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本選びから見える、未来の潮流。【前編】-青山ブックセンター・ブックコンサルタントインタビュー

こんにちは、GOOD WORK DAYS.編集部です。今回は青山ブックセンターの、ブックコンサルタント佐野さん・須藤さんにお話をお聞きしました
実は、DAYS OFFICEでもオフィスのリニューアルや施工をご依頼された時に「棚に置く本どうしたらいいの?」と聞かれることも多いんです。そんな時、ご一緒に色々な本を提案してくれるのがこのお二方です!

ただただ本を選ぶだけでなく、企業に合わせて最適な本を選び、納品後もずっと最新の本を選んで運用してくれます。そんな本の専門家のお二方に、本選びから見える時代の流れや、すぐに試せる本棚を素敵に見せるコツ、はたまたお二方がオススメする本などを、お聞きしました。読めばきっともっと本が、本屋が好きになります!前後編でお楽しみください。

PROFILE(写真右から)
佐野正樹さん:ブックオフコーポレーション株式会社 新刊複合事業部 新刊グループ統括エリアマネージャー
須藤夕香さん:ブックオフコーポレーション株式会社 新刊複合事業部 青山ブックセンター 外商

【目次】

    ブックコンサルタント、改めてどんなお仕事なの?

    ーブックコンサルタントってまだまだ知らない方もいると思うのですが、どんなお仕事なんですか?

    佐野:基本的には、本屋です(笑)なんですが、私たちブックコンサルタントは、「本のある空間」を作る仕事です。普通の本屋さんってお店で待っているものですが、私たちは色々なスペースに合わせて、最適な本を選んで販売するということをしています。

    ー具体的には、どんな場所に本をお選びするんですか?

    佐野:少しだけ、私たちの仕事のはじまりをお話させてください。10年前くらいに、不動産デベロッパーから、マンションの共有部にライブラリーラウンジを作ることで、普段使っていない場所を活用したいというお話をいただいたんですね。

    ーライブラリーラウンジ!マンションに付いていたらちょっと住んでみたいですね。

    佐野:そうですよね。ひとつの売りにもなります。そして、そういうオープンなスペースがあることで、都心部マンションの希薄な近所づきあいのハブにもなるんです。そこで、共通の話題を提供するツールとして「本」をお選びして、納品するというのが私たちの仕事のはじまりでした。

    ー都心のマンションだと、ご近所付き合いってほとんどなかったりしますよね。

    佐野:そうですね。ちょうど当時、東日本大震災もありましたし、ご近所付き合いを見直すという世の中全体の流れもあったと思います。実際に納品してみたら、予想以上にご好評いただきまして。そこから、色々なご紹介などもあって、マンションだけでなくオフィスの共有スペースや宿泊施設・商業施設のスペースでも導入したい!という声をいただき、今に至っています。

    須藤:学校法人ですとか、病院からご依頼いただくことも多いです。今では、年間数十件以上の様々な施設に本を選んで、納品しています。

    ーそういった様々な施設に合わせて、どんな風に本を選んでいるんですか?

    須藤:まずは、お客様が何を求めて、どんな本が欲しいのかをヒアリングするところからプロジェクトがスタートします。自分たちの好きな本を入れるわけでなく、お客様の課題ありきで、本をお選びします。

    佐野:私たちは全てのクライアントに合わせて、フルカスタマイズ・フルオーダーメイドで本のラインナップを作っています。

    歴史とデータと感性と

    ー実際の本選びは、どのようにするんですか?かなりバランスも難しいと思いますが...

    佐野:青山ブックセンターは、皆様のおかげで40年以上の歴史のある本屋なんです。その歴史の中で埋もれないヒット本や、数少なくてもずーっと売れ続けている本をたくさんデータとして持っています。まずは、そういうデータを元にお選びするのが基本です。それに加えて青山ブックセンターは、表参道という、非常にクリエイティブで感性の鋭い人が集まる場所にあることがすごく重要なんです。そういう立地なので情報を発信する側のクリエイターやアーティストにもご利用いただけているんですね。ですから、新刊本などに関しても、全国ベストセラーとは違う本が売れていたりします。

    ー確かに、お店を訪れると、独自のラインナップがありますよね。

    佐野:お客様から店舗にいただくお問い合わせも独特なんですよね。例えば、全然売れてない本に関して、問い合わせのお電話が何本も続いたりします。すると、数ヶ月後にその本がベストセラーになることもあるんですよ。情報発信者の方が注目している本、これから売れそうな本の情報が、お店に集まるんです。データから選んだ書籍だけでなく、数字では判断できないような書籍の潮流を肌感覚で理解できるのが、書店を持っていることの強みです。

