インタビュー
文部科学省
科学技術・学術政策局 人材政策課 課長 奥篤史氏
研究開発局 原子力課 課長補佐 滝沢翔平氏
(前 科学技術・学術政策局 人材政策課 課長補佐 )
科学技術・学術政策局 人材政策課 管理・経理係長 佐々木徹也氏
科学技術・学術政策局 人材政策課 次世代人材育成係 森澤祐介氏
科学技術・学術政策局 産業連携・地域振興課 統括係長 高山正行氏
科学技術・学術政策局 産業連携・地域振興課 拠点形成・地域振興室 本間ゆりか氏
大臣官房 省改革推進・コンプライアンス室 帶部美幸氏
内閣人事局の「オフィス改革ガイドブック*」のモデルオフィスとしても紹介された文部科学省。中でも先駆けてオフィス改革に挑んだのが、人材政策課と産業連携・地域振興課の2課です。リニューアルから1年が経過した今、書類の山と固定化されたコミュニケーションからどのように脱却し、「毎日来たくなる」オフィスを実現したのでしょうか。改革の最前線で尽力されたメンバーの皆さんに、そのリアルな軌跡を伺いました。
*オフィス改革ガイドブック:令和6年度に実施した「国家公務員の職場環境整備を通じた働き方改革の推進事業」において、3省庁(財務省、文部科学省、厚生労働省)の一部課室をモデルオフィスとしたオフィス改革の実施結果や、内閣人事局でのオフィス改装後の働き方改革の取組から得られた知見をもとに、オフィス改革のポイント等をまとめたガイドブック。
省内コンペを勝ち抜いた熱意と、3つの狙い
事の始まりは、内閣人事局による省内モデルオフィスの募集でした。当時、テレワークの普及など働き方が多様化する中で、「従来の固定的なオフィス環境では対応できない局面が増えている」という課題感がありました。そのため、募集がかかる前から「多様な人材が生き生きと働き続けられる職場」について議論を重ね、他企業の共創施設なども視察して理想の働き方のイメージを膨らませていました。こうした準備もあり、「スマートな働き方の推進」「部署間の連携強化」「外部との連携強化」という3つの狙いを早々に目線合わせすることができ、単なる働きやすさの追求だけでなく、「政策立案機能の向上」を目指すという高い志を掲げることができました。その結果、多数の部署が手を挙げる中、省内コンペを勝ち抜くことができました。
改革がスタートし、構想を形にする上で最大の壁となったのがスペース不足でした。特に「書類をどこまで減らせるか」が鍵となりました。電子化を進めると同時に、ときには抜き打ちの見回りを行うなど徹底的な廃棄作業とペーパーレス化を敢行し、最終的に書類の約7割を削減することができました。
オフィス内の動線を確保しつつ、効率化されたスペースにはコミュニケーション席や打ち合わせスペースを拡充。さらに、窓際に設置されていた管理職席を削減し、そこを誰もが自由に使えるソファー席へと転換しました。固定席と袖机は廃止し、座席数は81席から147席へと増加させ、柔軟なフリーアドレス*運用を実現。説明会を重ねてオープンに議論することで、様々な意見を取り入れ、意識醸成と合意形成を図りながら課全体で改革を進めていきました。
*フリーアドレス:オフィスの中で固定席を持たずに、ノートパソコンなどを活用して自分の好きな席で働けるスタイルのこと。
ソファー席
物理的な解放と心理的な安心感で、満足度が大幅に向上
リニューアルから1年。PHSやチャットなどのICTツールを積極的に活用することで、場所にとらわれない柔軟な働き方が浸透しました。こうしたインフラが整い、テレワークがしやすくなった一方で、意外な変化も起きています。それは、「オフィスの雰囲気が良く、あえてオフィスに来たくなる」という職員の声です。
キャビネットや山積みの書類がなくなったことで物理的にオフィスの見通しが良くなり、コミュニケーション席やミーティング席などの多様なエリアが増えたことで、職員同士の交流が目に見えて活発になりました。この変化は、スピード感が求められる国会等の対応などにおいても、迅速な情報共有や連携を可能にするという大きなメリットをもたらしています。
