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【長野県企業局】"柔軟で俊敏な組織"への転換に挑むオフィス改革

(第1回)危機感が変えた組織の意思決定プロセス

2019年1月、長野県企業局は「しごと改革・働き方改革」の一環としてオフィスをリニューアルしました。県の組織でありながらも公営企業管理者を組織のトップに置く公営企業として、独立採算・特別会計で事業を行う企業局。その企業局が「職員が自ら働き方と時間をマネジメントし、複雑化するミッションに対応する"柔軟で俊敏な組織"への転換」を目指して実施したオフィス改革が今、先進的な事例として県内外から注目を集めています。企業局がオフィス改革を行った背景にある差し迫った危機感やさまざまな課題は、全国の自治体が抱えるそれと多くの共通点を持ちます。オフィス改革から2ヶ月が経過した3月、オフィス改革で得た手ごたえや課題について、そして少子高齢化に突き進む将来を見据え進むべき方向性について、今回のオフィス改革推進を担った企業局経営推進課経営企画・財務係の小池氏、池田氏、小林氏、そして課長補佐兼経営企画・財務係長の石田氏にお話を伺いました。
(2019年3月取材)

企業局経営推進課経営企画・財務係 小池氏 池田氏 小林氏
課長補佐兼経営企画・財務係長 石田氏

まずは、今回企業局でオフィス改革を行った経緯についてお聞かせください。「"職員が自ら働き方や時間のマネジメントができる柔軟で俊敏な組織"」という目標は、どういった背景から生まれたのでしょうか。

小池氏:企業局はミッションとして「クリーン電力と安全・安心な水道水の安定的な供給」を掲げていますが、今この二つ共に大きな転換期を迎えています。電力は東日本大震災以降に再生可能エネルギーの拡大という動きが加速しており、長野県でも発電所の新設に向けて動きつつ、既存施設の大規模改修も控えています。一方水道は水道法の改正や施設の老朽化に伴う耐震化対策に直面しています。まさにそれぞれ待ったなしの対応が迫られているのですが、こういった状況において限られた人数でいかに効率的に仕事を進めていくかということを考えた結果、「しごと改革・働き方改革」を通じて"職員が自ら働き方や時間のマネジメントができる柔軟で俊敏な組織"に変革していこうという企業局の目標ができました。この目標を達成するためにはオフィスの改革も不可欠ということで、今回のプロジェクトに至りました。

小池氏

石田氏:小池がお話しした通り、電気と水道でそれぞれ今、大きな転換期を迎えています。少し詳しくお話ししますと、電気事業においては、再生エネルギーの拡大に加えてAI・IoTなどの急速な技術革新にもスピード感を持って対応していく必要があります。企業局では昨年から「新規電源開発地点発掘プロジェクト」に着手し市町村などのご協力も得て新たな水力発電所の建設を進めていますし、長野県内初の水素ステーションの整備も行っています。一方水道事業では、人口減少により水需要の減少が見込まれる中で、高度成長期に整備された水道施設の大量更新期の到来に備えた老朽化対策を進めるとともに、近年各地で起こっている大規模災害での断水被害を踏まえて、耐震化の前倒しに取り組んでいます。こうしたことから、職員の業務量がかなり増えている状況です。

実際に、業務の負担を肌で感じていましたか?

小池氏:そうですね。業務量もそうですが、内容が複雑化してきているというのは、正直とても感じていました。というのも、先述した新規電源開発や施設の更新、耐震化などは、近年に例のない規模になっています。加えて、今後施設の老朽化対策や耐震化を進めていくにあたって必要不可欠であると判断したCIや広報についても見直しを行いました。これまでよりも複雑な業務、あるいはこれまでに経験のない業務に向き合う難しさは、特にこの1~2年で感じることが多くなったように思います。

石田氏:私たちが所属する経営企画・財務係は、企業局の予算編成を担当する部署です。先ほどお話しした状況から、2019年度は過去最大級の予算規模になりました。発注業務や設計業務などもかなり増加しており、職員の業務量が増加していることを裏付けています。しかし、今後急速に人口減少が進む中で、自治体の職員数もそれに見合ったものにしていく必要もあります。加えて、仕事と育児や介護などとの両立を図るため、ワークライフバランスの実現も課題です。こうした課題解決のために「しごと改革・働き方改革」は必要不可欠であり、一刻も早く取り組まねばならないというトップの強い意思がありました。

石田氏

まさに、働き方改革が喫緊の課題だったのですね。今回「しごと改革・働き方改革」の推進に向けて、「時間・場所にとらわれない働き方」「ICTの利活用」「多様な執務空間の創出」「公文書の組織的共有・管理、電子化」といった4つの方向性を示した上で、オフィス改革に取り組まれています。今回オフィス改革で、一番感じた変化や効果は何でしょうか?

