【特別連載コラム】地方自治体職員の"働く場"のこれから

3回 役所における働き方改革の課題消滅可能性自治体という未来

京都工芸繊維大学 大学院工芸科学研究科 デザイン・建築学系 仲隆介教授

-西予市での働き方改革を経験されましたが、官公庁で働き方改革がなかなか進まない要因は何とお考えですか。

仲教授:西予市は、1年間に渡るワークショップでアイデアを積み重ねることにより、モデル事業の改革が実現しました。そして改革はそこで終わりではなく、現在も続いています。
 役所は一般的に「前例主義」であるが故に、今までに経験のない、見たことがない提案や、あるいはリスクヘッジが取れない提案を否定する傾向にあるでしょう。日本の民間企業も同じように新しい感覚を否定してしまうケースが少なからずありますが、官公庁はよりその傾向が強い。さらに役所は民間企業よりも事務分掌が明文化されており、担当が明確です。そのために、責任の所在に対して白黒つけたがる風土が生まれる。まさに縦割り社会で、横のつながりが希薄なため、部門を越えたコラボレーションもない。部門を超えてやりましょうと提案した場合、それはどこが責任を取るのか、という話になってしまう。でも、そこで足踏みをしてしまうことは、変化の芽を摘むということ。これは、今までにない新しいアイデアをどんどん創出し実現するためには、変えなければならないことのひとつではないでしょうか。また、働き方を変えるために必要なこととしては、自分の担当業務を棚卸しする機会を持つということです。

-自身の担当業務を可視化するということでしょうか?

前任者が引き継ぐべきは
方法ではなく目的であれ

仲教授:そうです。長年、これはこういうふうに処理する仕事だった、というだけで続けている業務も多いと思います。必要なのは、以前の担当から引き継いだその業務は一体何を目的として行うのか、今一度立ち返ることです。方法や手段ではなく、「何のために」というところこそ、前任の担当者から引継ぐべきことなのではないでしょうか。科学技術の革新が起こっている現代において、昔と同じでは無駄が多い。時代によって手段は変わります。目的を果たすための手段、手法は、必ずしも以前と同じである必要はないはずです。また、目的が共有できていれば、いざというときにその業務を続けるべきか否かの判断をするという機会を持てるはずです。
 例えば文書の取り扱いも障壁のひとつでしょう。自治体の事業には住民への説明責任がありますから、文書を作成する量も保存する量も多い。ペーパーレスの導入は困難を伴いますが、電子データで保存しておくメリットは大きい。西予市ではペーパーレスの導入に伴い書類を大幅に捨てたことにより、検索時間が減りました。また、ノートPCやモニターの活用により、会議資料印刷の手間も削減されました。準備の時間は工夫次第でいくらでも効率化できるのです。

-例えば議事録の作成なども、今後はノートPCで会議中に作成するといった方法も進んでいくかもしれません。一方で、業務を変える・やめるということは自治体にとって非常にハードルが高いように感じます。

仲教授:確かに、法令や条例などで必要な業務ばかりだと思いますが、今までのやり方を続けていれば、多くの自治体には未来がありません。「消滅可能性都市」という言葉をご存知でしょうか。2014年に日本創世会議という機関が提唱した言葉ですが、少子化や人口流出に歯止めがかからず、存続できなくなるおそれがある自治体のことを指します。この調査では、全国の自治体の約半数が「消滅可能性自治体」にあてはまるという結果が出ています。

-多くの自治体が、働き方を変えざるを得ない状況に直面しているということですね。

仲教授:そうです。でも、じゃあ実際に変わっている自治体が多いかと言ったらそうではない。なぜかというと、自治体職員は給料が下がったり、職場が無くなったりといった危機感を持ちにくい。だからこそ、変えざるを得ない状況をいかに作り出せるかに懸かっています。

-変わるために自治体がすべきことはなんでしょうか。

「目指す未来に近づける方法」
という判断基準で選ぶこと

仲教授:西予市でワークショップをしてわかったことですが、危機意識を持っている職員は少なからずいる。そういう人を含めた共有の場を持つことは重要でしょう。また前例主義をやめ、「民間企業とはちがう」という言い訳を止めることです。血税をより良く使うという考えに立ち、最善の道を考えること。そのために一番いいのは、とりあえずやってみる、実験してみるということでしょう。実験のいいところは、仮説検証ができること。つまり、新しいことのメリットとデメリットの両方がわかることです。何事にも必ずデメリットがありますが、新しいことには思いもよらなかったような、あるいは想像以上のメリットがあるかも知れません。また、今まではデメリットだと感じていなかったことが、新しいことを知った上ではデメリットに思えてきたりすることもあります。今までのやり方、新しいやり方のメリットとデメリットを知った上で比較し、今までのやり方に戻すか、新しいやり方に進むかの判断をするというプロセスが必要なのです。

(作成/コクヨ)

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