また、リニューアル後のアンケートで顕著だった「20代のオフィスの総合満足度向上(5.7点→7.9点/10点満点)」の背景には、物理的な距離の近さが生んだ「心理的な安心感」があります。以前の固定席では「遠い存在」だった窓際の管理職が身近な存在になり、話しかける心理的ハードルが下がったといいます。さらに、隣に座る人が変わることで、若手が他係の業務を知るきっかけができ、広い視野を持って仕事に臨める環境へと変化しています。
コミュニケーション席
外部連携の加速と、形骸化させないための試行錯誤
当初の目的であった「外部との連携強化」についても、確かな手応えを感じています。正直、書類が山積みだった以前のオフィスにゲストをお呼びすることには抵抗がありましたが、現在は「ぜひ来てください」と気軽に呼べるオープンな空間になり、ゲストからも「最新のオフィスで羨ましい」というお声をいただきます。また、個室のウェブ会議ブースを設置したことで、省外に向けたオンライン登壇や情報発信もスムーズになり、外部との連携が加速しています。
一方で、より良い運用を目指して、現在も試行錯誤を続けています。人材政策課では「グループアドレス*」を採用し、1ヶ月に1回エリアを変更しています。一方、産業連携・地域振興課ではグループアドレスから完全にフリーアドレスに変更するなど、課ごとに最適な形を模索しています。さらに、座席にはネームプレートを置くことで、誰がどこにいるかを把握しやすくし、話しかけやすくなるような工夫も凝らしています。
若手の育成や管理面など、手放しですべてが上手くいっているわけではありませんが、だからこそ、1年経って終わりではなく、現場の状況に合わせて日々ルールをアップデートし続ける。それが、改革を形骸化させない秘訣となっています。今後は、窓際のソファー席スペースのさらなる有効活用や、他部署の職員との交流機会の創出など、さらなる進化を目指しています。
*グループアドレス:部署やチームごとに大まかなエリアを決めた上で、その範囲内で自分の席を自由に選択する働き方のこと。
最後に、同様の改革を検討されている担当者の方へメッセージをいただきました。
フットワーク軽く、まずは「環境」から変えてみる
中央省庁や自治体におけるオフィス改革は、上長との交渉や管理面での懸念から断念してしまうケースは少なくありません。今回の改革では、「課員の働きやすさが一番」という管理職の強い想いと後押しが、改革を前進させる大きな原動力となりました。
何十年も続けてきた今の形がベストだと思いがちですが、まずは「環境」から変えてみてください。変えてみて初めて気づくメリットが必ずあります。働き方の「やり方」を言葉にするのは難しいもの。だからこそ、同じ志を持つ仲間を見つけて、フットワーク軽くチャレンジしてほしいと思います。
改革メンバーの皆さん
上段左から奥氏、佐々木氏、森澤氏、滝沢氏
下段左から高山氏、本間氏、帶部氏
コクヨ担当者
民間企業にとどまらず、官公庁でも働き方改革やオフィス改革が主流となった現代において、文部科学省は「国家機関をリードする働き方」に挑戦しました。
単純な家具の入れ替えによる「綺麗なオフィス」で終わらせないため、国家機関におけるオフィス改革とは何かを考え「政策立案機能の向上」を掲げ、実現に必要な機能や働き方を検討し、空間に落とし込みました。コクヨでのワークショップやオフィス見学会を通じて、職員さま一人一人がオフィスに求めるべき機能は何かを徹底的に考えた結果、満足度の高い「出社したくなるオフィス」を実現できたと考えています。
また、課長をはじめとした管理職の皆さまのご協力も成功のポイントです。働き方が大きく変わる中、従来のオフィスでは業務効率が下がると考え、職員のパフォーマンス向上に真摯に向き合っていただいたことで実現することができました。
モデルオフィスを皮切りに働き方改革に挑戦する課も増えてきており、改革の波は着実に広がりを見せています。今回の支援が国民の皆さまへのサービス向上、そして職員さまの働きやすさの向上に寄与することを心より願っております。
コクヨ
矢部 龍斗