様で、エントランス、打合せスペース、カフェスペース、と、ワンフロアの3か所に異なる香りを導入いただいたことがありました。
まずエントランスでは、清々しい空気を感じさせる、ヒノキやパインなどの「B12パインヒノキ」の香りで、爽やかにおもてなしをします。
その後、打合せスペースに移動すると、落ち着きのあるゆったりと深い森が広がるような「ディープブレス」という香りに包まれて、リラックスしながらミーティングを。
終わったらカフェペースへ行って、レモンやローズマリーなどの「S01 ウェイクアップ」の香りでリフレッシュしていただいてもいいですね。
ーひとつのオフィスでさまざまな香りがあるって、ストーリーがあって面白いですね!
村上:フリーアドレス制やABWの導入で、オフィスの中で働く場所を選べる企業様が増えているので、私たちもこの事例のように、場所ごとに印象の異なる香りをご提案するようにしているんです。
ー今後ますます、いろいろな場所でアロマを感じる機会が増えそうですね。
武石:最近は、駅や住宅のマンションエントランスといった、より身近で日常的な場所にもアロマを導入されることが増えてきました。これまで無香が当たり前だったパブリックな空間に香りをプラスすることで得られる心地よさといった、香りの作用に対する理解が高まっているのかなと感じます。
(後編につづく)