小池氏:特に感じるのは、組織としての意思決定プロセスの変化です。今まで上席へのレクチャーは、担当者が紙の資料を上席の席まで持参して行っていました。しかし今では、公営企業管理者も自らミーティングエリアやフィーカエリアなどへ赴いて担当者の説明を聞き、その場で判断し、一緒に修正するというプロセスに変わっています。

石田氏:今回トップダウンで「会議は原則ペーパレス化」という方針が打ち出されました。毎月開催している公営企業管理者、課長、所長による経営会議や本庁内での各種打ち合わせは、TV会議や大型のディスプレイを活用してペーパレスで行っています。またフリーアドレスを導入し個人のデスクがなくなったことから、ときには公営企業管理者や課長がフリーアドレスデスクでレクチャーや相談を受けることもあります。

お話を聞いていると、トップである公営企業管理者だけでなく、課長職の意識改革も大きく進んでいるように感じます。課長職とのコミュニケーションに何か変化はありますか?

小池氏:課長が係員の近くで話をする機会が増え、以前に比べ相談がしやすくなったように感じています。

池田氏:私も話がしやすくなったかなと感じています。やはり課長自身が、部下とよりコミュニケーションを取らなければという姿勢でいるのが大きな要因だと思います。

小林氏:レイアウト的に、課長席の位置が、係員のいるフリーアドレスデスクに一歩近づく形になったことも要因のひとつと思います。

池田氏:そうですね。これまでは課長席があり、係長席があり、その先に係員の席というレイアウトでした。しかし今は課長席以外をフリーアドレスにしたことで、課長と係員の物理的な距離も縮まりました。

小林氏

オフィスの働きやすさに関する職員意識調査結果において、改修前後で最も大きく改善したのは課長職でしたね。

石田氏:課長は組織として仕事の責任を負っています。先ほど申し上げたとおり、業務量が増えていますから、一層スピード感をもって処理していかなければならない状況です。以前は、担当が抱えている業務の状況を課長が把握することが難しかったのではないかと思いますが、今回のオフィス改革で、課長が係員と直接打合せを行ったり指示を出したりということが柔軟にできるレイアウトになりました。それが課長職の満足度向上につながったのではないでしょうか。

なるほど。課長職の結果で執務動線に関する満足度が大きく改善しているのも、そう言った理由かもしれませんね。

石田氏:業務量が増えている今だからこそ、管理監督の立場にある人ほど、より密度の高い情報共有を望んでいるのだと思います。

では、執務エリアにフリーアドレス制を導入した目的とは何でしょうか。

小池氏:自分の席にとらわれないで仕事をしたいということの発端は、決算事務の効率化です。決算事務は私たち経営企画・財務係の担当者と、電気事業課や水道事業課の担当者が協力して行うのですが、これまでは席が離れていたため、打ち合わせや相談が必要な際はお互いの席をその都度行き来していました。ですから決算事務の期間だけでも経営企画・財務係の担当者と事業課の担当者が隣に座ることができれば、進捗も随時確認でき、またお互いの都合の良いタイミングで打ち合わせすることも可能になるのではという思いがあったのです。

石田氏:企業局の経理は民間企業にかなり近い企業会計で、知事部局とは制度が異なります。また、3月末の年度終了後、5月末までに決算を取りまとめて知事に報告する必要があります。このため毎年4、5月が最も残業が多く、ゴールデンウィーク中も出勤せざるを得ない状況でした。本年4月からは、働き方改革関連法が施行され、より一層残業を減らす努力が求められることになります。

では、この春がオフィス改革の本当の効果を見極める機会ということですね。

石田氏:そうですね。フリーアドレスを活用して、1か月くらいは自分の所属に関係なく、決算事務に最適な配置で働けたらというのが以前からの想いです。また、決算事務の時期は人事異動期とも重なるため、企業会計に不慣れな職員が異動してきた際も、JTの観点からフリーアドレスは有効であると考えています。今回整備したオフィスを最大限活用して、業務効率化がどのくらい図れるか大いに期待しています。

(※この事例は、2019年3月に取材したものです。)

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