2022.10.12

コクヨの自治体DX(5)職員の働き方

DXで変わる自治体職員の働き方

Overview

概要

本記事は、「窓口セミナー2022」でコクヨ株式会社 官公庁コンサルティング部 チーフコンサルタントの八上俊宏が語った“自治体職員の働き方やオフィスの変化”についてお伝えしていきます。

Report

レポート

デジタルトランスフォーメーション(以下DX)と聞くと、システムやICTインフラなど技術的な変化を思い浮かべる人がほとんどです。しかし実際には、それと同じくらい、意識や行動の変化を促す環境づくりも重要です。「働く環境」「制度」「ICT」の3つの要素を融合させることで、自治体でもよりDX時代にふさわしい働き方が可能になります。

総務省は、「自治体DX推進計画」において6つの重点取組項目を掲げています。これらの取組みが実現すると、ペーパーレスワークが可能になり、それに伴い「フリーアドレス」や「ABW」といった働き方を取り入れる自治体が増えていくと考えています。この変化は、職員の効率的で創造的な働き方を促進し、より良い行政サービス提供を生み出す原動力となるはずです。では、「ペーパーレス化」「フリーアドレス」「ABW」を取り入れることで働き方がどう変わるのかご説明します。

自治体DX推進計画における重点取組事項と働き方の変化

自治体DXを進めていくうえで、ペーパーレス化は職員の働き方に最も影響を与えます。申請書や稟議書の電子化によって紙文書を新たに作成しないことと同様に、これまで長年保管していた書類を減らすことも重要です。そのためには、職員一人ひとりが意識を持って、業務を見直し自らの行動を変えていくことが大切です。

コクヨによる調査では、ファイリングの見直しによって執務室で保管する文書は約80%を削減できることが分かっています。具体的には、次の3つの手段を実施することで、削減を進めていきます。

(1)廃棄
保存期間を過ぎた文書や、複数人が保有する複製文書などを廃棄することで、約40%の文書を削減することができます。

(2)媒体変換
これまで、印刷したり外部から入手したりしてきた紙文書を、印刷せずにデータ化して利用することで、約10%の文書を削減することができます。

(3)外部保管
チェックする機会が少ないが法的な理由で保存が必要な書類や、製本された図面など電子化するにはコストがかかる書類などが対象です。こうした書類を外部に保管することで、オフィス内の文書量を約30%削減することができます。

以上、不要な文書の「廃棄」、「媒体変換(電子化)」、使用頻度の低い文書の「外部保管」などのファイリングの見直しにより、オフィス内の紙文書を最大80%削減することが可能です。

ペーパーレス(書類量削減)の考え方

このように文書を減らして生み出した面積を、打合せスペースなどの別用途に転換し、職員どうしの連携やコミュニケーションを促進する場を作ることも可能になります。

テレワークの推進に伴うWi-Fi環境の整備やノートPC、携帯電話等のモバイル端末の導入に合わせて、固定席運用を廃止しフリーアドレス制を選択する自治体が増えています。

フリーアドレスの考え方

フリーアドレスと聞くと「自席が無くなる」ことへの不安を、多くの職員が口にします。しかし、フリーアドレスには多くのメリットがあります。一つ目は空間効率や組織変更への柔軟な対応です。例えば、誰かが外出しているとき、その席を広いスペースや打合せに使うことができます。さらに、職員数が増えてもイスを追加するだけで対応でき、毎年行われる組織変更の際の手間やコストを抑えることが可能です。

二つ目は、コミュニケーションの促進です。AIやRPAの推進によって単純な定型業務の自動化が進むと、職員はより創造性の高い業務に集中することが求められるようになります。イノベーションを起こすために必要なのは、部門や組織を超えた横断的なコミュニケーションです。フリーアドレス制は、そうした横断的なコミュニケーションが偶発的に発生する機会を増やす働き方です。

三つ目は、職員の自律的な働き方を促進できるということです。
ペーパーレスワークとの親和性も高く、今後DXが進むと従来の働き方から大きく変化することが予想されます。その際、フリーアドレス制は庁内で業務をする際に「場所に縛られない」だけでなく、「職員の創造性・生産性を高める」働き方に効果をもたらすとコクヨは考えています。

※「フリーアドレス」とは、オフィス内に決められた席がなく、自由に場所を選んで仕事をする制度のことです。

従来のフリーアドレスをさらに進めた考え方としてABWがあります。ABWとは、業務に応じて「働く場所と時間を選ぶ」働き方のことです。この働き方を実現するためには、固定電話ではなくPHSやスマートフォンを使うこと、Wi-Fi環境の整ったオフィスでノートパソコンを使えることが大前提になります。

ABWを取り入れることは、ワーカーが自律的に働くことを促し、その結果生産性や業務の質を高めることにつながります。例えば「今日中に新規の提案資料を練り上げたい」という時には、「集中して情報収集する」「リラックスできる環境で発想する」「周囲の職員と活発に意見交換する」「もらった意見を一人で整理する」などの動き(アクティビティ)を思い浮かべ、各ステップごとに働く場所を移動するといった働き方です。このような多様な選択肢を駆使しながら、質の高い業務を行える場こそ、DX時代のオフィス空間であると考えます。

業務に応じて「働く場所と時間を自ら選択して働く」ABWの働き方

職員の効率的で創造的な働き方を促進し、より良い行政サービス提供を生み出すには、「働く環境」「制度」「ICT」の3つの要素を融合させ自治体DX時代にふさわしい環境を整えることが重要です。ここでは「働く環境」について、「ペーパーレス化」「フリーアドレス制」「ABW」の3つのキーワードについて、進め方とそれに伴う働き方の変化についてお伝えしました。DXにふさわしいオフィス環境整備は、小さな成功体験を積み重ねながら進めていくことが大切です。それが最終的に全庁での展開を成功に導く、着実な方法です。

小さな成功体験を積み重ねる自治体DX時代のオフィス環境整備
三豊市役所オフィス改革事例

DXに向けてフリーアドレス導入とペーパーレスによる業務効率化を実現した三豊市様の事例です。
詳しくは、以下よりご覧ください。

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