2021.12.23

「フェーズフリー発想」の空間づくりによる日常時の生産性向上を検証
豊島区人事課会議室における実証実験<中間報告>

行政デジタル化による住民サービス向上と並行して、多くの自治体が取り組んでいる職員の働き方改革。先進自治体でテレワークやサテライトオフィスといった働き方の選択肢が広がりつつある一方で、過渡期である現在はそうした働き方が全庁的な導入にまで至っていない、あるいは業務特性上そうした働き方が難しいといった状況も多くあります。
そのため執務室の環境改善は現在でも重要であり、執務室において検証または検証を通じた意識醸成を行うことは、働き方改革を促す上で非常に有効な手段です。

コクヨは豊島区との共同研究として、豊島区総務部人事課執務室内の会議室における実証実験を2021年10月に開始しました。約半年間の検証期間において、会議室の利用実態調査を通じて人事課の業務特性や職員の働き方を把握し、執務環境の最適化を目的とした仮説検証を実施。生産性向上を目指すとともに、今後の働き方改革推進に必要な知見の蓄積を行います。

今回は、実証実験の概要と検証から約2カ月の時点で見えてきた定量・定性データを、仮説とともに中間報告としてまとめました。

<調査概要>

実施時期
2021年10月~2022年3月
検証内容

豊島区人事課(職員数36名)執務室に隣接する定員10名の会議室において、家具の入れ替えと2分割運用を実施。利用目的や人数、時間等の定量データと職員アンケートによる定性データ(n=33)から、利用実態や意識の変化を把握する。

導入家具 コンパクトテーブル MULTIS<マルティス>10台、ホワイトボード機能付きパネル GRABIS<グラビス>4台 他

2分割運用による定時外利用の減少と職員意識の変化

今回の実証実験では、少人数利用の比率が高いという予測に基づき1部屋を2分割する運用を開始しました。10月~11月の定量データを昨年同時期と比較したところ、定時外(始業前及び終業後)の利用時間が10月は44%、11月は45%減少したことが分かりました(図1)。これは2分割したことで同時利用が可能になり、予約がとりやすくなったためと考えられます。また、今回の実験は職員の意識変化にも効果が見られたことが分かりました。88%の職員が今回の実証実験を機に「以前に比べ予約時間の適正化を意識するようになった」と回答しており(図2)、実際に予約1回あたりの平均利用時間は昨年同時期に比べ減少傾向がみられています(図3)。こうした意識の変化も効率的な会議室運用に効果をもたらし、定時外利用の大幅削減につながったと推察できます。

「作業」目的を伴う会議室利用の効率改善

業務特性上、人事課では情報セキュリティ確保のため「作業」目的でも会議室を利用するケースが多く発生します。これまでは大きなスペースを必要としない「作業」であっても1部屋を予約していたため、他の予約との調整等が日常的に発生していました。2部屋運用導入後では、「作業」の多くが片側利用で予約されていることが分かりました(図4)。会議に関しては情報セキュリティの必要な場合や大人数の場合は両側予約(占有)、それ以外の場合は片側予約、といった使い分けが行われており、会議室の効率的な運用に対する意識が素早く浸透したことがうかがえます。
一方で、1つの空間をホワイトボード機能付きパネル グラビスで仕切った環境については「反対側への音漏れに気を遣う」等の意見がでており、実際に「会議」目的の同時利用はあまり行われていないことが分かっています。

家具の置き換えによる業務上・心理上の効果

大人数会議では1部屋にして使用

面接時はレイアウトを大きく変更

今回の実証実験では、従前の3人用会議テーブル(W1,800mm×D450mm)からコンパクトテーブル マルティス(W800×D600)への置き換えを実施。また、部屋の中央にホワイトボード機能付きパネル グラビスを設置しました。大人数会議の際はグラビスを壁面へ移動し1部屋として利用する、スペースが必要なイベント時にはマルティスのレイアウト変更を行うといった運用が日常的に行われています。1人用テーブルへの置き換えにより、回答者の過半数が「作業面が広くなった」「一人当たりのスペースが明確になった」などの効果を感じていることが分かりました(図6)。併せて、家具の多くが有彩色や木調の表面材になったことで、居心地が良くなった等の心理的な効果も表れています(図7)。

実証実験後半に向けて

今回の定量・定性データ分析の結果を踏まえ、実証実験後半ではレイアウトの調整や運用の改善を図った上で更なる検証を行います。

(作成/コクヨ)

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