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【長野県企業局】"柔軟で俊敏な組織"への転換に挑むオフィス改革

(第2回)ABWで変わる働き方と時間マネジメント

2019年1月、長野県企業局は「しごと改革・働き方改革」の一環としてオフィスをリニューアルしました。県の組織でありながらも公営企業管理者を組織のトップに置く公営企業として、独立採算・特別会計で事業を行う企業局。その企業局が「職員が自ら働き方と時間をマネジメントし、複雑化するミッションに対応する"柔軟で俊敏な組織"への転換」を目指して実施したオフィス改革が今、先進的な事例として県内外から注目を集めています。企業局がオフィス改革を行った背景にある差し迫った危機感やさまざまな課題は、全国の自治体が抱えるそれと多くの共通点を持ちます。オフィス改革から2ヶ月が経過した3月、オフィス改革で得た手ごたえや課題について、そして少子高齢化に突き進む将来を見据え進むべき方向性について、今回のオフィス改革推進を担った企業局経営推進課経営企画・財務係の小池氏、池田氏、小林氏、そして課長補佐兼経営企画・財務係長の石田氏にお話を伺いました。
(2019年3月取材)

企業局経営推進課経営企画・財務係 小池氏 池田氏 小林氏
課長補佐兼経営企画・財務係長 石田氏

では次に、オフィス改革後にみなさんが感じている具体的な効果を教えてください。今回ABW(Activity Based Working:仕事内容に合わせて働く場所や机などを選ぶ働き方)を採用されたということで、執務室を5つのエリアに分け、それぞれのエリアに名前を付けてられていますね。まず、フリーアドレスエリア(執務エリア)についてはいかがでしょうか。

小池氏:先ほど決算期についてお話しましたが、それ以外にも、私たち経営企画・財務係は事業課の担当と日々相談や打ち合わせをしています。これまで私のデスクは書類に囲まれていたので、事業課の担当者と進捗確認をする際、それこそ担当者にすごく重いファイルを抱えて相談に来てもらうような場合でも座ってもらえる環境ではなく、いつも申し訳なさを感じていました。現在はフリーアドレスのため、隣同士で打ち合わせができるようになりました。また書類に囲まれなくなったので、周りの職員も話しかけやすくなったのではないかなと思います。

小池氏

石田氏:また、これはフリーアドレスの副次的な効果ですが、お掃除の回数が増えました。デスクの下に何もものがないので、毎週金曜日の終業時に掃除機をかけています。非常に衛生的になりました(笑)。

では、次にイノベーションエリアについて教えてください。こちらのエリアを業務で使う機会は多いでしょうか?

小池氏:多いですね。特にミーティングエリアで、モニターを使った打ち合わせをすることがこれまでと比べ格段に増えました。オフィス改革前は、大きいミーティングテーブルが1台のみ、ディスプレイも実質1台のみだったために使えないことも多かったのですが、今ではスペースが3箇所、ディスプレイも3台に増えたので気兼ねなく使えるようになりました。

トップダウンによる会議のペーパレス運用とディスプレイ付き打ち合わせスペースの増設、これらの施策により打ち合わせや業務のプロセスに変化はありましたか?

小池氏:すごく変わったという実感があります。例えば現在、池田を中心に財務会計システムの見直しを行っているのですが、従来こういったプロジェクトでは担当者が原案を紙で配ってメンバーで意見を出し合い、それを持ち帰って修正して...というプロセスでした。しかしペーパレス会議の環境が整ったことにより、ディスプレイを見ながらメンバーの意見集約や修正をその場で行っていくというプロセスに変わっています。

なるほど、ペーパレスによる運用、モバイルPCとディスプレイというツール、そしてそれらを活用できる環境がすべて整ったため、プロセスが大きく改善したということですね。ちなみにミーティングエリアに設置してあるジオラマは、来庁者が見学できると聞きましたが。

池田氏:小学生を対象とした県庁見学のメニューの一つとして、水力発電をわかりやすく知ってもらうために2年前にジオラマを製作しました。これまでは執務室中央の会議スペースに設置してあったので見学中は会議ができず、週1回ペースで見学を受け入れていた時期などは特に大変でした。オフィス改革では、このジオラマを設置しているミーティングエリアへは執務エリアを通らない動線計画としました。子どもたちにとっても仕事をしている職員を気にせずに済むので緊張しないでしょうし、とてもよいのではと思います。

執務エリアを通ることなく水力発電ジオラマを見学できる新レイアウト

明るい配色の家具を採用されましたね。

石田氏:見学で訪れる子どもたちも意識して配色を決めました。春からまた見学の受け入れが始まるので、子どもたちの反応が楽しみです。

フィーカエリアについてはいかがでしょう。どんな風に活用されていますか。

小池氏:まず、お昼の過ごし方が変わりました。お昼は時間になったら自席でお弁当を広げて黙々と食べ、食べ終わったら残りの休憩時間はそのまま突っ伏して寝て...というのがこれまでの県庁スタイルだったのですが(笑)。今はフィーカエリアに各自お昼を持ち寄って、みんなで食べるというようなことも増えました。そうしたコミュニケーションでお互いの仕事もプライベートも知れるようになったので、心理的な距離が近づいたような気がしています。また業務時間内ですと、スケジュールの共有などちょっとした打ち合わせによく利用します。個人作業をしながらコーヒーを飲んだり、たまにお菓子が置いてあったりするのでそれを食べたりもします。業務上やむを得ず時間外業務が発生する場合がありますが、そんな時はフィーカエリアでの息抜きを挟む事で、その後の業務の効率化を図っています。

