インタビュー
国立研究開発法人 物質・材料研究機構
人事・総務部門 人事室 室長 徂徠春子氏
一歩目で「NIMS=世界トップレベルの材料研究機関」が体感できる空間に
NIMS(国立研究開発法人物質・材料研究機構)は、前身である金属材料技術研究所(1956年設立)と無機材質研究所(1966年設立)が2001年に統合してできた研究所です。 「材料で、世界を変える」というビジョンのもと、持続可能で豊かな社会の実現を目指して世界最先端の研究を続けてきました。組織は、研究者、エンジニア、事務職員など約1,500名で構成され、そのうち3割を超す方々が外国籍で、世界中から集まった国際色豊かで多様な人材が、オフィスやラボを行き交うのが日常となっています。
2023年度より新体制となったNIMSでは、さらなる国際化や優秀な人材の確保に注力しています。組織や研究者を取り巻く環境・条件をより良い方向へと変えていこうという機運が高まる中、築30年が経った研究本館管理棟の中でも、職員も来訪者も多くの人が行き交うエントランスロビー・カフェスペースについて、インテリアを一新し時代に合わせた快適なコミュニケーションスペースへと生まれ変わらせる空間リニューアルを軸に、ハード面における職場環境の改善を提案しました。もとより物理的な職場環境は人材採用に大きな影響を与える要素であると考えていましたし、私自身、世界トップレベルの研究機関として、誇れる職場で働きたい、働いて欲しいという思いもありました。
最初の一歩として提案したのが、NIMSの顔である千現地区・研究本館管理棟のエントランスロビーエリアのリニューアルです。エントランスを入るとすぐに広がる吹き抜けの共有空間には、テーブルやイスが置いてあるものの、無機質な印象でした。来訪者にとってもNIMSで働く人にとっても、一目で世界トップレベルの研究機関であることが伝わる空間にしたい、人が集い、自然とコミュニケーションが生まれるイノベーティブな空間にしたい、それがNIMSのブランディングや働く人の誇りにもつながるはず、そのような思いでリニューアル案を練りました。
大きなプロジェクトとしてではなく小さな実績を積み上げていくことで突破!
当初、リニューアルの優先順位は必ずしも高くなく、所内の機運を醸成するところからのスタートでした。職場環境を見直す、共有部をリニューアルするという概念に対し、「この環境が当たり前」「現状で特に問題はない」という空気感がありました。これまで研究に関する部分以外のオフィスや共有部などのハード面については、必要な範囲の修繕・改修が主でした。そこで、研究室に閉じこもりがちな研究者同士のコミュニケーションの場になる、それが研究者同士の横のつながりの構築や共同研究、心身へのよい影響などにもつながる…といった共用スペースの重要性も主張しました。
エントランスロビーエリアをリニューアルする意味や価値について、経営層とも議論を重ねました。まずは効果を可視化するため、段階的に進めるという方針で合意し、最初のステップとして2024年3月に取り組んだのが、ロビー奥にあるカフェスペースのリニューアルでした。コンセプトは「落ち着いたお洒落な大人カフェ」。もともと多国籍の職員がカフェを利用する文化自体はあったため、雑誌に載るような絵になる場所にできると考えていました。コーヒーマシンを新しくし、大人空間を演出するハイカウンターを導入、照明を落とすことで落ち着いた雰囲気を作りました。結果は、コーヒーの売り上げが倍増するなど大変好評で、所内のリニューアルへの意識も徐々にポジティブな方向に変化していきました。実は狙い通りではあったのですが、周囲の理解や賛同を得るにはまずは「小さな実績」をつくることが大事だと、改めて実感しました。
このカフェエリアのリニューアルに際しては、街中のお洒落なカフェを見て回って写真を集めたり、リニューアルに賛同して一緒に取り組む同僚とコクヨのショールームに見学に行ったりもしました。百聞は一見にしかずで、ショールームでさまざまな空間を見せてもらったことで、実現したいイメージがより具体的になりました。