    須藤:スタッフ同士での、知識共有もすごく役に立っています。「最近読んだ本」や「こんな問い合わせあったよ」という、データからはわからない本のトレンドみたいなものが見えてくるんですよね。

    ーデータ+感性・肌感覚で独自の本のラインナップを作るんですね。

    佐野:そうです。実際に店舗の棚もそうなんですけど自分の趣味で本を選ぶのでなく「データをベースに、独自性を足してあげる」ということがとっても大事なんですよね。

    ーそれに加えて、お二人の感性でバランスをとっている?

    佐野:真面目な本と遊び・マニアックな本のバランスはすごく気を使っているポイントですね。マニアックな本・漫画などの遊びのある本がアイキャッチになって、他の書籍に興味を持っていただけることも多いので、きっかけとしてお入れするようにしています。その辺りのバランスは、私たちの感性によるものかもしれませんね。

    なぜ、今、本なのか?

    ー「本」って少しだけ時代に逆行している気もしていて。企業でもペーパーレスを推進していたり、それこそ今だと電子書籍とかもありますし...。

    佐野:おっしゃる通りです。世の中全体の流れでも、2004年を分岐点として、その後スマホの普及もあり、書籍売り上げは下がっているんですね。毎年、多くの書店が閉店している状況が続いています

    ーそんなに閉店しているんですね...。

    佐野:「情報として求められていた本・雑誌」というのは、インターネットに移行してしまいました。ネットの方が情報を取り扱うスピードも早いですしね。だから書籍は時代遅れというのもわかります。リーマンショック以降、オフィスでも経費削減でペーパーレスを推進していたり、世の中全体も断捨離ブームなどでフィジカルなモノを持たないことを良しとする傾向があります。

    ー確かに、「ミニマリスト」みたいな、なんとなく「ものを持たない」という世の中になってきてますよね。

    佐野:そうですよね。例えば、居住空間とかにもその影響はあると思っていて。今ってリビングが広いお部屋、増えてますよね。その代わりになくなったのって、「お父さんの書斎」だったりするんですよ。

    ー「書斎」ってなんか昭和なイメージすらありますもんね。

    佐野:そんな風に、街から本屋さんがなくなり、自宅でも整理され、オフィスにも置いていない。ここ10~15年くらいで「本」が生活シーンからなくなってきていました。

    ー確かに、本を話題にすることが減った時期があったかもしれませんね。

    佐野:そうやって、本の存在感が薄くなってきたところで、みんな気がついたんですよね。「あれ?インターネットで自分に必要な情報を得るだけでいいんだっけ?」って。

    ーそこでもう一度本に注目が集まった?

    佐野:そう。本、そして本屋に注目する人が増えてきてるんです。本屋さんって、自分が知らないことと出会える場所なんだって考えてもらえたんです。

    ー確かに、書棚も平置きの棚も、毎日のようにアップデートされるし、訪れるだけで、新しい情報がたくさんあります。

    佐野:おっしゃる通り、売り場を見てると「今」が見える。そして、その街や地域のことがみえる。何より「自分自身が何に興味を持ってるのか」がすごく良く見えるんですよね。そう思って、本と本屋さんをご利用いただける人がまた少しずつ増えてきたんです。そういう時代の空気の中でブックコンサルタントという仕事への理解が広がってきたと思います。

    「本」は、たくさんの人の信頼でできている。

    ー実際、「本」ってお二方にとってどういうものなんですか?

    須藤:本って、基本的には一人の方が人生をかけて書いたようなものが多いんですね。だから、インターネットに特徴的な「情報検索性の高さ」とは違う訴求力があると思っています。自分と向き合うというか、そういう時間の過ごし方に本はとても向いていると思います。だからこそ、今ゆっくりと時間をかけて読みたい「古典」と呼ばれるような哲学書が、少しずつ売れてきているんじゃないかな。バランスよく付き合っていくことが重要かなって思います。

    佐野:あとは、「本」ができるまでの関わる人数にも注目して欲しいですね。そこには、編集・デザイン・印刷、私たちのような書店にいたるまで様々な人が関わっています。本には「信頼」があると思います。その信頼の塊を買うということで、「本」は見直され始めていると思います。

    須藤:一冊の本を親子やコミュニティで読み聞かせしたりできるのも、本の魅力のひとつですよね。実際そういう観点でも本は見直されていると思います。

    (後半に続きます!)

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