石田氏:仕事の節目やプロジェクトの終了時などに、トップがフィーカエリアにお菓子などを差し入れてくれるようになりました。みんなが喜ぶような少し高級なお菓子を、「ご苦労様」といった感じで。

フィーカエリア

とても素敵なやりとりですね。ちなみにバレンタインには、女性職員がこっそりとチョコレートを置かれたと伺いました。

小池氏:ホワイトデーには男性職員が置いてくれていたので、みんなで和みました(笑)

石田氏:そういうこともコミュニケーションのひとつだと思います。先述したトップの行動にも二つの意味が含まれていると思っていて、まず一つは仕事の効率を上げるために「勤務時間中にもON・OFFのメリハリをつけて欲しい」といった気持ち、もう一つは柔軟な発想を引き出すために「所属を超えたコミュニケーションを活性化して欲しい」という気持ちです。軽い飲食をしたり、休憩したりする際は、自席ではなく積極的にフィーカエリアを利用してほしいと考えています。

ではその隣の、ロックインエリアはいかがでしょう?

石田氏:ミーティングエリアやフィーカエリアと比べたら、自分はまだそれほど活用できていないと感じています。経営企画・財務係の業務に日々の支払い関係のチェックがあるのですが、これは一人で行う業務ですので、ロックインエリアで行えば電話対応で中断することもなく集中でき、自席よりもきっと捗るのだと思います。しかしこれまでの習慣から、つい自分のデスクでチェックを始めてしまうことが多く...。今後、業務ごとに相応しい場所をより意識するようにして、ロックインエリアの利用を増やしていきたいですね。

小池氏:私の場合も、集中して伝票チェックを行いたい時に利用しています。伝票は次から次へと来るので、都度対応していると意外と時間が取られてしまうのですが、今は「今日は伝票を見るのはこの時間だけ」などと決めて、その時間はロックインエリアで集中してチェックするような働き方に変えました。どういった業務でどのように使うかということの意識付けが進んでいけば、ミーティングエリアやフィーカエリアに並ぶ人気のエリアになっていくのではないでしょうか。

石田氏:先ほど残業の抑制を話題にしましたが、例えば池田と小林は、手のかかる子育て世代です。彼らとしてもやはりなるべく早く仕事を終わらせて帰りたいし、こちらも帰らせてあげたい。そういったライフイベントや環境の変化があっても、きちんと仕事ができるようにしなければなりません。決められた時間内に仕事を終わらせるために、業務に応じて場所を変えることで効率化を図るという動きは加速していくと考えています。

ロックインエリア

今後、テレワークも活用していきたいですか?

池田氏:そうですね、是非。

石田氏:今回、レイアウト変更に合わせてテレワークを推進するため、企業局本庁の全職員にモバイルPCを導入しました。職場にいるよりも一層自分で時間のマネジメントを行う必要がありますが、私も何度かテレワークを試す中で仕事を行う環境として何も困ることはありませんでしたし、仕事の内容によっては集中できて捗ることさえありました。とても良いと思っています。

これまでイノベーションエリアの良いところを沢山教えていただきましたが、現時点でうまくいっていないことや、今後より注力すべきと感じたことがもしあれば教えてください。例えば、当初は「立ち会議」の実施を想定されていたかと思いますが、実際そうした働き方をされていますか?

石田氏:実はそこがまだ手付かずで、やはり他自治体のように可動式テーブルを導入しないと浸透は難しいかなと感じています。もう一つは副作用のようなものですが、ミーティングエリアの居心地が良くなったために会議が長引いてしまうこともしばしばです。打ち合わせがしやすいと議論が広がり過ぎてしまうという傾向もあり、最終的には議論がまとまるものの、時間が長くなってしまうというパターンです。

小池氏:そうですね、私も会議が長くなったかなと思うことがあります。ですから強制的に早く終わらせるということを意識付けられる、象徴的なスタンダップミーティングがあってもよかったのかなと感じています。それは今後、本当に必要であれば検討していきます。

ではこちらから、今後の注力課題という視点で、満足度調査の結果について質問させてください。職員満足度調査の「ペーパレスによる業務運用」という項目で、電気事業課と水道事業課の満足度が相対的に見て低いように思います。一時的な文書削減はともかく、ペーパレス運用をし続けるという点では、設備図面を扱うような業務内容からするとやはり難しいのでしょうか。

石田氏:ハードの運用が追いついていないことが、満足度の低い理由のひとつだと考えています。図面や写真の電子化に耐え得る大容量のサーバーへの移行を間近に控えていますので、今後は一層電子化を徹底していく予定です。今回のオフィス改革でモバイルPCへの入れ替えによりPC画面が小さくなりましたが、その対策としてフリーアドレスデスクに大き目のモニターを用意しています。図面を書いたり確認したりする際にはそちらのモニターを使ってもらえればいいと。

大型モニターを併用する事業課職員

こうしたツールや運用に慣れていけば、今後満足度は上がってくると期待しています。私自身は、こういった事業課でこそ電子化を進めるべきだと考えています。なぜなら災害時や緊急時にもメリットが大きいからです。例えば電気や水道の施設の図面などのデータがきちんと電子化されていたら、災害発生時などにオフィスに立ち寄らず自宅から直接現場に駆けつけることができ、すぐに対応に取り掛かれますから。

(※この事例は、2019年3月に取材したものです。)

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