無機質な空間からナチュラルで居心地の良い空間へ
2025年3月には、次のステップとして、エントランス付近のリニューアルに着手しました。このエリアは天井が吹き抜けになっており、ガラス越しにデザイナーズ石庭の中庭に面している明るくオープンな空間です。リニューアルに際しては、自然豊かな中庭の景観を活かしたいと考えていました。そこで、木のぬくもりが感じられる温かみのあるテーブルやイスを設置。ハイブリッド植栽も配置し、居心地の良いナチュラルな空間づくりを心がけました。
このエリアは、来訪者のウェイティングスペースや職員の休憩場所のほか、1on1などの打ち合わせ、ランチスペースにも使われています。また、先日は、外国人研究者のコミュニティがお茶会をする風景も見かけました。以前に比べてより多くの人が利用するようになり、明るく活気ある空間になっています。
さらに、奥まったところには、四角形のソファの中央部分に植栽を設置した、シンボルツリー型ソファを設置。ツリーは植栽と電飾が一体化したもので、木陰でひと休みするようなイメージを形にしてもらいました。また、植栽には、枝は本物、葉はリサイクルペット製のものを採用。管理のしやすさ、リアルさ、そして環境への配慮を実現しました。
ここでは、コーヒーを片手にほっと一息つく姿や、相談事や雑談をする姿などがよく見られます。私自身もシンボルツリーの陰影の照明がとても気に入っていて、ほっとひと息つきたいとき、癒されたいとき、一対一の面談によく利用しています。
空間が変われば、人の意識や行動は変わる
カフェスペースの成功で効果が実証されると、経営陣からのさらなる後押しも得てプロジェクトは本格的に加速。リニューアル後の職員の評判も上々です。空間が変われば人の意識や行動は変わるだろうという思いは、確信に変わりました。
NIMSには、世界各国の要人や研究者をはじめさまざまな方が来訪します。国際色豊かな人々がロビーを自由に往来していたり、国籍も年齢も異なる研究者たちが活発に議論していたりという光景を見て、来訪者からは「すごく雰囲気がいいですね」といったお声を以前より多くいただくようになりました。NIMSの特徴である国際的な研究機関の風景を体現した、象徴的な空間になっていると自負しています。
NIMSは、研究本館管理棟のある千現地区をはじめ3つの地区に分かれています。今回のエントランスロビーエリアのリニューアルを契機に、他の地区でも共用部をリニューアルしたいという声が上がっており、順次、計画を進めていく予定です。また、今後は共用部だけでなく、事務部門の執務エリアの改善にも着手し、フリーアドレスの導入など、新しい働き方にも挑戦してみたいと考えています。
コクヨ担当者
材料分野で世界をリードするNIMS様。世界中からトップクラスの研究者が集まるNIMS様では、この度、研究者および職員の皆様の「ワークエンゲージメントの向上」を目的としたリニューアルを実施されました。リニューアルの対象として選ばれたのは、多くの人々が行き交う研究本館管理棟「エントランスロビー」と「カフェ」です。単なる通過点やカフェスペースではなく、日常的な往来の中で自然なコミュニケーションやアイデアの創出を促すきっかけとなる空間を目指しました。特にこだわり・議論を重ねたのは、「研究室の垣根を超えたメンバーとのコミュニケーションをとりたくなる自然で居心地の良い雰囲気の空間」 「来訪者の方々にもNIMS様が持つ国際的にオープンで先進的な雰囲気を感じていただける場」を実現するということです。リニューアルオープン後、実際に現地を訪問した際には、多国籍の皆様が思い思いのスタイルで空間を活用されている姿が印象的でした。こうした取組みがNIMS様及び関係者の皆様の働きやすさにつながり、引いてはさらなる研究の発展の端緒になれば幸いです。
コクヨ
小川 敦也